【完結】呪われた双子 -犬として育てられた弟がよしよし♡され、次期当主として育てられた兄がボロボロ♡にされる話-

クズ惚れつ

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弟編 弟救出大作戦

弟救出大作戦 8*

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※獣姦(未遂)、嘔吐表現注意

「ははは、そうだ。そもそも犬と人間がまぐわうのがおかしな話だったんだ。犬は犬と交尾をするものだろう。」

 父親は従者の一人の名前を呼んだ。
 その男が、リードを引いてカーテンの奥から現れた。
 それは毛の短い大型の雄犬だった。
 薬でも使われたのだろうか、明らかに発情している。
 荒く短い呼吸を繰り返し、今にも飛びかかりそうな状態だ。

 ほつみは「ひっ」とか細い悲鳴をあげた。
 別の使用人が慣れた手つきでほつみの体を、普段通りのヒトイヌ拘束に縛り上げていく。
 また別の使用人は、神谷の拘束を解き、ほつみの体から乱暴に引き剥がした。
 代わりに、犬の体がほつみの体に被せられる。

 一度自身を犬だと認めてしまったせいか、ほつみの心は密かに折れていた。
 その態度は、抵抗から懇願へと変わっていく。
 絶対に挫けることのなかったほつみの意思が、初めて壊れて、崩れ去っていく。

「嫌だっ、嫌だぁっ、許してください、それだけは。なんでもするから、お願いしますっ!」

 ほとんど身動きの取れない状態で、折り曲げられた手足だけをバタバタと暴れさせた。
 じりじりと這いつくばって、逃げようとする。
 しかし従者たちに取り押さえられ、うつ伏せのまま固定されてしまった。
 犬のものをアナルにあてがわれて、半狂乱になって死に物狂いで懇願し暴れる。
 神谷に背筋がぞくりと震える感覚と、腸が煮えくり返るような怒りが同時に襲ってきた。

「犬は喋らない、ワンと鳴いていろ。」

 父親がそう言うと、使用人が猿轡をつける。
 無防備に晒されたアナルに、熱い肉のようなものの先が当たる感触がした。
 ぶるぶる全身を震わせ、見開いた両目から涙が溢れた。

「ごふっ……おぇ”……ぅ”ぁ”おごっ…。」

 嘔吐。
 しかし猿ぐつわに阻まれて、呼吸困難を引き起こす。
 激情に狂った父親は、そのことに気がつかない。

「旦那様!」

 神谷の言葉も届かない。
 他の従者たちも、さすがにやり過ぎではとドン引きした表情を見せる。

「旦那様っ!猿轡を解かないと、死んでしまいます!」

 その叫びに、父親はハッと我に返る。
 父親が促し、従者が猿轡を解くと、ほつみはどばっと吐瀉物を漏らし、げほげほと咳き込みながら尚も嘔吐し続けている。

 けほっ、けほっ、は~~っ、はっ
 精液と吐瀉物まみれで、うな垂れたまま激しい呼吸を繰り返すほつみ。
 胸のあたりが不規則に痙攣する。
 最後の力を振り絞るように頭をあげる。
 父親を睨みつけるその瞳は、心臓を射抜く鋭い視線。
 殺意と憎悪と絶望にまみれた、その奥にかすかに寂しさのようなものが滲んでいた。
 放って置かれた子どもが親を見つめるような、山奥に捨てられた子猫が主人を見るような、そんな幼い寂しさを。

「……ほつみ。」

 父親はたじろぎ、思わず息子の真の名を口にした。
 神谷は、自身を押さえつける従者たちを振り切り、我を忘れてほつみの体にすがりついた。

「洗って差し上げないと…。」

 うわ言のように、自分に言い聞かせるように、そう呟いた。
 覆い被さられただけとは言え、犬と接触し嘔吐したのだ。
 その感触をすぐに拭い去らなければ。
 10年以上酷い仕打ちを受けても、心の折れないほつみに心酔し、救いたいと思ったのだ。
 その本人が、壊されて潰されるところを目の当たりにして、神谷はひどく動揺していた。

