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とあるインテリヤクザと不良牧師の交錯
第4話 とある教祖の場合 35
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そこには、未来が立っていた。
「み……らい。」
「すみません、本当に。俺のことなんて、見たくもない、よね。なのに、こんなところにのこのこ来て。すみません、帰ります。」
未来は一方的に喋ってそのまま扉から出ようとした。そんな未来を辰巳は呼び止めた。
「未来!なぜ、ここがわかった?」
「貴方と、七瀬さん?が教団から出て行った後、もう一人いたでしょう。あの人が、ここの住所を教えてくれて。」
「そうだったのか。」
未来は今にも走り出して逃げてしまいそうだった。どうにかして引きとめないと、辰巳の頭の中はそれだけだった。今、未来が去ってしまえばもう二度と会えない、未来はもう二度と救われない。そんな気がした。
「未来。」
辰巳は未来の腕を掴んだ。
「来てくれてよかった。少し、座ってコーヒーでも飲んでいかないか。」
「……はい。でも、あの。」
「どうした。」
「砂糖と、ミルク……ありますか?」
子供らしい一面に思わず微笑みそうになる。
「ある、紅茶でもいい。なんでもいいから、少し話をしよう。」
「……うん。」
未来は教会の椅子に腰掛けた。辰巳は二人分のコーヒーを持ってその横に座る。
「昨日はどうしたんだ。」
「教団にいたくなくて、ネットカフェに泊まりました。」
「そうだったのか。」
「あの、本当にすみませんでした。」
「それはもういい。あの空間がおかしかったんだろ、お前は悪くない。」
「俺は父親のことは、信じてないと貴方に言った。俺もそうだと思ってた。でも、きっと心のどこかで信じたいと思っていたんだと思う。」
「……。」
「だから俺はまともじゃない。」
「内容云々の前に、親と子って関係はどうにも歪ませるんだよ。信じたいなら信じればいい。」
「み……らい。」
「すみません、本当に。俺のことなんて、見たくもない、よね。なのに、こんなところにのこのこ来て。すみません、帰ります。」
未来は一方的に喋ってそのまま扉から出ようとした。そんな未来を辰巳は呼び止めた。
「未来!なぜ、ここがわかった?」
「貴方と、七瀬さん?が教団から出て行った後、もう一人いたでしょう。あの人が、ここの住所を教えてくれて。」
「そうだったのか。」
未来は今にも走り出して逃げてしまいそうだった。どうにかして引きとめないと、辰巳の頭の中はそれだけだった。今、未来が去ってしまえばもう二度と会えない、未来はもう二度と救われない。そんな気がした。
「未来。」
辰巳は未来の腕を掴んだ。
「来てくれてよかった。少し、座ってコーヒーでも飲んでいかないか。」
「……はい。でも、あの。」
「どうした。」
「砂糖と、ミルク……ありますか?」
子供らしい一面に思わず微笑みそうになる。
「ある、紅茶でもいい。なんでもいいから、少し話をしよう。」
「……うん。」
未来は教会の椅子に腰掛けた。辰巳は二人分のコーヒーを持ってその横に座る。
「昨日はどうしたんだ。」
「教団にいたくなくて、ネットカフェに泊まりました。」
「そうだったのか。」
「あの、本当にすみませんでした。」
「それはもういい。あの空間がおかしかったんだろ、お前は悪くない。」
「俺は父親のことは、信じてないと貴方に言った。俺もそうだと思ってた。でも、きっと心のどこかで信じたいと思っていたんだと思う。」
「……。」
「だから俺はまともじゃない。」
「内容云々の前に、親と子って関係はどうにも歪ませるんだよ。信じたいなら信じればいい。」
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