58 / 59
第1章 転がり落ちてきた玉座への道と、繰り上がり王太子の嫁取り事情
【閑話09】イェスタフ01.叶うならあの優しい熱がいい
しおりを挟む ――僕は、何を間違えてしまったのだろうか。
口から漏れ出る恥ずかしい声は、もう諦めた。だって、身体中がとても熱くて、色んな熱が僕に触れてくる。気持ち良すぎるから我慢できなくて、バカみたいにあんあんと喘ぎながら、理性を手放しきれない不思議な状況で、頭と身体が分かれてしまったみたいだった。そんな状況だから、身体中を這う熱から意識をどうにか逸らして耳を澄ましてみると、僕は呪術をかけられたらしい。しかも、我が国の呪術をパワーアップしたものを、実験体かのように使われているようだ。どうやら、帝国の呪術師が開発した催淫の呪術は解析されてしまったらしい。
ということは、僕は――帝国の使節団は負けた。姫様の暴走でこちらに非がある上に、最新の呪術だって解読されてしまったのだ。どう考えても、相手が上手だったということだろう。
不思議と、この状況を受け入れることができた。それは、愛しいと物語る手で触れられた気がしたからかもしれないし、そうして愛された人たちの快感や絶頂を感じることができたからかもしれない。自然と自分の身に何が起きているかは理解できていたし、クレーメンス殿下が僕の身を這うこの優しい手の持ち主だとも理解できていた。そして、嫌悪感を覚えないことに一番、驚いた。
僕はこの人生で、欠陥品と呼ばれるほどに男の雄に焦がれる欠けた人間だったし、僕自身のその性質は認められていなかったから。だから、姫様を受け入れられず逃げたかったし、男の雄を欲しいと思ってないと自分に言い聞かせるため独身を貫くために一生懸命に逃げていたから。
気がつくと人が増えていて、王妹である公爵閣下が見えたから、ああ本格的に犯されてしまうのだなと諦めた。
帝国でも、公爵閣下は有名人だ。基本的に男女に関わらず騎士を娶り、支援する騎士の星。そして、王国の騎士団を掌握するために、双性の魔法を受けてすぐに反抗する騎士を次々に組み伏せて雄雌関係なく犯しまくったと有名だ。元々、騎士は力比べをしてそのまま弱く後ろ盾のない騎士は犯される運命にあったけど、王妹だった方に逆らえる騎士などいるはずもなく。本当に、犯しては下僕を増やしていったというのは有名で伝説になっている。僕は騎士団にいたから、公爵閣下の武勇伝は自然と耳に入ってきたし、たぶん普通の貴族と生きていくより詳細に話が耳に入ってきた。
もしかしたら、姫様のことを受け入れられなかった原因の1つに、公爵閣下の武勇伝が頭にあって似た性質の姫様を怖く思っていたからかもしれない。
その相手に犯されそうになるとは、何の因果か。諦めて、瞳を閉じた。
「おや? 自分のたどる運命を悟っていると見える。潔いな、いい騎士だったのだろう。――……お前に選択肢をやろう。誰に犯されたい? ハジメテの相手だ、希望は聞いていやる」
「かな、んんっ、なら……はあっ、ぅあ……。くれ、ぁあんっ、め、でんか……」
「ほう、クレーメンスか。面白い選択だ、呪術の効果か? ……だが残念だったな、甥っ子は最後の仕上げは私にやってくれと頼んできたのだ。何でも、きちんと好きな相手と最後までしてないくらいなのに、義務で抱くのは嫌なんだと。今後も嫁以外抱かずに済むよう、私みたいな適任者を探すそうだ」
ははっ。そんな雄がいるのなら、羨ましくて泣いてしまいそうだ。
朦朧とした意識の中で、公爵閣下に問いかけられたことだけは理解できているから、そう答える。あの優しい手の持ち主になら、自分の身を捧げてもいいと思えた。たぶん、自分の性癖を否定するのに疲れてしまったこともあったのだろう。どうせ犯されてしまうなら、あの手がいいと思ってしまった。
しかし、希望を聞くと言いながら叶えてくれないらしい。理由が、クレーメンス殿下が嫁しか抱きたくないから、らしい。いいなあ、そんな風に嫁を大切にしてくれる雄の元に嫁げるのなら、僕だって苦しい思いをしないで済むかもしれないのに。
きっと、僕は実家から縁を切られる。そんな者の末路は、見え切っている。なら、最後にイイ思い出くらい、欲しかったかもしれない。
がっくりと落ち込む僕を、公爵閣下は見ているようだった。気が付くと、身を這う熱は居なくなっていて、呼吸がし易くなっていた。どうやらあの恐ろしい責め苦は一時休止らしい。終わりということはないだろう、僕はこの拷問方法を嫌と言うほど知っている。
「……そうさな、今のお前を犯しても何も意味がなさそうだ。我々に最後まで付き合え、それでこの場は流してやろう」
「その、あとは……?」
「さて、それは陛下が決めることだからな。ただ、あの兄上のことだからな……。そうだ、ひとつ聞いておこう。あの姫君のことは、どう考えている?」
「まもるべき、おさななじみで……。ぼくは、あのかたをだけないし、だかれたいとも、おもえない。ぼくがすきなのは、おとこ、だから」
そうか。そう一言だけ呟くと、公爵閣下は僕の頭をぽんぽんと撫でた。それからのことは、覚えていない。僕自身の戒め、コックリングだけ取ってくれた公爵閣下が、褒美の時間だ、と言っているのは聞こえたと思う。でも、その後に始まった先ほどまでの甘ったるい熱ではなくて、鋭く抉るような熱に切り替わって、他に考えられないくらい身体中が翻弄されて。
意識が落ちる時に思ったのは、まさかの処女が守られてしまったな、だった。喪う覚悟をしていたし、次に目が覚めたら捨てることになるだろう。その時は、あの優しい手の熱を思い出しながら抱かれたいなぁ、なんて考えても詮無き事を思った。
