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番外編 嘘つき達の夜

嘘つき達の夜 2*

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 南は意識が朦朧としていた。
 ぼんやりと曇る思考をひたすら引き戻す作業をする。
 ここは、知らない部屋の、ベッドの上、ホテルか?
 くたりと仰向けに転がって、脚を……開いて…。
 体を割り開いた間には、男がいる。
 誰だっけ…、そうだ、さっきバーで会った、深川夜とかいう男だ。
 グチュグチュと、水音が響く。

「あ、起きた!」

 夜の声を聞いて、ようやく状況を理解する。
 シャツの前をはだけられ、下半身は下着ごと脱がされて何もつけていない。
 腹や胸には、すでに痛々しいほどの噛み跡とキスマークの雨が降らされている。
 肩や首もひりひりと痛む、全身に刻み付けられているのだろう。
 水音は自身の股間から響いている。
 すでに腹の奥までほぐされ尽くしたような違和感があった。
 アナルの縁に、熱い肉のようなものが当たっている。
 う”っ、と嘔吐きそうになる喉を落ち着かせて、フゥーと一息吐き、冷静を崩さない口調で尋ねた。

「何の真似かな?」
「ミナミさん可愛い!」
「……日本語はわかるか?」
「ミナミさんのおまんこと俺のちんぽの先、くちゅ、ってキスしてる。」
「……は……、いじめられるのが、好きとか言っていなかったか?」
「あ~、あれ嘘!ごめん!」
「…………っ。」
「俺ほんとは、いじめる方が好き。」

 不覚。
 大した酒も飲んでないのに、前後不覚になるはずがない。
 薬、レイプドラッグまで飲ませて、用意周到な奴だ。
 腹を蹴り上げて、抵抗しようにも、力が入らない。
 両太腿を掴まれて、グイッと押し開かされる。

 クソ、耐えるしかない。
 なるべく反応しないように、こいつを面白がらせたら敗けだ。
 マグロのようにただ横たわって、時が過ぎるのを待て。
 この手のタイプは好奇心は強いが、すぐに飽きるだろう。
 そうすれば、形勢逆転できる。

 ローションでぐちゃぐちゃになった尻穴に、男の固い肉棒がずんっと侵入した。
 シーツを掴み、不快感でぐっと呻き声を漏らす。
 キツい、圧迫感、体が裂かれそうな感覚。
 しかし、初めてにしては比較的、抵抗なく侵入を受け入れた。
 
 半ばまで挿入したかと思えば、ずろろろと引き抜かれ、またわずかに押し込む、その繰り返し。
 緩いピストンだが、キツく締め上げるアナルがその動きに連動し、嫌でも尻が揺れる。

「声出さないねえ。」
「あいにく私に、レイプ願望はない。……痛みに泣きわめくほど子どもでもない。」

 夜は不機嫌そうにむくれた。
 その調子だ、飽きてしまえ、やる気を失え。
 しかし、そんな南の願いとは裏腹に、夜は腰の動きを早めた。
 緩い律動で徐々にとろけたそこは、ローションが絡み合って、すでにスムーズな滑走が可能であった。
 先程までの動きが幼稚なごっこ遊びであったかのように、深く深くちんぽを突き入れては、抜け切るギリギリまで腰を引き、さらにずぱんっと激しい音を響かせ、再び腹の奥にちんぽをブチ込む。

「あ”……ぅ”……っ…?」

 その衝撃に耐えかね、南は自分に覆いかぶさる夜の腕にしがみついた。
 なんだ、これは。
 何も感じないはずだったのに。
 体の中心から、ぶわぁと熱が広がっていく。
 中の腸壁が敏感になって、固いちんぽがローションとともに滑走するたび、びくんと体が震えるのを抑えられない。
 体が、体が、おかしい。
 ゾクゾクする。
 鳥肌が立つ。

「……私の体に……何をした…?」
「ん~?何にもしてない、よっ!」
「んぅ”っ…!?はー、はー…。」

 反応するな、声を出すな、こいつを喜ばせるな。
 頭ではわかっているのに、体が従おうとしない。
 体が自分の意思で律せなくなることなんて初めてで、南の頭はひどく混乱する。
 目を見開いて、手で口を押さえながら、混乱に耐える南を見て、夜は楽しそうに笑いながら、腰の動きを止める。
 南が見上げると、覆いかぶさる夜が見下す目と視線がかち合う。

