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兄編 SMバーに行こう
久留米の休日
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「あら久留米ちゃん久しぶりじゃない!」
「トモヤさん、お久しぶりです。」
バイトの休暇を取ってから、早2週間。
久留米は久しぶりに客として、このsmバーを訪れていた。
駅前の裏通り沿い、細い階段を降りた地下にそのバーはあった。
風俗ではなく、SとMの社交場という意味合いが強い。
ただ会話を楽しむ人間、一夜限りの相手を探す者、生涯のパートナーを求める者、多様な人間が足を踏み入れていた。
とはいえ、ただのバーではなく、必要があれば従業員がS役やM役としてサービスすることもある。
地下二階には備品が揃えられている本格的なプレイルームがある。
ライトな客からハードな客まで本格的なSMが楽しめることが売りだった。
「ちょっと忙しくて、来週には復帰できると思います。」
「もしかして、例の『彼』!?」
このバーのマスター、トモヤさん。
ここら辺のSM愛好家に彼を知らないものはいない。
特徴的なオネエ口調と、ハイテンションな喋りで、客たちを楽しませる。
そして、緊張とともにやってきた初めての客たちを温かく迎え入れていた。
「えぇ、まぁそんな感じです。」
「それで、調子はどうなのよ~!」
「飛んだじゃじゃ馬ですが、素質ありですよ。」
「あら~、久留米ちゃんが特定の相手に入れあげるのなんて初めてだから、気になるわぁ。どんな子なの?」
「犬みたいな…ライオンですかね……。」
「ライオンなのに猫じゃなくて犬なの!?」
軽快な会話を交わしながら、マスターは久留米にジンジャーエールを出す。
未成年の久留米が、いつも頼んでいるドリンクだった。
「思えば、久留米ちゃんとの出会いも3年前になるのねえ。」
「そうですねえ。」
「ぼっさい前髪とメガネして、猫背でリュック背負って、おまけに高校の制服着て、うちに来るんですもの。びっくりしたわよ。」
「ははは、恥ずかしい……。」
「未成年だしおまけに高校生ともなると、うちに入れていいものか、悩んだものよ。」
「今もギリ未成年ですけどね。」
「知ってる?あんたのこと入れてあげたらって言ったのkeiちゃんなのよ。」
「keiさんが?」
「悩んでる時に、声かけてきて、『年齢なんか関係ない。自分の嗜好を受け入れてくれる人がいるだけで救われる。自分がそうだったから。逆に拒否されたら一生苦しい思いをすることになるかも』って。」
「そうだったんですか…。」
「話してみたら、まさかのMじゃなくてSだったし、もうてんてこ舞いよ。」
「その節はほんと、ご迷惑をおかけしました。」
「ううん、いいのよ。そのおかげでいいご縁ができたし、今や大事な従業員なんだから。」
「もしかして、私の話してた?」
後ろから久留米の肩をがっと組んできたのは、一人の女だった。
「久留米ちゃんが初めて来た時の話。入店拒否しようとしてたらkeiちゃんが入れてあげてって言ったわよね。」
「あぁ、それね。私も右も左も分からない時にマスターが拾ってくれて救われたから、あのまま久留米くん帰したくなかっただけ。」
kei。
片側だけ刈り上げた黒髪、耳や鼻、鎖骨を飾るピアス、上下セットの黒レザーを着た彼女は、少しばかり名の知れた緊縛師だ。
久留米がこのバーを初めて訪れた時、既にここの常連だった。
性別問わず、緊縛の対象にし、性的なプレイというよりは、美しさを求めるアーティストに近い存在。
久留米のことは、何かと気にかけてくれている姉貴分といったところだ。
「あんたは未成年だったのにサバ読んで潜り込んだんでしょうが!」
「いて、もう時効でしょ。今は成人してるし。って、そういえば、久留米くん、この前言ってたあの子とはその後、どうなったの?」
「それよ!!その話よ!!」
マスターは途端に声を張り上げる。
「そこそこいい感じ……なんですかね?」
「今度店に連れて来なさいよ、そのライオン。」
「えぇ?来てくれるかなぁ?」
keiが一気にビールを煽って、答える。
「ライオンは猫と同じでタイミングが大事らしいよ。機嫌が悪い時は襲ってくるけど、そういう時は放っておいて、ここだ!ってタイミングで押すと従うらしい。」
