チキンピラフ

片山春樹

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運命の歯車が回り始めた

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「ねぇ美樹、明日なにしている?」
と、あゆみからの電話がなったのは、夢が鮮明な映像になり始めた夜中の11時頃。眠気眼でプルプルと光る携帯電話を探し出し、ぶすぅっとほっぺを膨らませてから、「もぉぉなぁによぉ」と、かわいくない返事をした。目をごしごしこすってごろごろして、別にこれといった思いつく用事がないからだとも思うけど、言葉に詰まる理由。いつも未来形で会話するあゆみ。明日のことなんて・・わかるわけない・・なのに、この電話もいつも通り未来形。明日なにしてる? だなんて言われても、明日してることなんて、私に予知能力なんてあるわけないのに。頭の中はほとんど眠っているのに。だから言葉に詰まってしまうのに。
「機嫌・・悪いの? 美樹。どうしたのよ?」
って・・。こんな時間に、こんなタイミングで・・と言い返したいけど、私は文句なんて言えないから、もっと言葉に詰まってしまう。だから・・。
「なにかよう?」
と、ふてくされたまま返事すると。
「うん・・もう春でしょ。それに、17才。明日さ、春の新作発表会だって、だから見にいこうよ。弥生もくるの。行くでしょ」
まだ、3月になったばかりなのに、もう春でしょ、だなんて。それに、私は5月にならなきゃ17才にはならないのに。行くでしょ! なんて言われたら、うん、と返事するしかないし。返事したらしたで。
「じゃ、10時、アスパのマック。ごめんね寝てたんでしょ・・じゃ、おやすみー」
その一言で電話が切れるし。枕元に携帯電話を投げ捨てて、枕を抱きしめると、だんだん目が醒めてくる。ったく・・もぉぉ。あゆみのバカ。そんな電話なんて朝にかけてくれればよかったのに。でも・・春の新作かぁ・・と思う。天井の明かりをつけて、ごそごそ・・。たしか・・まだよく見てない通販のカタログが・・・ベットの下に・・あった・・。春かぁ、なんて思いながらぱらぱらとページをめくってみる。でも・・そんなことより・・モデルさんはどうしてこんなに綺麗なんだろ・・こんなに綺麗だからモデルになれるんだろうなぁ・・なんてことを考え始めると・・はぁぁ・・と、ため息がでてしまう。私にはこんなの似合わないだろうな・・、と思うのだけど、一枚ずつページをめくると・・ため息つくたびにやみつきになって・・綺麗なモデルさんの胸の谷間・・くびれた腰・・どうしたらこんな体を作れるのだろ・・なんてことを考え始めると、洋服なんてどうでもいい気分になってしまうし・・でも、次の一枚をめくって・・そのページに釘付けになってしまった・・。このモデルさん・・。手鏡・・。見比べてしまった・・。私? なわけないだろうけど・・。よく似てる、短めの髪・・。薄い唇・・ぱちくりな瞳・・かわいい笑顔。本当によく似てる・・。それに、この洋服をひらひらと吊り下げてる肩のひも・・すらっとしてる細い首筋、かわいい撫で肩。短めの裾からちらっと見えるおへそ・・ひらひらしてるスカート・・振り向く笑顔。むちゃくちゃかわいい・・。胸もそんなに・・・。体格も私と似てるんじゃない? 私もこんなの着れば、こんなにかわいくなれるのだろうか? 見つめて、ごろごろしながらもっと見つめて・・。ため息・・値段は・・書いてないし・・素材はシルク・・か。きっと高いだろうな・・諦めて・・ページをめくってゆくと・・家具のページ。日曜品のページ。そして・・うりうりとポーズをとっているパンツ一丁の男の人・・まるでボディービルのカタログみたい。ぷぷっと笑って・・でも、ページを戻して・・さっきの私みたいなモデルさん・・どこだったっけ・・あった・・じぃぃぃっと見つめたまま、ごろごろ、ごろごろ。ためいき。かわいいなぁ・・ぶつぶつ・・いくらくらいなんだろ・・欲しいなぁ・・。ぶつぶつ。そしてまた、無意識にページをめくって。戻してまためくって。いつのまにか、しらないうちに夜が更けていた。

