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とある不良牧師の受難

第2話 とある暴走族の場合 2

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「俺の右腕としてずっとやって来たじゃねぇか。あの事は悪かったと反省してる。」

「そんなことは問題じゃないんですよ。俺はもうここで生きると決めましたから。」

「……なんで教会なんだ。お前らしくもない。」

「俺らしくないかも知れないが、これだけは変わらねえ。無駄なので、帰ってください。」

戌月は少し悲しげな顔をして、考え込む。

「そうか、じゃあしょうがないな。」

「…………はい。」

「強行手段をとるしかないということか。」

「…………はい?」

「お前ら、やれ。」

「うっす!」

辰巳の蹴りから回復したと見られる複数名の族員全員がポケットからナイフを取り出す。

「……野郎。」

半ギレしながら、かろうじて裁いていく。5人ほどからナイフを奪ったところで、はあはあと息を荒げる。

油断した。

目の前の残りの5人に意識を向けすぎて、背後に気が回らなかった。首もとに痛みが走る。何だか分からなかったが手足の先が痺れてきて立っていられなくなったところで、気がついた。

「…………薬かよ。」

這いつくばりながら後ろに目を向けると注射器を持った戌月。

「俺の命令が聞けねぇってことは覚悟できてんだろうな。あ゛?」

戌月を怒らせると手がつけられなくなることを思い出した辰巳は気が遠くなるような思いがした。


辰巳の母、由美は元ヤクザの愛人だ。その後は一般人の男と結婚し、そこに生まれたのが一人息子辰巳。その事を知らずにすくすくと育ってきた。しかし、中学三年生のある日。親の会話を聞いてしまった。

「そういえば由美、この前ヤクザの事務所の前で竜崎さん見たぞ。」

「あら、竜崎さんって息子のこと?」

「そうそう、やっぱ男は母親に似るっていうからな。竜崎さんとあいつも心なしか似てるな。」

「まあ、どっちも私の倅だからねー。」

「そりゃそうだな。」

わはははははは

えげつない会話に二人揃って爆笑している親たちが信じられなかった。後から事情を問いつめ、母親の秘密を知った。さらには父親もその事実を知っていながら結婚して、子供まで作った。

半ば人間不信になりながら、辰巳は無事高校に進学し、ものの見事にぐれた。
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