 主人の存在も忘れて、ほつみを抱え上げて、風呂場に向かおうとする。
 しかし、ほつみは神谷の腕の中から逃れようと暴れる。
 あまりに激しく暴れるものだから、神谷の腕から転がり落ちた。
 そのまま父親を、再び殺意の目で睨みつけて言った。

「19年前、俺たちが生まれたあの日。厄介な弟なんて殺しちまえばよかったんだ……!」

 自暴自棄になって叫ぶほつみの体を、神谷は再度、力強く抱きしめた。
 自身の胸に顔を埋めさせ、口を閉じさせる。

「そんなことを、言わないでください…っ。厄介な存在なんかにしたのは、我々のエゴです。『呪われた双子』なんて、幻想なんです。貴方たち兄弟は何も悪くない。必要以上に例外を恐れ、慣習に飼いならされた大人が全て悪い。」

 抑えているようだが、腕の中のほつみはわずかに震えていた。
 父親は呼吸を荒げながらも、目を伏せて二人を見ようとしなかった。

 その時だった。
 ザッと勢いよく扉を開けたのは、執事だった。

「旦那様、緊急事態です…!」
「入ってくるなと言っただろう!!」

 激昂する父親に、従者たちはしんと静まり返ったが、執事は怯まなかった。

「先ほどお電話がかかってきまして、旦那様に代われと。」
「どいつだ、後にしろ!」
「いえ、それが、週刊西日の記者の方だと…。」

 週刊西日とは、近頃話題に上がることの多い有名な週刊誌だ。

「何用だ、後にしろと何度言えばわかる。」
「それどころではございません…!『スキャンダル』の件とのことです。」

 執事はそう叫び、床に倒れ伏せているほつみの方を、ちらりと見た。
 その執事の姿を見て、どこか事の重大さを理解した様子で、父親は足早に部屋を出た。

 静まり返る室内。
 
 神谷は誰よりも早く動き出し、ほつみの体を抱え上げる。
 ほつみは力が抜けて、もう指先一本動かす気力もないようだった。
 

 神谷が向かった先は、風呂場だった。
 拘束具を丁寧に外し、温かくしたシャワーをかけて、念入りに体を洗う。
 衰弱したほつみ。
 自身の腕を抱きしめるようにして、仕切りにさすっている。
 瞳はどこを見つめているのかわからないが、目が座っており、ブツブツと声にならない声で呟いている。

「殺してやる……殺してやる……。」

 はたから見れば、不気味にすら思えるほつみの姿だったが、神谷は逆にほつみへの愛しさを募らせていた。
 あれだけの仕打ちを受けても、心が折れることはなく、逆に父親への殺意を燃え上がらせているのだ。
 ほつみが壊されていないことに安堵し、それでこそ貴方だと誇りすら抱く。
 その一方で、自分がもっと早く救っていればと後悔の念が襲ってくる。

 ひとしきり洗うと、ほつみの体を湯船の中にそっと沈めた。
 少し落ち着いたのか、ほつみは一息吐いて神谷を見上げた。
 神谷の服は、ほつみの体を汚していた体液や吐瀉物に塗れていたが、本人はいたって気にしていない様子だった。
 服が汚れるのも厭わずに、自分を救おうとしてくれた目の前の従者。
 その男が、先ほど自分にかけた言葉を思い出しながら、掠れる声で喋りかけた。

「神谷。もし、俺が、殺してくれと、頼んだら、お前は殺してくれるのか。」

 神谷は虚をつかれたような顔をしていた。
 顔を歪ませて数秒の間、何と答えようか悩んでいるようだった。

「……できません。従者としてはその命令に従うべきだとわかっているのですが、おそらく自分にはできない。これは俺のエゴです。」
「お前のエゴ?」
「俺は貴方に生きていて欲しいから。」

 神谷は、ほつみの頭を腕で包み込みように抱きしめた。

「貴方は生きていていいんです、人間として。幸せになっていいんです。少なくとも俺は、貴方に幸せになってほしい。そのためなら何でもします。俺の人生を捧げます。願わくば、俺に貴方を幸せにさせてください。」

 ほつみは、はー、はー、と息を整えながら、神谷の背中を抱きしめ返した。
 肩に、ほつみの熱くてかすかな吐息が当たり心地よい。
 しばらくの間、二人は言葉も交わさずに、抱きしめあっていた。
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