 いつのまにか、私は、その洋服を着て草原を歩いている。暖かい風に髪をすいてもらっていたその時。
「美樹」
と、私を呼ぶ声・・。
「・・えっ?」
と、振り向くと、私は、ものすごくさわやかな男の人に抱きしめられて・・。
「かわいい・・・」
そうつぶやいて、しげしげ私を見つめている男の人・・。誰なんだろ? 抱きしめられたまま、そぉっと顔を見上げてしまう。本当に誰なんだろ? くすっと笑う彼・・。彼? 本当に全然知らない人なのに・・。
「いただきまぁす」
・・えっ?・・キスをせがむ、その男の人の全身を見つめて、・・パンツ一丁・・じょりじょりしてそうなすね毛。パンツの膨らみ・・ひぃぃ・・と叫び声・・なんて出せない私は・・ぎゃっ・・と、目を醒ました。おろおろと回りを見渡すと、男の人は、雑誌の中に戻っていた・・はっきり覚えているさわやかな笑顔。手まで振ってる夢で見たのと同じ姿・・はぁはぁと乱れてる呼吸・・信じられない夢を見てしまった・・びっくりした。でも・・とりあえず・・よかった・・夢だったんだ・・。カタログをまた、まじまじと見つめて・・ほっ・・と、つぶやいて。まさか・・と、前のページに戻してみた・・やっぱり、これは夢じゃなかった。このモデルさん、本当に私に似ている。今日、もし、こんな洋服が見つかったら、買ってみよう。

自転車でアスパ・・近所のデパートの専門店街・・に向かうと、「もう春だよ・・」と、言っていたあゆみがいつも通りの衣装なのだけど、なにか足りないような雰囲気で、むすぅっとしていた。携帯電話は、まだ10時2分・・だから、そんなに遅れたわけじゃないのに・・。
「ったくもう・・」
弥生までがそんなことをぼやいてる。とりあえずあやまろうかな・・と、思ったら。
「ったく・・もう春だって言ったでしょ・・なにぃその格好ぉ」
と、ぶつぶつふてくされているあゆみ。だから、ガラスに映る私を見つめて・・。二人がぼやく原因を見つけた。まだマフラーは手放せない、ごわごわのセーターも、ぶかぶかのソックスも・・分厚い生地のスカートも。
「ったく・・全然かわいくないじゃない」
確かに着膨れしてる私は、あゆみや弥生と比べて、全然かわいいとは言えないだろうけど・・まだ3月も始まったばかりなのに・・こんなに寒い朝なのに・・この二人はどうしてこんなに眩しいくらいの春なのだろうか。
「そんなじゃ、男の子も声かけにくくなるじゃない」
と、あゆみがぼやいた。別に私は声をかけられたいとは思っていないのに。弥生まで。
「美樹も知ってるでしょ、かわいい子とぶさいくな子が一緒だと、男の子って絶対声かけないんだよ」って。
ぶさいくな子? ってなによ・・私の事? 恐い目付きで私を睨む二人。だから、はいはいそうですか、な気分だ。
「じゃぁ、少し離れて歩いてあげるわよ」そう思うけど、言葉にできない私は、二人に負けない顔で少しすねてみた。すると。
「もぉ・・」と、まだぼやいてる二人。でも、親友という意識はそんなにしたことがないけど、この二人はいつも私を誘ってくれる。それといった幼なじみな友達もこの二人くらいなのかな・・私には。そんなことを考えてしまうと。本当に離れて歩いてゆく二人に。寂しい気持ちが・・だから。
「もぉぉ、待ってよ」
とも言ってしまう・・。追いついたら、あゆみが振り向きながら。
「ったく、もうすぐ17才なんだよ。美樹もそれなりの意識したら」
と、まだ恐い顔してる。17才にどんな意味があるのか、私にはわからない。なにか重要な意味があるのだろうか・・。そう思った瞬間。
「そんなじゃいつまでたっても彼氏できないんだから」
と、弥生がつぶやいた一言。どことなく意味がわかった気がした、私もそんな年頃なのかな、そう考えて・・うつむいてしまう・・。彼氏・・か。もう一度自分に尋ねてみる。でも、そのうちなんとかなるだろう・・くらいの答しか出なかった。

