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第1章 転がり落ちてきた玉座への道と、繰り上がり王太子の嫁取り事情
1-47.鈍感系主人公というのは、褒め言葉か
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結局、あの後は叔母上が幼馴染騎士くんに声をかけて、何やら結論が出たらしく俺達は退出した。いや、あれは追い出されたと言うんだと思う! 叔母上が、邪魔すんな子どもはあっち行け、みないな冷めた目で見てくるんだもん。この作戦を立てた俺達が言うことじゃないけど、扱いが雑過ぎやしませんかね?
取り敢えず、現状をまとめるために執務室に行くかー、と思っていたら私室に放り込まれた。なぜ!?
「レーメ様、イってないだろ? 可哀想だから、皆で慰めてやろうと思って」
「……そこは触れないのが優しさだろう。収まっているし、大丈夫だって」
「大丈夫ですよ、レーメ様。パウリーネ嬢も万葉殿も待っていますし。まさか、パウリーネ嬢を放置しませんよね?」
「なんなの、お前たちのその連係プレー。あと、俺の部屋はいつから集会所になったんだ……」
確かに、イってないから頭は割とピンクのお花畑状態だ。人前とはいえユハのナカまで触れたし、挿入れたくなるのはとても我慢した。今だって近くにケニーもユハも居るから、叶うなら部屋に連れ込んで犯したいくらいだ。でもさ、ハジメテって大切だろう? 一生の付き合いなのに、適当に済ませたくないじゃないか。だから、必死に我慢しているし、性処理みたいに扱いたくないのに。
え、普段閨の御供として寝所に連れ込むのは問題ないのかって? 最後まで手は出してない、戯れなのでセーフです。俺がそう決めた、異論は認めない。
居室部分でぎゃあぎゃあケニーとユハに食って掛かっていたら、ゆったりとしたデイドレスを身にまとうパウが万葉殿を連れて寝所から出てきた。……どこに居るって、まさかの寝室。寝るときに昼間パウが居たんだなー、って意識しちゃうからやめて欲しい。あと、部屋の主の許可はどこ行った。俺は寝所を使うなんて聞いてなかったんだけど……。
パウリーネは、俺の姿を見つけるとぱあっと笑みを零して、駆け寄ってきた。
「レーメ様、とても素敵にございました! わたくし、とてもドキドキしましたわ」
「パウ、見ていたんだね……。淑女なのだら、そういうこと言わないでおくれ。私が居たたまれなくなってしまう」
「ここには身内しかおりませんもの、問題ありませんわ! それよりレーメ様、皆で寝所に行きましょう?」
「皆? パウリーネ、ダメだよ。その気のない人を連れてしまったら、嫌がらせになる。行くなら、君とケニー、ユハまでだ。本当はパウも困るけど、引く気はないんだろう?」
何故か、空気が一気に固まった。えっ、なんで!? 万葉殿は仮婚約者なんだから、寝室に連れ込むの本来はアウトだよね? というか日本人の感覚があったら、余程そういう世界に浸かってない限り抵抗あるだろうに。日本人で複数プレイ好きという人は、多くいる訳ないと思う。あのどちらかというと恥ずかしがりで異端を排除しがちな国民性だし、このシェルクヴィスト王国の奔放な国民性とは割と対照的だと思う。
いや、さ。確かにこの場に居る人で、万葉殿だけ仲間はずれってことになるけど。好きな子ならともかく、万葉殿はどちらかというと友達だし。友達の前でオナニーやセックス出来るほど、心臓強くないんだよ俺ぁ……。
パウリーネは、万葉殿をチラチラと見ながらも、俺の言葉を受けて素直に謝った。
「……分かりましたわ。ズハ様、ごめんなさい。許してくださいまし」
「いや、僕も邪魔しようとして悪かった。部屋に戻るよ」
「万葉殿」