「マジのライオンを調教しているわけじゃないんすよ……。」
久留米が困ったようにそう答えると、二人はけらけらと笑った。
「トモヤさん、お久しぶりです。」
バイトの休暇を取ってから、早2週間。
久留米は久しぶりに客として、このsmバーを訪れていた。
駅前の裏通り沿い、細い階段を降りた地下にそのバーはあった。
風俗ではなく、SとMの社交場という意味合いが強い。
ただ会話を楽しむ人間、一夜限りの相手を探す者、生涯のパートナーを求める者、多様な人間が足を踏み入れていた。
とはいえ、ただのバーではなく、必要があれば従業員がS役やM役としてサービスすることもある。
地下二階には備品が揃えられている本格的なプレイルームがある。
ライトな客からハードな客まで本格的なSMが楽しめることが売りだった。
「ちょっと忙しくて、来週には復帰できると思います。」
「もしかして、例の『彼』!?」
このバーのマスター、トモヤさん。
ここら辺のSM愛好家に彼を知らないものはいない。
特徴的なオネエ口調と、ハイテンションな喋りで、客たちを楽しませる。
そして、緊張とともにやってきた初めての客たちを温かく迎え入れていた。
「えぇ、まぁそんな感じです。」
「それで、調子はどうなのよ~!」
「飛んだじゃじゃ馬ですが、素質ありですよ。」
「あら~、久留米ちゃんが特定の相手に入れあげるのなんて初めてだから、気になるわぁ。どんな子なの?」
「犬みたいな…ライオンですかね……。」
「ライオンなのに猫じゃなくて犬なの!?」
軽快な会話を交わしながら、マスターは久留米にジンジャーエールを出す。
未成年の久留米が、いつも頼んでいるドリンクだった。
「思えば、久留米ちゃんとの出会いも3年前になるのねえ。」
「そうですねえ。」
「ぼっさい前髪とメガネして、猫背でリュック背負って、おまけに高校の制服着て、うちに来るんですもの。びっくりしたわよ。」
「ははは、恥ずかしい……。」
「未成年だしおまけに高校生ともなると、うちに入れていいものか、悩んだものよ。」
「今もギリ未成年ですけどね。」
「知ってる?あんたのこと入れてあげたらって言ったのkeiちゃんなのよ。」
「keiさんが?」
「悩んでる時に、声かけてきて、『年齢なんか関係ない。自分の嗜好を受け入れてくれる人がいるだけで救われる。自分がそうだったから。逆に拒否されたら一生苦しい思いをすることになるかも』って。」
「そうだったんですか…。」
「話してみたら、まさかのMじゃなくてSだったし、もうてんてこ舞いよ。」
「その節はほんと、ご迷惑をおかけしました。」
「ううん、いいのよ。そのおかげでいいご縁ができたし、今や大事な従業員なんだから。」
「もしかして、私の話してた?」
後ろから久留米の肩をがっと組んできたのは、一人の女だった。
「久留米ちゃんが初めて来た時の話。入店拒否しようとしてたらkeiちゃんが入れてあげてって言ったわよね。」
「あぁ、それね。私も右も左も分からない時にマスターが拾ってくれて救われたから、あのまま久留米くん帰したくなかっただけ。」
kei。
片側だけ刈り上げた黒髪、耳や鼻、鎖骨を飾るピアス、上下セットの黒レザーを着た彼女は、少しばかり名の知れた緊縛師だ。
久留米がこのバーを初めて訪れた時、既にここの常連だった。
性別問わず、緊縛の対象にし、性的なプレイというよりは、美しさを求めるアーティストに近い存在。
久留米のことは、何かと気にかけてくれている姉貴分といったところだ。
「あんたは未成年だったのにサバ読んで潜り込んだんでしょうが!」
「いて、もう時効でしょ。今は成人してるし。って、そういえば、久留米くん、この前言ってたあの子とはその後、どうなったの?」
「それよ!!その話よ!!」
マスターは途端に声を張り上げる。
「そこそこいい感じ……なんですかね?」
「今度店に連れて来なさいよ、そのライオン。」
「えぇ?来てくれるかなぁ?」
keiが一気にビールを煽って、答える。
「ライオンは猫と同じでタイミングが大事らしいよ。機嫌が悪い時は襲ってくるけど、そういう時は放っておいて、ここだ!ってタイミングで押すと従うらしい。」
「マジのライオンを調教しているわけじゃないんすよ……。」
久留米が困ったようにそう答えると、二人はけらけらと笑った。
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