  少し離れたところから、二人を見つめてみる。楽しそうに洋服をあれこれ試している二人。そして、私が感じている・・置いてきぼりになってるような実感。これが、劣等感・・というものなのかな。
「やっぱり・・肩とかでてる方がかわいくない?」
「でも・・それは出しすぎだよ」
「ちらっと見えるか見えないかがいいのよ・・あぁ~これこれ、ちょっと試着してみる・・美樹、ちょっともってて」
にこっと私に笑顔を見せて、試着室に飛び込み、しゃっとカーテンを閉める弥生。笑顔の残像が、私をますますおいてきぼりにするかのような錯覚。渡されたかばんをもったまま、うつむいてしまった。
「どぉしたのよ美樹?」
と、あゆみがうつむいた私をのぞき込む。ううん・・と首を振ると。
「美樹もおしゃれすればいいのに」
と、手にしてる洋服を私に当てて・・。
「美樹も本当はかわいいはずだよ、これ・・美樹には似合うんじゃないかなぁ~」
うつむいたままあゆみが私にあてがった洋服を見つめてみた・・これ・・昨日のカタログのあれ・・少し違う気がするけど・・よく似ている・・。
「弥生・・開けていい?・・美樹が試着したいって」
「うん・・もう少し」
えっ・・? 私・・試着なんて・・。こんなところで・・したことがないような。と思っていると。
「どぉ?」
と、出てきた弥生・・見つめるとまるで・・お風呂上がりみたい・・バスタオルを巻き付けただけのような錯覚を感じさせるその衣装。それに、弥生って、ウエスト・・くびれてるなぁ・・。胸も・・。
「ちょっとねぇ・・」
と、つぶやくあゆみ・・それは、私も思ったこと。でも、感想は言葉にできそうにない。ただ、なんて言ったらいいかわからないから。視線を背けるように試着室に目をむけると・・カーテン一枚で仕切られた狭い・・鏡張りの・・こんなところで着替えるの? こんな狭いところで?
「美樹はどう思う・・かわいいでしょ?」
「・・えっ?・・」
「ほら・・美樹も変身しなさいよ・・」
「・・えっ?・・」
「美樹・・どう思う・・これをベースに重ね着するんだよ」
私は同時に二人の声を識別できない。どう・・思う? って言われたことだけを理解して、弥生をよぉく見つめると・・思い出すのは、深夜放送の背景にたくさんいる女の人、それに、よぉく見つめると・・その胸の谷間・・その脚のつけね・・。見えそうで・・見えない・・。
「ほらぁ・・誰ものぞいたりしないから、着てみなさいよ」
と、あゆみに押し込まれる試着室。おろおろしてる間に、しゃっと閉められるカーテン・・あゆみの笑顔がものすごく不安な残像。それに・・振り向くと・・壁一面の鏡・・そういえば・・私・・こんなところに入るのは生まれて初めてなんじゃないだろうか?  それに・・さっきの弥生・・。脚がつけねまで出てた気がするし、胸も・・谷間があったような・・。でも・・着替えないわけにはいかないし・・。だから・・とりあえず・・。
「美樹ぃ~・・もういいかい」
「待って・・」
「待てないよぉ」
「待ってよ」
ったく、まだ・・脱いだばかりなのに・・下着姿なのに・・のぞいたりしないよね・・それに・・カーテン開けたりしないよね。誰も見てないよね。だから・・何度も振り返って・・でも・・鏡に映る私を見つめると・・。さっきの弥生・・胸・・大きかったなぁ・・よせて・・あげて・・比べてしまう・・それに・・脚・・。
「美樹・・なにやってんのよぉ・・あけちゃうよ」
「絶対だめ!」
くらべっこしてる場合じゃない・・ごそごそと、とりあえず着替えてみた。鏡を見つめて、でも・・全体像がよく見えない・・どことなくかわいいような気がする。離れたところから見つめてみたくなった。そぉっとカーテンを開けると・・。
「・・・・」
と、目を見開いて、ぽかんと口を開けた二人・・。
「美樹・・むちゃくちゃかわいい・・それ・・」
靴を履いて・・少し離れてから、振り返って、鏡を見つめてみた・・。本当に、昨日の雑誌のモデルさんみたい、真っ白いツーピース。肩のひも・・おなかのあたりがスースーしてる感触・・短めの裾からちらっと見えそうなおへそ、私なりにくびれたウエスト、ひらひらのスカート・・むちゃくちゃかわいい・・。私ってこんなにかわいい女の子だったんだ・・。
「お人形さんみたい・・」
「ホント・・美樹って子供っぽいからかなぁ・・すっごくかわいいよ本当に・・」
うれしいような、うれしくないような、なんだかわからない複雑な気持ちがしてしまった。けど、とにかくあの洋服気に入ってしまったのは事実だ。でも・・。
「あれ? 美樹・・さっきの服・・買わないの?」と、弥生が言う。
「・・うん・・」とうなずいた私。
まさか・・あの服の値札に万単位の値段が付いてるとは想像もできなかった・・。いつも・・3千円くらいのお母さんに選んでもらう洋服しか買ったことがないから・・試着室でちらっと相談した夏目漱石さん・・とりあえず・・達。多めに持ってきたつもりだけど・・。
「諭吉さん達に相談してくれないかな・・」
なんて言われたこと、言うのはなんだか恥ずかしい・・それに・・どうして・・この二人は・・こんなにたくさんの洋服をレジに運ぶわけ?
「あれ? 美樹・・なにも買わないの?」
「・・うん・・」
「さっきのかわいいヤツ、買えばいいのに」
「ねぇ」
だから・・また・・うつむいてしまう。ピッ・・ピッとレジを打つお姉さん・・そぉっとレジの表示を見つめると。
「お客様・・3万8千円になります・・」
ぎょっとしてしまった。私がお金を払うわけじゃないけど。3万8千円? だなんて・・・。
「弥生・・大丈夫なの、そんなに」
と、あゆみが代弁してくれたけど。弥生の顔はいつもと同じだし・・。
「大丈夫・・春休みにバイト代稼げるから」
「バイト代?」
と、聞いてしまった私・・。
「うん・・美樹はしてないの?」
してるわけない・・ちらっとあゆみを見つめてしまうと。あゆみは。
「あたしも、また、しようかなぁ・・」
と、つぶやいてる・・。また?・・。
「今度、紹介してよ」
「うん、いいわよ」
「出逢いとか・・やっぱり期待してる?」
「あまり・・期待してない」
「ふううん」
ぺちゃくちゃおしゃべりしてる二人についてゆく・・バイトの相談してるのだろうか・・どことなくおいてきぼりにされてる気分がまたしてる。うつむいたまま二人と別れて・・自転車での帰り道。アルバイトかぁ、してみようかなぁ・・と、思った本屋さんの前・・求人誌・・かぁ・・。とりあえず・・無料だし。家に帰ってから見てみよう・・。それからの帰り道・・。通りかかったファミリーレストラン、窓の張り紙・・アルバイト募集・・かぁ・・。覗いてしまった店の中・・あの、お料理を運んでる女の子・・年は、私とたいして変わらないんじゃないだろうか・・。手を振ってるおじさん・・店長かなぁ・・。にこにこしてる優しそうな人・・。つい・・つられて手を振ると・・。
「ぎょっ・・」
みんな見てる・・恥ずかしくなってしまった。あわててこいだ自転車・・。でも・・ぶつぶつ考えてしまう・・。あの洋服・・欲しい。でも・・2万円もする・・。アルバイト・・。するのは恐いような不安な気持ち。でも・・みんな・・してるんだなぁ・・。ぱらぱらとめくる求人誌・・。見つけたのは、私の住所と同じ町名の広告・・これってあのレストランだ・・。

