【完結】呪われた双子 -犬として育てられた弟がよしよし♡され、次期当主として育てられた兄がボロボロ♡にされる話-

クズ惚れつ

文字の大きさ
上 下
50 / 57
番外編 嘘つき達の夜

嘘つき達の夜 5

しおりを挟む
 眼が覚める。
 時計を見ると、午前10時だった。
 比較的早起きの南がこんな時間に起きるのは前代未聞であった。
 昨晩の情事があまりにも激しく、体力を消費したことを物語る。
 気絶したように一眠りしても、股関節はまだガクガク震えてるし、油断すると下っ腹の奥がきゅんきゅんと痙攣し、余韻イキしそうになる。
 汚れは拭き取られ、衣服は整えられていた。

 ゆっくりとベッドから体を起こすと、自身に馬乗りになっている男と目が合った。
 
「嘘つき、あきひこさんじゃないじゃん。」

 夜は南の財布から抜き取った免許証を持って、ふくれっ面をしている。
 その免許証は間違いなく南の顔が印刷されており、氏名欄には『みなみ暁人あきと』と記されていた。
 南は大きくため息をついて額を手で押さえた。

「あのね、人の財布から勝手にものを盗ったら、窃盗だよ……。」

 小学生と話をしているような気分になり頭が痛くなってくる。
 そんな男に、本名も住所も誕生日も年齢も、一瞬にして明け渡してしまった自分に呆れる。

「この嘘つきおじさん!」
「おじさんは余計だ。……嘘つきは君も同じだろう。」
「昨日はすごかったね、あきとさん。最後お漏らししてたよ。可愛かったぁ。」
「……あれは尿ではなく、し…………潮だ。決してお漏らしなどではない。」

 潮でも尿でも屈辱的なことはそう変わらないのに、「お漏らし」という単語が妙に恥ずかしくて、訂正する。

「しお?しおって何?」
「射精した直後に陰茎を刺激されるか、あるいは前立腺の刺激で噴いてしまう体液で、自分でコントロールできずに、気持ちがいいと、噴いてしま……。」

 何を言っているんだ自分は。
 完全に墓穴を掘った。
 こんなことを説明させられて、完全に羞恥プレイじゃないか。

「気持ちよかったんだぁ。」
「……忘れてくれ。」
「たち?で、えす?の暁人さんがさ、ケツに俺のちんぽ突っ込まれてあんなにとろとろになっちゃうってことはさ、本当に俺たち、相性が良すぎるってことだよね!」

 否定できなかった。
 昨夜の行為の節々から夜との「体の相性の良さ」を感じざるを得なかったからだ。
 自分は肉体刺激より、サディストとしての精神的充足に快感を見出すタイプだったはずだ。
 それなのに、この男の匂いが媚薬のように鼻から脳を犯し、考えなしに肉棒を叩きつけられても、一番いいところに的確に当たりどろどろに溶かされ逃げられなくなった。
 本能レベルで体が悦んでいるみたいだった。
 こんな男相手に本来感じるはずなどないのに。
 「体の相性が良すぎる」としか説明ができない。