何だか、部屋を立ち去ろうとする万葉殿の背がとても小さく見えて、思わず声をかけた。俺の声に立ち止まってくれたが、顔は俯いていて表情はあまり見えない。ただ、肩が震えているように見える。
残念なことに、彼の様子に心当たりがない俺はかける言葉がうまく見つからない。だが、何も言わずに見送るのはダメだと思うから、何とか言葉を紡ぎだした。
「あなたを蔑ろにするつもりはない。ただ、こういうことは好き合う同士で行うべきものだと俺は思っている。その、日本人の気質のあなたを誘うのは気が引けるのであって、除け者にする気はないんだ」
「だ、大丈夫。分かってるから。そういえば、リリーさんに頼まれごとされてたんだよ。だから渡りに船っていうか……っ」
「そうか。……パウリーネの相手をしてくれてありがとう。まあ見られていたのは気恥ずかしいが」
「まあ、なんていうか……。おつかれ、さま」
そう言い残すと、万葉殿は俺の私室を去って行った。俺の部屋の外には万葉殿専属護衛も待機していたから、たぶん付き添ってくれるだろう。
俺の言葉は、うまく伝わっただろうか? 様子がおかしかったし追いかけるべきかとも思ったのだが、パウリーネが俺の袖を引いてふるふると顔を横に振っている。ケニーやユハの方を向いても、顔を振るばかりだ。ならば、放っておいてあげるのが今は正解なのかもしれない。
なんだか今の短いやり取りだけで緊張したし疲れた、と居室のソファーにどかりと行儀悪く座り、ケニーに紅茶を要求する。もう、慰めてもらう気にもならなかった。あの手この手で俺を寝所に連れて行こうとする3人をあしらい、何故か寝所から出てきたリリーの姿を見て、大騒ぎし始めるケニーに叱る母リリー、という構図が出来て話はうやむやになった。
別に、俺は鈍感系主人公ではないと思っている。第二子でモブだし、ひっそり生きる予定だったし。でもさぁ、万葉殿のあの態度、俺が好きな子とするべきこと、の辺りから可笑しかったと思うんだ。そうなると、って思うのは……自惚れが過ぎる、かな?
リリーが用意してくれた、母上の離宮でしか食べられない素朴なクッキーをかじりながら、思考に耽った。ケニーは騒いでいるし、ユハは苦笑いしていたけど。パウリーネに至っては、俺に給餌しようとクッキーを口に運んできたけども。
取り敢えず、現状をまとめるために執務室に行くかー、と思っていたら私室に放り込まれた。なぜ!?
「レーメ様、イってないだろ? 可哀想だから、皆で慰めてやろうと思って」
「……そこは触れないのが優しさだろう。収まっているし、大丈夫だって」
「大丈夫ですよ、レーメ様。パウリーネ嬢も万葉殿も待っていますし。まさか、パウリーネ嬢を放置しませんよね?」
「なんなの、お前たちのその連係プレー。あと、俺の部屋はいつから集会所になったんだ……」
確かに、イってないから頭は割とピンクのお花畑状態だ。人前とはいえユハのナカまで触れたし、挿入れたくなるのはとても我慢した。今だって近くにケニーもユハも居るから、叶うなら部屋に連れ込んで犯したいくらいだ。でもさ、ハジメテって大切だろう? 一生の付き合いなのに、適当に済ませたくないじゃないか。だから、必死に我慢しているし、性処理みたいに扱いたくないのに。
え、普段閨の御供として寝所に連れ込むのは問題ないのかって? 最後まで手は出してない、戯れなのでセーフです。俺がそう決めた、異論は認めない。
居室部分でぎゃあぎゃあケニーとユハに食って掛かっていたら、ゆったりとしたデイドレスを身にまとうパウが万葉殿を連れて寝所から出てきた。……どこに居るって、まさかの寝室。寝るときに昼間パウが居たんだなー、って意識しちゃうからやめて欲しい。あと、部屋の主の許可はどこ行った。俺は寝所を使うなんて聞いてなかったんだけど……。
パウリーネは、俺の姿を見つけるとぱあっと笑みを零して、駆け寄ってきた。
「レーメ様、とても素敵にございました! わたくし、とてもドキドキしましたわ」