でも・・。学校で・・。
「そこって仕事きついよ」
と、言ったのは、弥生だ・・。それに。
「時給も少ないし、だいたい、そんなのに書いてるとこって人気がないから募集にお金使うの。そんなことにお金使うから時給も少なくなるのよ。美樹も、バイトするんだったら、誰かに聞いた方がいいよ」
と、もっともだと思ってしまうアドバイスをしてくれたけど。
「でも・・私がしてるとこ・・あゆみもって、一応頼んだんだけど・・駄目って言われて・・友達と一緒にいくのって敬遠されるみたい。なぁなぁで仕事されるのを嫌ってるのかなぁ。それに、最近、求人少ないみたいだし」
そんなものなのかなぁ・・と、思う。
「弥生はどこでバイトしてるわけ」
と、一瞬思ったことをつぶやいてくれた、回りをとりかこむ友達の一人。
「うん、ヒロシマっていうお好み焼き屋さん」
「あぁ~知ってる知ってる。今度行ってもいい?」
「駄目よぉ・・恥ずかしいし・・」
「いいじゃん・・みんなで」
「絶対だめ・・」
話題はいつのまにか次へと進んでしまったようだ。こうなると、もう、口をはさむことは私にはできない。ぺちゃくちゃと話しているみんなをきょろきょろ見つめて。耳をそばだてる。
「でも・・みんなしてんだよねぇ」
「だって・・お小遣い全然たりないでしょ・・」
「やっぱ、サイテーでも、月に5万は絶対いるよねぇ」
「電話代だけでも2万はいくでしょ・・」
「それに、なにか食べて、服買ったら・・サイテー5万・・絶対いるよ、バイトしなきゃ無理だよ」
「バイト禁止なんて校則・・馬鹿みたい・・」
そうなんだ・・と思う。みんなしてるんだ・・・。

