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知性vs知性 -三男と鳥類の場合-

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 ミツアキはなおも続ける。

「低脳な動物に人類文化学を教えてやろう。その昔人間は、鳥を漁業や狩猟に使ったり、鑑賞物にしていたりしたんだ。お前たちは人間にとってそれだけの

 口が止まらないミツアキが言葉を言い終える前に、ホークは翼をバサリと動かして、それ以上の言葉を制止した。
 そのビリビリと空気が震えるような覇気に、一瞬黙ったミツアキだったが、糸が切れたように笑い出した。

「…ふっ、は、はは、怒ったか?鳥類の皇子ともあろう者がそう簡単に取り乱されるとは」 
「自分が怒っているのは、鳥類を馬鹿にされたからではない。貴様が変わってしまったからだ」
「……なんだと?」

 ホークは、振り上げた翼で器用に鳥籠の扉を開いて、中に入ってくる。
 カチャン、と鳥籠の鍵をかけた。
 悲しげな表情で、ホークは俯いた。

「自分は、この計画には最後まで反対だった」

 いくら差別思想の塊である人類王族だとしても、その権利を侵すような真似はしたくなかった。
 それに、鳥類は『一夫一妻』なのだ。
 1人のつがいを決めたら、一生添い遂げる。
 そんな大事な相手を、政略などで決めたくはなかった。
 しかし、鳥類王であるホークの父親が『人類王子誘拐計画』に賛同してしまったのだ。
 そして、大事な長男ではなく、影響の少ない中間子の三男である自分に当てがった。
 優秀な王族を増やすため、そして万が一兄達に何かがあったり、兄達の子が王にふさわしくなかった時の保険として。

「父の意向だから自分は貴様と番う。それに、鳥類の繁栄のためならばと、自分を納得させていた。しかし、気が変わった。貴様の本性を暴き、その腐った精神を改めさせてやる」

 そう言うとホークはひと鳴きした。
 ミツアキにはわからなかったが、部屋の外でざわざわと動く音が聞こえたため、鳥類のコミュニケーションなのかもしれない。
 ホークはその翼で、ミツアキの衣服を纏わぬ足をぐいっと開かせた。

「我ら鳥類は総排泄口で交尾を行う。しかし人類と交尾を行うためには、肛門に無精卵を植え付けたのち、何らかの器官を挿入し精子を送らねばならない」

 淡々と説明するホークを、ミツアキは眼鏡越しの鋭い瞳で睨み続けていた。
 交尾…精子…性的な単語を耳にし、不快感を抱く。
 しかし、それをさらに上回る、衝撃的な単語が飛び出した。

「そこで、擬似ペニスをあつらえさせた」

 鳥の従者が静かに、何かを乗せたトレイを持ってきた。
 かけられた布をファサリと外すと、そこにあったのはエネマグラだった。
 薄桃色のシリコン製のその道具は、人類国では性具としても知られている。
 滑らかな曲線にゴツゴツとした凹凸、体の外の会陰や玉袋までも刺激する突起。
 見ただけで、淫猥な気持ちになりそうなそれを「擬似ペニス」などと呼ばれ、あまりに衝撃的な光景にミツアキは心臓がドク、ドク、と高鳴っていた。

「なんで…こんな形をして…」
「受精を成功させるため、貴様はメスの自覚を持ち屈服せねばならない。最も手っ取り早い方法が、射精を伴わない絶頂、メスイキを繰り返すことだ」
「メス…イキ……」
「そこで、この擬似ペニスはエネマグラを模している。人類の雄の前立腺を刺激し、メスイキに至らせる器具だと聞く」

 そんな2人を尻目に、従者は静かに部屋から立ち去る。
 また部屋に2人きりになり、事も無げに淡々と説明するホーク。

「自分たちの交尾は性器を挿入することもなければ、扱く必要もない。だから、エネマグラを咥えた貴様が、肛門括約筋に力を入れ、自らメスの快感を覚えることによって、受精に至るのだ」

 ホークにそのつもりはないが、口から出る単語全てが、言葉責めとなりミツアキの羞恥と屈辱を刺激した。
 ホークの瞳は依然として冷たいままだった。

「自分はただ、このエネマグラをミツアキの体内に挿入し、動くこともなく、擬似ペニスから精液を送り込み続けるだけ。あとは孕むも孕まないも、貴様次第ということだ」

 その言葉は、死刑宣告のような絶望を帯びて、これから起きる屈辱的な行為を想像させた。
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