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とあるインテリヤクザと不良牧師の交錯
第4話 とある教祖の場合 1
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ここ数日、教会には平穏が訪れている。子供たちの前でハチャメチャしやがった保育士を出禁にし、しょっちゅう殴り込みに来た暴走族たちもトップの狂乱により最近はおとなしくなっている。まさに平穏。
そんな夕暮れ、とある男が教会を訪れる。
カランカランと扉が開いた音がする。辰巳は訪れた客に目を向けた。
「こんばんは、貴方がここの教会の牧師様ですか?」
お寺の和尚が着るような袈裟を身にまとった初老の男。顔には張り付いた仮面のような微笑みを浮かべている。仏教か?だとしたらなぜ教会に、等という疑問が辰巳の頭をよぎる。
「…そうですが。」
辰巳が呟くとその男は満足そうな顔で椅子に座った。
「あの…和尚が教会になんの用っすか?」
「はは、私は和尚様ではありませんよ。私はこういう者です。」
そう言って男は袈裟の懐から名刺を取り出して、辰巳に差し出した。
「きゅうこん…あ、あい、が?」
「ええ、救魂愛我教団です。魂を救い、我すなわち自らを愛せよ。」
胡散臭い、間違いなく胡散臭い教団名だ。辰巳は思わず口から出そうになる言葉を飲み込む。
「私はその教祖なのです。」
胡散臭さは深まるばかりであったがそんなことはどうでもよかった。問題はなぜここを訪れたのか。
「その教祖様が何しに来たんすか。」
「人々を導く立場として、他の教えというものが理解はできなくとも、知っているべきかと思いましてね。」
「それはつまり、」
「貴方に教えを乞いたいのです。」
教祖の名は清羊(セイヨウ)というらしい。神だか仏だかよくわからん者から授かった名前らしいがよくわからない。
そうして教祖は週三回も教会を訪れるようになった。熱心に聖書を読み、教えを乞い、質問を投げ掛けた。
「なるほど…この考え方はなかなか興味深いですね…。」
最初は怪しいと思ったがあまりに頻繁に、熱心に通いつめるから辰巳もだんだんと慣れはじめてしまった。
この男はこういう人間なんだと。
そんな夕暮れ、とある男が教会を訪れる。
カランカランと扉が開いた音がする。辰巳は訪れた客に目を向けた。
「こんばんは、貴方がここの教会の牧師様ですか?」
お寺の和尚が着るような袈裟を身にまとった初老の男。顔には張り付いた仮面のような微笑みを浮かべている。仏教か?だとしたらなぜ教会に、等という疑問が辰巳の頭をよぎる。
「…そうですが。」
辰巳が呟くとその男は満足そうな顔で椅子に座った。
「あの…和尚が教会になんの用っすか?」
「はは、私は和尚様ではありませんよ。私はこういう者です。」
そう言って男は袈裟の懐から名刺を取り出して、辰巳に差し出した。
「きゅうこん…あ、あい、が?」
「ええ、救魂愛我教団です。魂を救い、我すなわち自らを愛せよ。」
胡散臭い、間違いなく胡散臭い教団名だ。辰巳は思わず口から出そうになる言葉を飲み込む。
「私はその教祖なのです。」
胡散臭さは深まるばかりであったがそんなことはどうでもよかった。問題はなぜここを訪れたのか。
「その教祖様が何しに来たんすか。」
「人々を導く立場として、他の教えというものが理解はできなくとも、知っているべきかと思いましてね。」
「それはつまり、」
「貴方に教えを乞いたいのです。」
教祖の名は清羊(セイヨウ)というらしい。神だか仏だかよくわからん者から授かった名前らしいがよくわからない。
そうして教祖は週三回も教会を訪れるようになった。熱心に聖書を読み、教えを乞い、質問を投げ掛けた。
「なるほど…この考え方はなかなか興味深いですね…。」
最初は怪しいと思ったがあまりに頻繁に、熱心に通いつめるから辰巳もだんだんと慣れはじめてしまった。
この男はこういう人間なんだと。
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