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弟編
弟編 1*
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とある名家。
後継者争いを生まないために、次男は生まないという暗黙の掟があった。
男が生まれるまでは、子供を産み続ける。その男が、次期当主となることを義務付けられているのだ。
しかし、20年ほど前に、たまたま双子の兄弟を妊娠してしまった。一卵性双生児だった。
もちろん、母体保護法の中絶条件を満たすわけもなく、掟を破り、二人の息子を産んだ。
子供達の処遇を巡って一族は大騒ぎになった。
息子一人なんて時代遅れだ。
争いを生まないためにはしょうがない。
古い体制を変えるいい機会ではないか。
外部の血筋が入り込む可能性が高くなる。
殺してしまおう。
陰茎を切ってしまおう。
などなど、一族の長い歴史が培った異常なサイコパス性により、様々な意見が出た。
しかし、無論法を犯すリスクは流石に取れない。
そんな中、一家の記録の書物をかたっぱしから辿ると、過去に二回、双子が生まれたことがあったらしい。
一度目は何百年も前で、生まれてすぐに殺されたらしい。
二度目は百年ほど前で、弟を人ではなく犬として見せしめにした、との記述があった。
議論の結果、前例に倣って弟を犬として育てることとなった。
義務教育や、他の家との懇親など、必要なものには普通に参加させるが、家では犬として扱った。
外から家に帰ると、弟専用の裏口の玄関がある。そこには拘束具が用意されており、服を全て脱ぎ、それを装着しなければ家に入れない。口枷もセットである。
そのような躾がされるも、彼が一度も守ろうとしたことはない。
雇われた世話係に捕まり、暴れまわるも力の差で無理やり拘束具をつけさせられる。
拘束具は、肘と膝を折られたまま黒ベルトで固定され、リードのついた首輪が付属しているものだった。
サイズは弟の体に合うように特注で作られたもので、服を着ていては装着できないほどみちみちである。
そのため、必ず全裸を強いられる。
そのようなヒトイヌの状態で移動する手段は、肘と膝をついて、四つ足の犬のように歩くしかない。
さらに、拘束されているときは、必ず世話係が後方でリードを掴んでいるため、逃げることさえできない。
屈辱に耐えながら、急いで犬小屋に入る。
用意された自分の部屋は、犬用のものよりも少し大きめの犬小屋しかない。
家族が暮らしている母屋から少し行ったところの離れにある。
それも躾けられたことだった。
躾けに抵抗したい気持ちはあれど、自分の犬としての無様な姿を親族に晒す屈辱に耐えられないため、自分の意思でいち早く犬小屋に入った。
犬小屋に入ると、世話係が檻に鍵をかけ、中からは出られない。
犬小屋は二つの部屋に分かれており、4畳半ほどのスペースと、奥にトイレがある。
犬小屋から出なくても生活ができるように誂えられたものだ。
トイレといえば聞こえはいいが、犬のトイレそのもの。
拘束された状態では、人間のトイレは使えず、犬と同じ仕方をするしかない。
帰宅後から夕飯の時間までは決まった時間ではないが、拘束されている以上自由なことはできない。
両親や兄や親族一同から代わる代わる、芸を仕込まれたり、躾けられたり、遊ばさせられたりすることで、犬としての自覚を持つように調教される屈辱の時間。
夕飯の時間になると、女中がご飯を運んできて、檻の中に入れてくる。
食器はまさしく犬用のそれで、底が浅く一枚の皿。
拘束されていて腕は使えない。箸やフォークももちろんなく、さらに顔を突っ込んで犬食いをするしかない。
屈辱に顔を歪ませて、ただ無心で食べる。
食べることを拒否した時もあったが、結局自分の体が持たないため、諦めた。
舌で舐めとって、皿を綺麗にすることを躾けられている。
散歩の時間になると、世話係が檻の鍵を開け、リードを引っ張って外に連れ出す。