口から漏れ出る恥ずかしい声は、もう諦めた。だって、身体中がとても熱くて、色んな熱が僕に触れてくる。気持ち良すぎるから我慢できなくて、バカみたいにあんあんと喘ぎながら、理性を手放しきれない不思議な状況で、頭と身体が分かれてしまったみたいだった。そんな状況だから、身体中を這う熱から意識をどうにか逸らして耳を澄ましてみると、僕は呪術をかけられたらしい。しかも、我が国の呪術をパワーアップしたものを、実験体かのように使われているようだ。どうやら、帝国の呪術師が開発した催淫の呪術は解析されてしまったらしい。
ということは、僕は――帝国の使節団は負けた。姫様の暴走でこちらに非がある上に、最新の呪術だって解読されてしまったのだ。どう考えても、相手が上手だったということだろう。
不思議と、この状況を受け入れることができた。それは、愛しいと物語る手で触れられた気がしたからかもしれないし、そうして愛された人たちの快感や絶頂を感じることができたからかもしれない。自然と自分の身に何が起きているかは理解できていたし、クレーメンス殿下が僕の身を這うこの優しい手の持ち主だとも理解できていた。そして、嫌悪感を覚えないことに一番、驚いた。
僕はこの人生で、欠陥品と呼ばれるほどに男の雄に焦がれる欠けた人間だったし、僕自身のその性質は認められていなかったから。だから、姫様を受け入れられず逃げたかったし、男の雄を欲しいと思ってないと自分に言い聞かせるため独身を貫くために一生懸命に逃げていたから。
気がつくと人が増えていて、王妹である公爵閣下が見えたから、ああ本格的に犯されてしまうのだなと諦めた。
帝国でも、公爵閣下は有名人だ。基本的に男女に関わらず騎士を娶り、支援する騎士の星。そして、王国の騎士団を掌握するために、双性の魔法を受けてすぐに反抗する騎士を次々に組み伏せて雄雌関係なく犯しまくったと有名だ。元々、騎士は力比べをしてそのまま弱く後ろ盾のない騎士は犯される運命にあったけど、王妹だった方に逆らえる騎士などいるはずもなく。本当に、犯しては下僕を増やしていったというのは有名で伝説になっている。僕は騎士団にいたから、公爵閣下の武勇伝は自然と耳に入ってきたし、たぶん普通の貴族と生きていくより詳細に話が耳に入ってきた。
もしかしたら、姫様のことを受け入れられなかった原因の1つに、公爵閣下の武勇伝が頭にあって似た性質の姫様を怖く思っていたからかもしれない。
その相手に犯されそうになるとは、何の因果か。諦めて、瞳を閉じた。
「おや? 自分のたどる運命を悟っていると見える。潔いな、いい騎士だったのだろう。――……お前に選択肢をやろう。誰に犯されたい? ハジメテの相手だ、希望は聞いていやる」
「かな、んんっ、なら……はあっ、ぅあ……。くれ、ぁあんっ、め、でんか……」
「ほう、クレーメンスか。面白い選択だ、呪術の効果か? ……だが残念だったな、甥っ子は最後の仕上げは私にやってくれと頼んできたのだ。何でも、きちんと好きな相手と最後までしてないくらいなのに、義務で抱くのは嫌なんだと。今後も嫁以外抱かずに済むよう、私みたいな適任者を探すそうだ」
ははっ。そんな雄がいるのなら、羨ましくて泣いてしまいそうだ。
朦朧とした意識の中で、公爵閣下に問いかけられたことだけは理解できているから、そう答える。あの優しい手の持ち主になら、自分の身を捧げてもいいと思えた。たぶん、自分の性癖を否定するのに疲れてしまったこともあったのだろう。どうせ犯されてしまうなら、あの手がいいと思ってしまった。
しかし、希望を聞くと言いながら叶えてくれないらしい。理由が、クレーメンス殿下が嫁しか抱きたくないから、らしい。いいなあ、そんな風に嫁を大切にしてくれる雄の元に嫁げるのなら、僕だって苦しい思いをしないで済むかもしれないのに。
きっと、僕は実家から縁を切られる。そんな者の末路は、見え切っている。なら、最後にイイ思い出くらい、欲しかったかもしれない。
がっくりと落ち込む僕を、公爵閣下は見ているようだった。気が付くと、身を這う熱は居なくなっていて、呼吸がし易くなっていた。どうやらあの恐ろしい責め苦は一時休止らしい。終わりということはないだろう、僕はこの拷問方法を嫌と言うほど知っている。
「……そうさな、今のお前を犯しても何も意味がなさそうだ。我々に最後まで付き合え、それでこの場は流してやろう」
「その、あとは……?」
「さて、それは陛下が決めることだからな。ただ、あの兄上のことだからな……。そうだ、ひとつ聞いておこう。あの姫君のことは、どう考えている?」
「まもるべき、おさななじみで……。ぼくは、あのかたをだけないし、だかれたいとも、おもえない。ぼくがすきなのは、おとこ、だから」
そうか。そう一言だけ呟くと、公爵閣下は僕の頭をぽんぽんと撫でた。それからのことは、覚えていない。僕自身の戒め、コックリングだけ取ってくれた公爵閣下が、褒美の時間だ、と言っているのは聞こえたと思う。でも、その後に始まった先ほどまでの甘ったるい熱ではなくて、鋭く抉るような熱に切り替わって、他に考えられないくらい身体中が翻弄されて。
意識が落ちる時に思ったのは、まさかの処女が守られてしまったな、だった。喪う覚悟をしていたし、次に目が覚めたら捨てることになるだろう。その時は、あの優しい手の熱を思い出しながら抱かれたいなぁ、なんて考えても詮無き事を思った。
0
お気に入りに追加
108
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