  だから・・。
「ねぇ・・お母さん」
「なぁに?」
とりあえず、やっぱり相談した方がいいと思ったから。
「あたし・・アルバイトしてもいい?」
夕飯を作っているお母さんの背中におそるそる打ち明けてみた・・振り向きながら一瞬光ったお母さんの目付きにぎこちない躊躇・・また・・それ以上なにも言えなくなってしまった・・。そして、駄目って言うかと思ったけど。
「どうして?」
と、聞き返した瞬間の目付きはどことなく微笑みはじめたみたい・・。
「うん・・欲しい洋服があるから・・。その洋服買えるまで・・2万円たまるまで・・」
正直な気持ちをつぶやいてみた。それに・・お小遣い少ないし・・と、一瞬思ったこと・・。
「美樹もお小遣い・・少なくなる年頃なんだね」
テレパシーが通じたのかと思った。それに・・。
「はいはい・・・」
と、あっけなくOKしてくれたお母さん。その後、夕飯をつつきながら、お父さんを説得してくれた。
「そんな年頃なのよ・・」
と。そして、お父さんも・・OKしてくれたみたい。
「ウエイトレスでもするのか? 夜遅くなるのは駄目だぞ。チャランポランな彼氏をつくったりしたり、成績悪くなったりしたら辞めさせるからな」
恐い顔だったけど、それは、してもいいよ。と言う意味だと思う。そぉっとお母さんを見つめると、くすくすと笑顔を傾けていた。
「でも・・するんだったら、がんばるんだぞ。すぐに辞めたり、人に迷惑かけたりしちゃ駄目だぞ」
と、恐い顔のままのお父さん。
「うん・・」
と、返事して。笑ってるお母さん・・感謝な気持ちだった・・。

そして、弥生は反対したけど・・あゆみも反対したけど・・。やっぱり、家から近いし、かすかに覚えているあの店長さんらしい人も優しそうだったし。とりあえず、あの洋服が買えるまでだし・・。自転車で出かけて、そぉっと覗いた店の中、きれいなお姉さんがお料理を運んでいた。とても、すてきな笑顔でお客さんと話ししている。あこがれな気分を感じてる・・そのとき。
「なにかようかな?」
と背中から聞こえた声。はっと振り向くと、駐車場を掃除していたこないだのおじさん・・。箒と塵取りを持ってる。店長と書かれてる名札・・。名前までは識別できなかった。
「あの・・アルバイト・・したいんですけど・・」
勇気を振り絞ってそうつぶやくと、店長は箒とちりとりを持ったまま、じぃぃっと私を見つめて。だから、もじもじしていると、
「まぁ、中にどうぞ」
と、中に案内されてしまった。求人誌には履歴書の書き方とか・・面接の受け答えみたいな事が書かれていたけど・・。とりあえず・・。なにも用意しなかった。というより・・できなかった・・。求人誌を何度見つめても、履歴書なんて何をどう書いていいかわからなかったし、面接も、何をどう答えていいかも思いつかなかったから。電話もかけようかと思ったけど・・全然勇気がわかなかった・・。でも・・。なんだ・・ちゃんと用意してくれてるんだ。
「名前と、住所と電話番号書いてくれるかな」
渡された書類に言われるままに書いてると。
「美樹ちゃん16才・・5月生まれなら・・もうすぐ17才・・か。こないだ、店を覗いてた娘だよね」
言われて・・どきっとしてしまった。覚えられたんだ・・しかたなく、うん・・とうなずいて。
「じゃ・・心の準備ができたら、来てくれる? いつできるかな心の準備」
私が書いた書類を眺めながら、にこにこしている店長・・この笑顔は地顔だろうか? 笑ったまま全然変化しない。そして、面接は想像できないほどあっけなかった。
「ここの仕事は、きつい、時給は少ない。それでも来てくれるなら、いつでもいいから。心の準備ができたら、電話してくれる?」
と、渡された次の書類・・。でも・・。
「あの・・。明日からでもいいんですか?」
それは、ただ、ほかを探す事が面倒くさい・・という理由。それに・・できるだけ早くあの洋服を手に入れたいという理由。それに・・ここが家から一番近そうだし・・。受験みたいなすべりどめは意識していなかったし。
「いいよー」
と、店長はうなずいてくれた。
「じゃぁ、とりあえず・・学校が終わってからの、平日の、6時から9時まで働ける? 時給は、800円から始めようか。週に3日程度来てくれるかな?」
頭の中で計算してしまう。一日2400円、週に3日で7200円。一月4週間で、28800円か・・一月働けば、あの洋服が買えるんだ・・だから。
「はい・・」
とりあえず返事した。ずっとにこにこしてる店長。
「じゃ・・がんばって。制服は用意しとくから、明日、6時に来てくれる? 印鑑と銀行の口座番号はこれに」
「・・はい・・」
渡された書類を持って、店を出るときレジにいたお姉さん・・。会釈すると、素敵な笑顔、優しそう。小さく手を振ってくれた。だから、深々とお辞儀して、重い扉を押し開けながら、なんだか新しい一歩を踏み出したような、なんだか足元がおぼつかないような・・なんだかものすごくあっけなかったような、緊張が突然途切れた気分のまま家に帰った。