弟が嫌がって抵抗してもリードを引っ張られると首が締り、嫌でも歩かざるを得なくなる。
その状態のまま、見せしめとして家中を一周歩かされる。家の中のみならず、庭まで。
各居室も全て周り、暮らしている住人全員に姿を見せつけなければならない。
執事や女中、両親、親族とすれ違っても、ただ犬を見るような目で見られるだけだ。
散歩は世話係ではなく、母親、父親、兄が行うことも多い。
散歩が終わると、離れにある風呂に入れられる。拘束されているため自身で洗うことはできず、世話係が隅々まで洗ってくれる。
そのまま、再び歩かされ、犬小屋に戻る。
世話係がトイレの処理をした後、拘束は外される。
檻に鍵をかけられ、就寝までは自由な時間が与えられる。
この夜の時間と朝起きた後は唯一拘束が解かれており、課題をやったり、自分のやらなければならないことをやっている。
朝、世話係が檻の鍵を開けに来る。
朝の支度は、弟自ら行う。しかし、誰も口を聞いてはくれないし、朝ごはんも出ない。
何事もなかったかのように家を出て、学校に行く。
帰ってきたら再び、拘束され犬としての生活が始まる。
小学校に入る前からそのように調教生活を強いられ続けた。
それは、「自身が犬、家畜、奴隷である」という自覚により、後継者の可能性があると言う発想に至らせないように躾けるためだった。
この兄弟は生まれながらにして、異常なまでの気性の荒さを持っていた。
幼い頃から約15年もの間、親族一同から犬として調教されているにも関わらず、弟の抵抗心が折れ切ることはなかった。
自分は犬なんかじゃない、人間だ。
このサイコパス変態一族に絶対に復讐してやる、という精神で生き続けていた。
床に這いつくばらされても、自分の両親、兄、執事、女中、祖父母を睨みつけるその目は殺意に満ち溢れていた。
なかなか折れない弟に、父親や母親は、「従順な犬としてなら愛してあげるのに」と囁くも、人間としての自覚は失わず、噛み付かんという勢いだった。
後継争いの芽を恐れて行った調教が、逆に弟の殺意に火をつけることとなっていた。
そんなこんなで双子は19歳になっていた。
後継者争いを生まないために、次男は生まないという暗黙の掟があった。
男が生まれるまでは、子供を産み続ける。その男が、次期当主となることを義務付けられているのだ。
しかし、20年ほど前に、たまたま双子の兄弟を妊娠してしまった。一卵性双生児だった。
もちろん、母体保護法の中絶条件を満たすわけもなく、掟を破り、二人の息子を産んだ。
子供達の処遇を巡って一族は大騒ぎになった。
息子一人なんて時代遅れだ。
争いを生まないためにはしょうがない。
古い体制を変えるいい機会ではないか。
外部の血筋が入り込む可能性が高くなる。
殺してしまおう。
陰茎を切ってしまおう。
などなど、一族の長い歴史が培った異常なサイコパス性により、様々な意見が出た。
しかし、無論法を犯すリスクは流石に取れない。
そんな中、一家の記録の書物をかたっぱしから辿ると、過去に二回、双子が生まれたことがあったらしい。
一度目は何百年も前で、生まれてすぐに殺されたらしい。
二度目は百年ほど前で、弟を人ではなく犬として見せしめにした、との記述があった。
議論の結果、前例に倣って弟を犬として育てることとなった。
義務教育や、他の家との懇親など、必要なものには普通に参加させるが、家では犬として扱った。
外から家に帰ると、弟専用の裏口の玄関がある。そこには拘束具が用意されており、服を全て脱ぎ、それを装着しなければ家に入れない。口枷もセットである。
そのような躾がされるも、彼が一度も守ろうとしたことはない。
雇われた世話係に捕まり、暴れまわるも力の差で無理やり拘束具をつけさせられる。
拘束具は、肘と膝を折られたまま黒ベルトで固定され、リードのついた首輪が付属しているものだった。
サイズは弟の体に合うように特注で作られたもので、服を着ていては装着できないほどみちみちである。
そのため、必ず全裸を強いられる。