「わかったから、金輪際関わらないでくれ。」

 南がそう言うと、スマホの着信音が鳴った。
 ふらつく足取りでカバンまで歩いて、スマホを取り出す。
 知らない番号だ。

「……はい。」
「『もっしもーし、深川夜です!南暁人さんのお電話でお間違』」

 ブチ切った。
 自分の背後から聞こえる能天気な声が、そのまま自身の耳元のスピーカーから流れてきたのだ。

「いつの間に私の電話番号を入手したのかな……?」

 こめかみに青筋が立ちそうになるのを必死にこらえ、怒りの笑みを浮かべながら尋ねた。

「振込票の控えは財布に入れっぱにしちゃダメだよ。」
「……っ……。」
「毎晩電話するから、電話帳に登録しておいてね。」

 気が滅入る。何もかもめちゃくちゃだ。

「チェックアウト延長しておいたからさ、暁人さんはもうちょっと休んで行きなよ。日曜だからお仕事ないでしょ?」

 そう声をかけると夜は荷物をまとめ始めた。

「待て、君は。」
「お腹すいたからご飯食べに帰る、じゃねー。あっ、また電話するから絶対出てよ。じゃあねー。」

 そう言うと、夜は部屋からでていった。

 えらい目にあった。
 南はベッドに寝転んで頭を抱えた。
 脱力。
 いつも余裕を忘れない南が、こんなに気を張ったのは久方ぶりだった。
 マスターの忠告を無視して、危険人物に手を出した自分の自業自得か。
 いや、たとえ危ない人物だったとしても、返り討ちにする自信があった。
 問題は二つ。
 一つは「相手が愚かだと思って舐めていた」こと。
 愚かであることは間違いないが、愚かなだけでなく頭が回る男で、それゆえ完全に相手のペースに持っていかれた。
 普段自分が取る戦略に、まんまとしてやられたのは不覚を通り越して屈辱だった。
 二つ目は「体の相性が良かった」こと。
 良いなんてもんじゃない、「良すぎた」のだ。
 反応しなければ相手にとってもつまらない、途中で形勢逆転するやり方も見出せただろう。
 しかし堪えようがなかった。
 腹の奥を突かれる度にびしゃびしゃと精液だか潮だかわからない体液を噴き出し、メスイキが止まらない体にされて、どうにかできるような状態ではなかった。
 むしろ、行き過ぎた快感という恐怖に情けなく泣き喘ぐ自分を、相手があやしている始末だ。

 南は決して潜在的Mという訳ではない。
 根っからのサディストである。
 本来ならば突然尻にちんぽを突っ込まれて揺さぶられても、感じることはないのだが、いかんせん、体の相性があまりにも良すぎたのだった。

 眉間に皺を寄せる、だらしなく開いた口から舌が伸びる、唾液がこぼれ落ちる、睨みつけるも赤く潤む目、ひくひくと収縮しちんぽを咥えこむ後孔、涙を流し痙攣する陰茎。
 昨夜の自分の状況を想像して悶絶。
 目に痛い緑色の髪、子どものような満面の笑みと、泣きそうな拗ねた顔、興奮に支配され舌舐めずりする口、征服するように見下す瞳、震える手首を強く掴み上げる手の平、ぐいぐいと体内に侵入する熱い肉の塊。
 昨夜、自分を組み敷いて、抱き潰した男の情景がありありと浮かぶ。

『南さんっ…可愛い、大好き……!』

 ぞわぁ、と鳥肌。
 震える体を自分自身で抱きしめる。
 思い出しては、屈辱と羞恥と怒りがふつふつと湧いてくる。
 名も知らぬ野良犬に手を噛まれた。
 そんなものだと思い込もうとする。
 金輪際関わらなければいい、決意する。
 しかし、そんなことができるだろうか。
 未だに不規則にきゅんと疼く下っ腹を押さえつけるたび、決意は不安に塗りつぶされる。

 南は、ベッドに投げ出したスマートフォンを乱暴な手つきで引っ掴み、着信履歴を開いた。
 先ほどかかってきた忌まわしき電話番号を着信拒否に設定し、ようやく胸のつかえが取れたような気がした。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった

cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。 一途なシオンと、皇帝のお話。 ※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。

平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます

ふくやまぴーす
BL
旧題:平凡な俺が双子美形御曹司に溺愛されてます〜利害一致の契約結婚じゃなかったの?〜 名前も見た目もザ・平凡な19歳佐藤翔はある日突然初対面の美形双子御曹司に「自分たちを助けると思って結婚して欲しい」と頼まれる。 愛のない形だけの結婚だと高を括ってOKしたら思ってたのと違う展開に… 「二人は別に俺のこと好きじゃないですよねっ?なんでいきなりこんなこと……!」 美形双子御曹司×健気、お人好し、ちょっぴり貧乏な愛され主人公のラブコメBLです。 🐶2024.2.15 アンダルシュノベルズ様より書籍発売🐶 応援していただいたみなさまのおかげです。 本当にありがとうございました!

モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた

マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。 主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。 しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。 平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。 タイトルを変えました。 前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。 急に変えてしまい、すみません。  

ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる

Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。 でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。 彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

処理中です...