 そして、あゆみと弥生はまだ反対している。
「本当にあんなとこでバイトする気?」
「面接とか行ったわけ?」
両方のしかめ顔な質問に、うん・・とうなずいて。
「かっこいい男の子いた?」
な、質問には、店長以外の男の人を見なかったから・・「さぁ~」とだけ答えたけど。
「今度食べに行こうか? でも・・あそこ高いからねぇ。お料理高い店ってどうして時給少ないんだろ・・」
いたずらな笑みのあゆみ。まだ・・始めたわけじゃないけど・・二人が来る・・そんなシーンも訪れるのだろうか? と、思ってしまった。この二人にお料理運んでる自分を想像して、かなり・・恥ずかしい気がしてしまった。

  とりあえず、学校から帰って、お母さんに、今日からアルバイトを始めることを報告した、あまりに、勢いよく始めたことも原因だと思うけど、お母さんは。
「えっ・・もぉ?」
と、相当驚いていた。うなずいて、とりあえず、言われた時間通りに行った。印鑑と貯金通帳を探し出して、遅刻しないように。でも・・
「もう少し早く来てよ・・ったく・・時間ぴったりだなんて、制服とかの用意もあるんだから・・」
昨日、レジにいた人。名札には、三浦由佳・・と書かれてる。少しだけ機嫌がわるそうだけど・・。
「名前は?」
「藤沢美樹です・・」
「このサイズかなぁ・・」
そしらぬ顔で制服をより分けてる由佳さん。私のつぶやいた声・・聞こえたのだろうか。
「はい・・美樹ちゃん。これに着替えて、私は社員だから、色とか違うけど。似たような形だから・・」
覚えてくれたようだ。それに、由佳さんの制服をじぃぃっと見つめて・・思うこと、こんなの着るのは初めてだ。
「そんなに派手でもないでしょ。美樹ちゃんには似合うんじゃないかなぁ」
と、私に当てた制服。ありきたりなツーピースにエプロン。とりあえず着替えて更衣室を出ると・・・。
「かわいいじゃない。ちょっとチンチクリンだけど・・なんだか、美樹ちゃんって子供っぽいねぇ。かわいい。初初しいっていうのかな」
と、襟元を正してくれながら、ようやく笑い始めた由佳さん。見つめ直すと確かに・・胸とかお尻のあたりがぶかぶかな気がする。それに・・鏡を見つめると・・本当に、私って、子供っぽい・・のかなぁ・・お人形さんみたいな衣装だ。ものすごく恥ずかしい気もする。鏡を見つめる私をじぃぃっと見つめていた由佳さん。鏡の前でくるくるして、私がひととおり見つめ終わるのを待ってくれていた。ふいに目が合うと・・。
「じゃ、みんなを紹介するから、ついておいで」
と、私の腕を引っ張った。

 店長は渡辺政人さんと言う名前だった。面接の時と全然変わらない笑顔で「おっ・・かわいいな」と、言ってくれた。すこしうれしい気分がしたけど、由佳さんは、「あの人少し性格悪いから・・口も悪いときあるけど気にしないでね」と告げ口してくれた。
 アルバイトの、中島奈菜江さん、「かわいい・・よろしくね」と握手してくれた、頬紅が少しだけ濃い気がするけど、とても綺麗な人。フリーターで、年は20才だそうだ。
  もう一人いたアルバイトの高木優子さん。この人は物凄く背が高い。私より30センチくらい高いところに顔があって、思わず視線が向いてしまうのは何かが入っていそうなバスト・・。この人も20才のフリーター。「よろしくね」と、笑うと目がにこにこバッチみたいになる。そびえ立つような背丈なのに、とても優しそうな人。
  そして、レジにいた、鈴木美里さん・・。この人はモデルかと思うほどに綺麗な人だ。それに・・私たちとは制服が違う・・。ボディーラインをものすごく強調してるシックなワンピースは、ものすごく大人なイメージ。お客さんを案内してる最中で挨拶はできなかった。ただ、由佳さんは
「私と同じ年、22才でOLだよ」
と言った・・OL? そして、
「キッチンの人はみんなアヤシイ人達ばかりだから・・平日は人数少ないけどね」
と、由佳さんが言いながら、とりあえず、付いて行ってコックさん達に挨拶したけど・・。
「よろしく」
と、ひときわ帽子が飛び出てるチーフは赤川誠二さんと言う名前だそうだ。
「チーフって呼んであげて」
と由佳さんは言った。顔はどこかの落語家・・四角い顔のあの人に似ていた。
「そのとなりの安部真吾君、奈菜江の彼氏。専門学校に行ってる」
は、どことなくかっこいい人・・。手を振ってくれた。だから、ちょこんとお辞儀して、ふと、気づいたこと・・奈菜江さんの彼氏? と、思ったのは、お料理を取りに来た奈菜江さんと目が合ったから。恋人どうしな二人を生で見るのが初めてだ。
「まだ、ほかにも大勢いるんだけど、平日のこの時間のメンバーはこんな人達だから。覚えた?」
「・はい・・」
「じゃぁ、仕事の内容とか説明するから」

  とりあえず・・生まれて初めて始めたアルバイト・・私にもできるのだろうか・・・。な不安は、日に日に大きく膨らんで。それが、私にはできそうにない気がする・・な、不安に変わり始めたのは・・。機械の操作とか、冷蔵庫の中身とかを一通り覚えて、表に出るようになって。
「い・いらっしゃい・・ませ・・ヨ・・ヨ・・ヨーコソ」
と、何度言ってもどもってしまう、お客さんへの最初の挨拶を言い始めた時。これを、見知らぬ人に言うのは、ものすごく恥ずかしい。それに・・初めて知り合った年上のお姉さん達は、みんなで、私がどもるのをくすくす笑いながら見つめてるし。どもればどもったで。
「美樹ってかわいいねぇ~」
「い、い、い、いらっ・・いらっ・・しゃいませ」
「ヨ、ヨ、ヨォコ・・ヨォコソ。だって。ぷぷぷ。かぁわいい」
と、私をまねてからかうし。それに、お客さんのオーダーを電卓のお化けみたいな装置に入力するのだけど・・。どんなに眺めても・・いつも、オーダーの略名を見つけ出すのに、ものすごい時間がかかってしまう。毎回場所が変わってるんじゃないだろうか・・。そんなことまで思ってしまう。そして・・。
「見つからないの?」
なんて、お客さんに言われて、ひぃぃと焦ってると。
「ちょっと貸してくれる?」
と、機械を奪われて・・。
「自分でした方が早いよピッポッパ。オーダーを繰り返します・・・テーブルのナンバーは6か・・うん・・これでいいよ」
と、この人は何者なんだろ・・。と思ってしまうお客さんまでいる。それに、ときどき・・。
「美樹って名前なんだ・・かわいい。中学生? なわけないよね」
なんて、心にぐさっとなにかが刺さるような事を言う男の人もいる。そんな事を言う男の人はたいてい。
「オーダーを繰り返します・・」
と、機械を操作してると、
「そんなの頼んだ?」
なんて、ものすごくイジワルな顔をする。だから・・また・・間違えたかと、不安な顔をしてしまうと・・。
「そのとまどってる顔・・なんだかかわいいなぁ。もっといじめたくなるよなぁ。かぁわいい・・彼氏とかいるの?」
なんて逃げ出したくなる事までにやにや言うし。そんな人が結構多い、だから、そんなお客さんにからかわれるたびに、嫌気が大きくなって。でも・・。
「美樹が来てから、お客さん、増えたみたい」
と、由佳さんが言ってくれたのは、表に出るようになってから2週間くらいたったとき。
「ねぇ・・美樹がいないときは、あの娘、今日は休み?なんてお客さんもいるよ」
「美樹ってかわいいからねぇ。ちょこまかちょこまかしてて」
それは・・どう受けとめればいい言葉なのかわからなかった。かわいいと言ってもらうのも生まれて初めてだし。そんな言葉に優しさを感じるのも初めて。
「でも・・帰り道気をつけなよ。ときどきやばそうなオトコもいるから」
そういうことを意識したのも初めてだ。だから、一人歩きは危ないよ。と、同じ方向に帰る、奈菜江さんと真吾さんがいつも帰り道、家まで一緒に歩いてくれる。奈菜恵さんは、本当に優しいお姉さんだ。私の自転車を押してくれる真吾さんもどことなく好感がもてる。だから、おしゃべりしながらの帰り道。星空を見上げて、もう少し、続けてみようと心に決めてみた。

  春休みに入ってからは、勤務する時間が少しだけ延びた。ランチタイムのとても忙しい時間から夕方の6時まで・・でも・・相変わらず・・どじなこともしてしまう。
「初めてすることだから、ぎこちないのは仕方ないよ」と、言ってくれたのは、優子さん。アルバイト自体はかなり慣れたと思うけど。私自身こんなにどじな女の子だと意識したことはなかった。
「美樹は、一日一回、なにかしてくれるなぁ」
と、店長。由佳さんが言ってたことは本当だった。この人は、笑顔を絶やさない人だけど、性格は悪い。
「ったく・・」
今日も、入力し間違えたオーダーを別のテーブルに運んでしまった。だからと言って。
「美樹は人の顔とか、記憶できないの?」
なんて笑顔で言うなんて。
「それに、テーブル番号も・・オーダーシートに打ち込んだの自分でしょ」
もう・・いいじゃない・・。
「それに・・いくらお客さんが許してくれたからといって・・。お客さんがオーダーしないものまで食べさせて・・押し売りの才能でもあるのかな?」
なんてぶつぶつ言ってる・・。しつこい人だなぁ・・。確かに私が悪いのだろうけど。
「もぉぉ、店長。それくらいにしとかないと嫌われますよ」
いつも助けてくれる由佳さん。だから、とりあえず。
「ごめんなさい・・」と謝ろうとしたのに・・。
「今度はいつ間違えるんだ? 間違える前に一言言ってくれ」
それも、絶対イヤミな一言だと思う。笑顔のままで言うなんて。でも、本当に、だいぶ慣れたなぁ・・と思う。慣れてくると、結構楽しく感じ始めたウェイトレスの仕事。暖かくなり始めたからかな、桜が咲き始めたからかな、暇な時の年上のお姉さん達とのおしゃべりも、少しずつ楽しくなり始めたし。
「いやっしゃいませヨーコソ、何名さまですか?」
と、最近はすらすら言えるようになった。
「オーダーを繰り返します」
も、最近は戸惑わなくなった。
「頼んだものまだできないの?」
と、言う、男のお客さんも。
「ごめんなさい・・もう少しお待ちください」
と、わざとらしく不安な顔をすれば許してくれることも覚えてしまったし・・それが。
「ちょっとぉ、まだなのぉ・・」
と、言うおばさんには絶対通じない事も覚えた。そして・・。店長のイヤミな一言。本当に一日一言になり始めたなと思うようになった時、桜も散り始め、春休みが終わった。

「高校二年生か、よっし、がんばらなきゃ」
と言ったのは、あゆみ。始業式で。
「また同じクラスだね」
と弥生が言ってくれる。うん、といつも通りにうなずいて。わくわくと胸を膨らませてみた。そして。
「絶対今年こそは彼氏、ゲットしなきゃ」
とあゆみがガッツポーズしてる。でも、私は、それといってがんばらなきゃならないものは思いつかない。とりあえず、アルバイト・・もう少しテキパキ・・かな。
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