葛宮葬儀屋の怪事件

クズ惚れつ

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第一話 生ける屍からの依頼

6 僕の知らない君の内側をもっと見せてくれ

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 葛宮は真っ白な部屋で目を覚ました。
 壁と床の境界線がわからない、亜空間のような場所で、なんだか不安感を覚える。
 薄暗く、禍々しく、殺風景な部屋の中には何一つものがなかった。

「すみません、出すぎた真似をして。」

 声がして後ろを振り向くと、床に寝転がった汐見が上半身を起こした。
 わずかに顔を上げ、上目使いの冷ややかなジト目で、葛宮の顔を見つめていた。

「貴方のことを満足させないといけないと思って、咄嗟に動いてしまいました。」

 葛宮を抱き締めて、悪霊から庇ったことを言っているのだろう。
 しかし庇った挙げ句、二人とも亜空間に取り込まれてしまっては意味がない。

「僕はボディガードは頼んでいない。……君は自分に求められていることをまだ理解していないようだね。」
「俺に求められていること……?」
「今日でわからせてあげるよ。」

 葛宮はとびきり含みを持たせてニヤリと笑みを浮かべたが、汐見はピンと来ていないようだった。
 その時、亜空間の中に聞いたことのある低い声が響いた。

『生け贄が二つも手に入ったか……貧弱でか弱そうな男だけでなく、屈強で歯応えのよさそうな男が一匹』

 それは汐見の背中にぶつかった悪霊の声だった。
 葛宮は顎に手を当てて、思慮深そうにゆっくりと悪霊に語りかけた。

「悪霊くん、霊力のない僕と会話ができるのかは知らないが、僕たちをここに呼んでどうするつもりかな?」
『無論、ここにくたばるまで閉じ込めるのみ。弱ったところを食い潰してやる。それと、俺を悪霊などと呼ぶな…』
「これは失敬、なんとお呼びすれば?」
『……ミツラ』
「ミツラ、君はどうして死んだのかな?なぜ、なにが原因で?どうして悪霊になったんだ、何に未練がある?」
『は?……なんだこいつ……』
「晴瀬が上級悪霊だと言っていたが、上級下級はどう決まる?死に方?僕らを閉じ込めたということは、君もどこかに閉じ込められて死んだということかな?」

 葛宮が鼻息を荒くしながらここまで一息で喋り倒すと。

ーー静寂、シーンと静まり返る室内。

 葛宮の質問責めに奇妙を通り越して恐怖を感じたらしく、ミツラとかいう悪霊はそれ以上喋らなかった。
 葛宮は自身の興奮を抑えるようにごほんと咳払いをした。

「まあそれはいいとして、なんなんだこの部屋は?まるで死後の世界に連れてこられたみたいじゃないか」
「あのミツラという悪霊?が連れてきた非科学的な世界、ということでしょうか」

 僕も君も霊感がない分不利だな、などとぶつぶつ言いながら葛宮は辺りを歩き回る。
 靴の音ひとつしないのは不気味なものだ。
 物理的な脱出は不可能と悟り、葛宮は汐見の横に座り込んだ。

「全く、うちの除霊師は一番肝心な時に頼りにならないみたいだから、僕と君で何とかするしかないようだ」

 葛宮は顎に指を当てて、この状況を打破する策を思案している。
 葛宮葬儀屋の除霊やり方は、晴瀬のやり方。
 つまりはエロなのだ。
 そういうことに疎そうな、ましてや客である汐見に強要するつもりはなく、葛宮はどうにか避ける方法を考え込んでいた。
 珍しく眉間に皺を寄せている葛宮の悩んでいることを悟ったのか、汐見は体操座りをしながらぽつん、と呟いた。

「……力しか能のないこんな身体でよければ、葛宮さんの好きに使ってください」

 相変わらず生きているのか死んでいるのかわからない無表情だった。
 自分がされることを理解しているのかしていないのか、平然とそう言った。

 葛宮は一瞬で思考する。
 まぁ、何をされようとも彼は拒否したりしないだろう。
 心が「死んでいる」、さらにその身体ですらすでに捨てたものかのように、簡単に他人に明け渡そうとする。
 それはある種の自己犠牲であり、本人はそうとも思っていない。
 自分を大切にしようとしない汐見を彼の想像を何倍も裏切って、とびきり優しくしてみたいと思った。
 陵辱を覚悟した彼が混乱してしまうほど、甘く優しく溶ろけさせたいと。
 葛宮は、汐見の短い髪を耳にかけ、その頬を撫でた。

「…使うなんてとんでもない」

 そして細い指で、汐見の分厚い肩をとん、と押して、いとも簡単に床に押し倒した。

「葛宮、さ……」
「僕の知らない君の内側をもっと見せてくれ」

 両肘を床について、マグロのように大人しく横になる汐見のズボンを優しく脱がしながら、時折彼の身体を優しく撫でる。
 それでも、汐見の身体はあまり反応しない。

「ボトムとトップ、どちらがいい?」
「ぼ……俺、よくわからないので、葛宮さんの好きなように」

 無知な少年にいけないことをしているような気分になってくる。
 しかし目の前にいるのは、豊満でしなやかな筋肉を纏った鉄仮面の大男。
 そのギャップに、葛宮はクラクラとのぼせそうになる。
 それと同時に、このまま汐見を無理やり組敷けば、彼の心と身体を汚してしまうような気がした。
 「生ける屍」として特別な価値を見いだした彼を汚してみたいと同時に、まだもったいないという感情が芽生えた。

「晴瀬が昔言ってたんだ。『射精は生命を生む行為で、生のエネルギーが強いからセックスほどじゃないけど、除霊の力も強い』って。」
 上半身にセーターを纏ったままの汐見のトランクスの中に手を突っ込んで、人並みより立派なちんぽに指を絡ませた。

「ここ、使ったことある?」
「……ありません」
「自分で慰めることは?」
「月に、一回ほど」

 今日会ったばかりの奇人にセクハラ紛いの質問をされても、急所を握られてもなお、臆する様子もない。

「じゃあこれがその一回だね」

 巧みな手付きで敏感な肉をグリグリと押したかと思えば、先走りを滲ませる穴をスリスリと撫で付ける。
 たまらないと言った様子で、腰がびくっびくっと不規則に跳ねる。
 力が入ったり抜けたりする度に、尻の筋肉に刻まれる繊細な線を爪でたどる。
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