シナリオ回避失敗して投獄された悪役令息は隊長様に抱かれました
無味無臭(不定期更新)
BL
悪役令嬢の道連れで従兄弟だった僕まで投獄されることになった。
前世持ちだが結局役に立たなかった。
そもそもシナリオに抗うなど無理なことだったのだ。
そんなことを思いながら収監された牢屋で眠りについた。
目を覚ますと僕は見知らぬ人に抱かれていた。
…あれ?
僕に風俗墜ちシナリオありましたっけ?

超絶美形な俺がBLゲームに転生した件
抹茶ごはん
BL
同性婚が当たり前に認められている世界観のBLゲーム、『白い薔薇は愛の象徴となり得るか』略して白薔薇の攻略対象キャラである第二王子、その婚約者でありゲームでは名前も出てこないモブキャラだったミレクシア・サンダルフォンに生まれ変わった美麗は憤怒した。
何故なら第二王子は婚約者がいながらゲームの主人公にひとめぼれし、第二王子ルートだろうが他のルートだろうが勝手に婚約破棄、ゲームの主人公にアピールしまくる恋愛モンスターになるのだ。…俺はこんなに美形なのに!!
別に第二王子のことなんて好きでもなんでもないけれど、美形ゆえにプライドが高く婚約破棄を受け入れられない本作主人公が奮闘する話。
この作品はフィクションです。実際のあらゆるものと関係ありません。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

拝啓お父様。私は野良魔王を拾いました。ちゃんとお世話するので飼ってよいでしょうか?
ミクリ21
BL
ある日、ルーゼンは野良魔王を拾った。
ルーゼンはある理由から、領地で家族とは離れて暮らしているのだ。
そして、父親に手紙で野良魔王を飼っていいかを伺うのだった。
大嫌いだったアイツの子なんか絶対に身籠りません!
みづき(藤吉めぐみ)
BL
国王の妾の子として、宮廷の片隅で母親とひっそりと暮らしていたユズハ。宮廷ではオメガの子だからと『下層の子』と蔑まれ、次期国王の子であるアサギからはしょっちゅういたずらをされていて、ユズハは大嫌いだった。
そんなある日、国王交代のタイミングで宮廷を追い出されたユズハ。娼館のスタッフとして働いていたが、十八歳になり、男娼となる。
初めての夜、客として現れたのは、幼い頃大嫌いだったアサギ、しかも「俺の子を孕め」なんて言ってきて――絶対に嫌! と思うユズハだが……
架空の近未来世界を舞台にした、再会から始まるオメガバースです。

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…

淫愛家族
箕田 はる
BL
婿養子として篠山家で生活している睦紀は、結婚一年目にして妻との不仲を悩んでいた。
事あるごとに身の丈に合わない結婚かもしれないと考える睦紀だったが、以前から親交があった義父の俊政と義兄の春馬とは良好な関係を築いていた。
二人から向けられる優しさは心地よく、迷惑をかけたくないという思いから、睦紀は妻と向き合うことを決意する。
だが、同僚から渡された風俗店のカードを返し忘れてしまったことで、正しい三人の関係性が次第に壊れていく――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる