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とあるインテリヤクザと不良牧師の交錯
第4話 とある教祖の場合 2
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「少し休憩しませんか、もう3時間ぶっ通しですよ。」
そう言って辰巳は聖書をコトンと置いた。
「そうですか。この年になると時間が惜しくてね。」
蛍光ペンの線やメモでいっぱいとなってボロボロになった聖書を鞄にしまった。辰巳は2つのマグカップにコーヒーを淹れ、ひとつを教祖の前に差し出した。
「ありがとうございます。牧師さん。」
清羊は人の良さそうな笑みを浮かべてコーヒーを受けとる。辰巳は少し離れた席に座ってコーヒーを啜った。
「ところで、おいくつなんですか牧師さんは。」
「あぁ、25です。」
「すいぶんと若くして牧師になられたんですね。」
「まぁ、色々ありまして。」
ピンポーン。インターホンが鳴った。普段から教会を訪れる人間はここが日中開放されていることは知っているはずだ。ということは急な来客だ。宅急便かなにかだろう。
「ちょっとすみません。」
「どうぞお構い無く。」
辰巳が玄関を出ると持ち物ひとつ持っていない女が一人うつむいて立っていた。
「どうかしましたか?」
「あの、近くにコンビニありませんか?」
「え、ああ、そこの信号曲がって少し行けばありますよ。」
「ありがとうございます。」
それだけ言うと女は歩いて行った。
「何だったんだ。」
若干の違和感を覚えながらも辰巳が室内に戻ると、清羊がにこにことこちらを見ていた。
「どなたでしたか?」
「ああ、なんか道を聞かれました。」
返事をしながら辰巳は席につき少し冷めたコーヒーを啜る。
「それでは続きをお願いします。」
「ああ、はい。」
清羊は聖書を鞄から取り出した。
頭がふらふらする。
ここの思想はどこから…た…
教祖の声が遠くに聞こえる。
ぼ…さん…大丈……か?
力が、はいら、な
辰巳は椅子から転げ落ちて倒れた。薄れゆく意識の中でこちらを見下げる清羊の姿をとらえた。
「牧師さん、ゆっくり、お休みなさい。」
張り付いた笑顔を浮かべて、辰巳が飲んでいたコーヒーの残りを辰巳の顔にひっくり返した。
数人の見知らぬ人間が入り口から入ってきて教祖の後ろに立った。その中に先ほど道を訪ねてきた女がいるのに気づいて、そのまま辰巳は意識を失った。
そう言って辰巳は聖書をコトンと置いた。
「そうですか。この年になると時間が惜しくてね。」
蛍光ペンの線やメモでいっぱいとなってボロボロになった聖書を鞄にしまった。辰巳は2つのマグカップにコーヒーを淹れ、ひとつを教祖の前に差し出した。
「ありがとうございます。牧師さん。」
清羊は人の良さそうな笑みを浮かべてコーヒーを受けとる。辰巳は少し離れた席に座ってコーヒーを啜った。
「ところで、おいくつなんですか牧師さんは。」
「あぁ、25です。」
「すいぶんと若くして牧師になられたんですね。」
「まぁ、色々ありまして。」
ピンポーン。インターホンが鳴った。普段から教会を訪れる人間はここが日中開放されていることは知っているはずだ。ということは急な来客だ。宅急便かなにかだろう。
「ちょっとすみません。」
「どうぞお構い無く。」
辰巳が玄関を出ると持ち物ひとつ持っていない女が一人うつむいて立っていた。
「どうかしましたか?」
「あの、近くにコンビニありませんか?」
「え、ああ、そこの信号曲がって少し行けばありますよ。」
「ありがとうございます。」
それだけ言うと女は歩いて行った。
「何だったんだ。」
若干の違和感を覚えながらも辰巳が室内に戻ると、清羊がにこにことこちらを見ていた。
「どなたでしたか?」
「ああ、なんか道を聞かれました。」
返事をしながら辰巳は席につき少し冷めたコーヒーを啜る。
「それでは続きをお願いします。」
「ああ、はい。」
清羊は聖書を鞄から取り出した。
頭がふらふらする。
ここの思想はどこから…た…
教祖の声が遠くに聞こえる。
ぼ…さん…大丈……か?
力が、はいら、な
辰巳は椅子から転げ落ちて倒れた。薄れゆく意識の中でこちらを見下げる清羊の姿をとらえた。
「牧師さん、ゆっくり、お休みなさい。」
張り付いた笑顔を浮かべて、辰巳が飲んでいたコーヒーの残りを辰巳の顔にひっくり返した。
数人の見知らぬ人間が入り口から入ってきて教祖の後ろに立った。その中に先ほど道を訪ねてきた女がいるのに気づいて、そのまま辰巳は意識を失った。
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