「パウ、見ていたんだね……。淑女なのだら、そういうこと言わないでおくれ。私が居たたまれなくなってしまう」
「ここには身内しかおりませんもの、問題ありませんわ! それよりレーメ様、皆で寝所に行きましょう?」
「皆? パウリーネ、ダメだよ。その気のない人を連れてしまったら、嫌がらせになる。行くなら、君とケニー、ユハまでだ。本当はパウも困るけど、引く気はないんだろう?」
何故か、空気が一気に固まった。えっ、なんで!? 万葉殿は仮婚約者なんだから、寝室に連れ込むの本来はアウトだよね? というか日本人の感覚があったら、余程そういう世界に浸かってない限り抵抗あるだろうに。日本人で複数プレイ好きという人は、多くいる訳ないと思う。あのどちらかというと恥ずかしがりで異端を排除しがちな国民性だし、このシェルクヴィスト王国の奔放な国民性とは割と対照的だと思う。
いや、さ。確かにこの場に居る人で、万葉殿だけ仲間はずれってことになるけど。好きな子ならともかく、万葉殿はどちらかというと友達だし。友達の前でオナニーやセックス出来るほど、心臓強くないんだよ俺ぁ……。
パウリーネは、万葉殿をチラチラと見ながらも、俺の言葉を受けて素直に謝った。
「……分かりましたわ。ズハ様、ごめんなさい。許してくださいまし」
「いや、僕も邪魔しようとして悪かった。部屋に戻るよ」
「万葉殿」
何だか、部屋を立ち去ろうとする万葉殿の背がとても小さく見えて、思わず声をかけた。俺の声に立ち止まってくれたが、顔は俯いていて表情はあまり見えない。ただ、肩が震えているように見える。
残念なことに、彼の様子に心当たりがない俺はかける言葉がうまく見つからない。だが、何も言わずに見送るのはダメだと思うから、何とか言葉を紡ぎだした。
「あなたを蔑ろにするつもりはない。ただ、こういうことは好き合う同士で行うべきものだと俺は思っている。その、日本人の気質のあなたを誘うのは気が引けるのであって、除け者にする気はないんだ」
「だ、大丈夫。分かってるから。そういえば、リリーさんに頼まれごとされてたんだよ。だから渡りに船っていうか……っ」
「そうか。……パウリーネの相手をしてくれてありがとう。まあ見られていたのは気恥ずかしいが」
「まあ、なんていうか……。おつかれ、さま」
そう言い残すと、万葉殿は俺の私室を去って行った。俺の部屋の外には万葉殿専属護衛も待機していたから、たぶん付き添ってくれるだろう。
俺の言葉は、うまく伝わっただろうか? 様子がおかしかったし追いかけるべきかとも思ったのだが、パウリーネが俺の袖を引いてふるふると顔を横に振っている。ケニーやユハの方を向いても、顔を振るばかりだ。ならば、放っておいてあげるのが今は正解なのかもしれない。
なんだか今の短いやり取りだけで緊張したし疲れた、と居室のソファーにどかりと行儀悪く座り、ケニーに紅茶を要求する。もう、慰めてもらう気にもならなかった。あの手この手で俺を寝所に連れて行こうとする3人をあしらい、何故か寝所から出てきたリリーの姿を見て、大騒ぎし始めるケニーに叱る母リリー、という構図が出来て話はうやむやになった。
別に、俺は鈍感系主人公ではないと思っている。第二子でモブだし、ひっそり生きる予定だったし。でもさぁ、万葉殿のあの態度、俺が好きな子とするべきこと、の辺りから可笑しかったと思うんだ。そうなると、って思うのは……自惚れが過ぎる、かな?
リリーが用意してくれた、母上の離宮でしか食べられない素朴なクッキーをかじりながら、思考に耽った。ケニーは騒いでいるし、ユハは苦笑いしていたけど。パウリーネに至っては、俺に給餌しようとクッキーを口に運んできたけども。
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