「あんたさ、周りの人間全員自分より下だと思ってるタイプでしょ。それを誰にも悟られないよーにしてる。でも、俺にはわかるよ。……たくさん見下されてきたからね。」

 頭の中まで見通すような視線に、南は身震いし、脊髄までどろりと溶けてしまうような感覚を覚えた。
 その視線は、自分が周りの人間に向けてきたもののはずだった。
 こんな、捕食される直前のか弱い動物のような恐怖を感じていたのか。
 目を見るのが怖い、しかし、こんなことで折れるわけにはいかない。
 自分は見通す側の人間。少しばかり自分自身を暴かれたからといって、動揺しては相手の思う壺だ。
 優位を崩されるなんてことを、南が許すわけがなかった。

「っ…君は、愚かなそぶりをしているけど、言うほど愚かじゃないね。誰かに好かれる為に取り繕うより、自分自身というものに素直なだけだ。だけど、もしワンナイトを狙っているのなら、小綺麗な格好をして、当たり障りのない態度をした方が成功率は高いよ。」
「わんないと……?」

 意味がわからない、とでも言うように、夜はキョトンとした目をした。
 そんな夜の一挙手一投足にも苛立ちを覚える。
 この期に及んで、まだ無知の振りをしようと言うのか。

「難しいこと言わないでさ、もっと可愛いとこ、見せて?」

 ニッと笑ったかと思うと、夜は再び腰の動きを強めた。

 ばちゅんっ、ばちゅんっ、ばちゅんっ、ばちゅんっ

 耳を塞ぎたくなるような、下品で激しい水音が響く。
 足をおっ広げて、男に組み敷かれて、屈辱ではらわたが煮えくり返りそうになる。
 しかし、心とは裏腹に、体はどんどん熱を持ち、加速してやまない。
 先程までは、わずかに快感を拾うだけだった。
 否、衝撃や羞恥を快感と勘違いしているだけだ、そう言い聞かせていた。
 しかし、もう、そんな言い訳も通用しない体に、南は追い詰められていた。

「あ…ぇ…え”?」

 なんだ、これ。
 気持ちが良すぎる。
 震えが止まらない。
 シーツを掴む指先がじくじく疼いて、痛くてたまらない。
 唇を噛んで必死に耐えても、次々に波が襲ってくるから意味をなさない。
 見開いた目に、涙の粒が溜まっては、とめどなく溢れる。
 最後に泣いたのなんて、20年以上前で、頬を伝う熱い液体に自分が幼くなってしまったような感覚に陥り、脳が混乱を来す。

 なおも夜は、尻穴を容赦なく犯し、自身のアナルがきゅうきゅうと締め上げ、それに答えているのがわかる。
 こんな感覚は知らない、知らない。怖い。

「……けて、助けて、くれ…。」
「んう~?」
「もう、やめてくれ…怖いんだ…。」
「何が怖いの?」
「わからないっ…!なんでも良いから、早く、早く終わってくれぇ!」

 瞼の裏がちかちかと明滅する。
 体は熱いのに、冷や汗が止まらない。
 脳の中でバチッ、バチッと電流のような音が鳴り響く。
 ばくばくと、心臓が大きく鼓動を繰り返し、苦しい、痛い。

「心臓…痛い…ぃ…ん”、ぅん”っ、はーっ、はーっ」
「しんぞーほっさでフクジョウシ?とかやめてね。」

 わかって言っているのか。
 難しい言葉は理解していないようだ、時折片言のようにたどたどしく喋る。

「もぉ、イキたくない…、イキたくなぃ…い…!」
「え?イってたの?」

 もうひっきりなしに射精を伴わない絶頂を迎えていた。
 俯いて、下唇を血が出るほど噛み締め、目をぎゅっと瞑る。
 止めることができないと悟って、悟られないようにただ必死に絶頂の波に耐える。

「だって精子出てないよ。」

 そう言うと、先走りをだらだらと流して過敏になった先端をぐちゅぐちゅと指で容赦無くこねくり回す。
 突然与えられた暴力的な刺激。
 脳裏に閃光が爆ぜる。

「あぎゃあぁ”っ…!?触っ、る”……な”ぁ”…!」
「おっきいねちんぽ。いろんな人にたくさん使ってきたんでしょ。でもここ、もう使い道ないよ。」

 南は自身の過敏な器官を弄くり回す手を震える指で掴んで引き剥がす。
 そのまま、夜の腹を押しのけると、ちんぽは名残惜しそうに、南の尻穴から抜け出る。
 今だとばかりに、ベッドの上で四つん這いになり、夜から逃げようとした。
 
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