そのようなヒトイヌの状態で移動する手段は、肘と膝をついて、四つ足の犬のように歩くしかない。
さらに、拘束されているときは、必ず世話係が後方でリードを掴んでいるため、逃げることさえできない。
屈辱に耐えながら、急いで犬小屋に入る。
用意された自分の部屋は、犬用のものよりも少し大きめの犬小屋しかない。
家族が暮らしている母屋から少し行ったところの離れにある。
それも躾けられたことだった。
躾けに抵抗したい気持ちはあれど、自分の犬としての無様な姿を親族に晒す屈辱に耐えられないため、自分の意思でいち早く犬小屋に入った。
犬小屋に入ると、世話係が檻に鍵をかけ、中からは出られない。
犬小屋は二つの部屋に分かれており、4畳半ほどのスペースと、奥にトイレがある。
犬小屋から出なくても生活ができるように誂えられたものだ。
トイレといえば聞こえはいいが、犬のトイレそのもの。
拘束された状態では、人間のトイレは使えず、犬と同じ仕方をするしかない。
帰宅後から夕飯の時間までは決まった時間ではないが、拘束されている以上自由なことはできない。
両親や兄や親族一同から代わる代わる、芸を仕込まれたり、躾けられたり、遊ばさせられたりすることで、犬としての自覚を持つように調教される屈辱の時間。
夕飯の時間になると、女中がご飯を運んできて、檻の中に入れてくる。
食器はまさしく犬用のそれで、底が浅く一枚の皿。
拘束されていて腕は使えない。箸やフォークももちろんなく、さらに顔を突っ込んで犬食いをするしかない。
屈辱に顔を歪ませて、ただ無心で食べる。
食べることを拒否した時もあったが、結局自分の体が持たないため、諦めた。
舌で舐めとって、皿を綺麗にすることを躾けられている。
散歩の時間になると、世話係が檻の鍵を開け、リードを引っ張って外に連れ出す。
弟が嫌がって抵抗してもリードを引っ張られると首が締り、嫌でも歩かざるを得なくなる。
その状態のまま、見せしめとして家中を一周歩かされる。家の中のみならず、庭まで。
各居室も全て周り、暮らしている住人全員に姿を見せつけなければならない。
執事や女中、両親、親族とすれ違っても、ただ犬を見るような目で見られるだけだ。
散歩は世話係ではなく、母親、父親、兄が行うことも多い。
散歩が終わると、離れにある風呂に入れられる。拘束されているため自身で洗うことはできず、世話係が隅々まで洗ってくれる。
そのまま、再び歩かされ、犬小屋に戻る。
世話係がトイレの処理をした後、拘束は外される。
檻に鍵をかけられ、就寝までは自由な時間が与えられる。
この夜の時間と朝起きた後は唯一拘束が解かれており、課題をやったり、自分のやらなければならないことをやっている。
朝、世話係が檻の鍵を開けに来る。
朝の支度は、弟自ら行う。しかし、誰も口を聞いてはくれないし、朝ごはんも出ない。
何事もなかったかのように家を出て、学校に行く。
帰ってきたら再び、拘束され犬としての生活が始まる。
小学校に入る前からそのように調教生活を強いられ続けた。
それは、「自身が犬、家畜、奴隷である」という自覚により、後継者の可能性があると言う発想に至らせないように躾けるためだった。
この兄弟は生まれながらにして、異常なまでの気性の荒さを持っていた。
幼い頃から約15年もの間、親族一同から犬として調教されているにも関わらず、弟の抵抗心が折れ切ることはなかった。
自分は犬なんかじゃない、人間だ。
このサイコパス変態一族に絶対に復讐してやる、という精神で生き続けていた。
床に這いつくばらされても、自分の両親、兄、執事、女中、祖父母を睨みつけるその目は殺意に満ち溢れていた。
なかなか折れない弟に、父親や母親は、「従順な犬としてなら愛してあげるのに」と囁くも、人間としての自覚は失わず、噛み付かんという勢いだった。
後継争いの芽を恐れて行った調教が、逆に弟の殺意に火をつけることとなっていた。
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