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第1章 転がり落ちてきた玉座への道と、繰り上がり王太子の嫁取り事情
【閑話09】イェスタフ01.叶うならあの優しい熱がいい
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――僕は、何を間違えてしまったのだろうか。
口から漏れ出る恥ずかしい声は、もう諦めた。だって、身体中がとても熱くて、色んな熱が僕に触れてくる。気持ち良すぎるから我慢できなくて、バカみたいにあんあんと喘ぎながら、理性を手放しきれない不思議な状況で、頭と身体が分かれてしまったみたいだった。そんな状況だから、身体中を這う熱から意識をどうにか逸らして耳を澄ましてみると、僕は呪術をかけられたらしい。しかも、我が国の呪術をパワーアップしたものを、実験体かのように使われているようだ。どうやら、帝国の呪術師が開発した催淫の呪術は解析されてしまったらしい。
ということは、僕は――帝国の使節団は負けた。姫様の暴走でこちらに非がある上に、最新の呪術だって解読されてしまったのだ。どう考えても、相手が上手だったということだろう。
不思議と、この状況を受け入れることができた。それは、愛しいと物語る手で触れられた気がしたからかもしれないし、そうして愛された人たちの快感や絶頂を感じることができたからかもしれない。自然と自分の身に何が起きているかは理解できていたし、クレーメンス殿下が僕の身を這うこの優しい手の持ち主だとも理解できていた。そして、嫌悪感を覚えないことに一番、驚いた。
僕はこの人生で、欠陥品と呼ばれるほどに男の雄に焦がれる欠けた人間だったし、僕自身のその性質は認められていなかったから。だから、姫様を受け入れられず逃げたかったし、男の雄を欲しいと思ってないと自分に言い聞かせるため独身を貫くために一生懸命に逃げていたから。
気がつくと人が増えていて、王妹である公爵閣下が見えたから、ああ本格的に犯されてしまうのだなと諦めた。
帝国でも、公爵閣下は有名人だ。基本的に男女に関わらず騎士を娶り、支援する騎士の星。そして、王国の騎士団を掌握するために、双性の魔法を受けてすぐに反抗する騎士を次々に組み伏せて雄雌関係なく犯しまくったと有名だ。元々、騎士は力比べをしてそのまま弱く後ろ盾のない騎士は犯される運命にあったけど、王妹だった方に逆らえる騎士などいるはずもなく。本当に、犯しては下僕を増やしていったというのは有名で伝説になっている。僕は騎士団にいたから、公爵閣下の武勇伝は自然と耳に入ってきたし、たぶん普通の貴族と生きていくより詳細に話が耳に入ってきた。
もしかしたら、姫様のことを受け入れられなかった原因の1つに、公爵閣下の武勇伝が頭にあって似た性質の姫様を怖く思っていたからかもしれない。
その相手に犯されそうになるとは、何の因果か。諦めて、瞳を閉じた。
「おや? 自分のたどる運命を悟っていると見える。潔いな、いい騎士だったのだろう。――……お前に選択肢をやろう。誰に犯されたい? ハジメテの相手だ、希望は聞いていやる」
「かな、んんっ、なら……はあっ、ぅあ……。くれ、ぁあんっ、め、でんか……」
「ほう、クレーメンスか。面白い選択だ、呪術の効果か? ……だが残念だったな、甥っ子は最後の仕上げは私にやってくれと頼んできたのだ。何でも、きちんと好きな相手と最後までしてないくらいなのに、義務で抱くのは嫌なんだと。今後も嫁以外抱かずに済むよう、私みたいな適任者を探すそうだ」
ははっ。そんな雄がいるのなら、羨ましくて泣いてしまいそうだ。
朦朧とした意識の中で、公爵閣下に問いかけられたことだけは理解できているから、そう答える。あの優しい手の持ち主になら、自分の身を捧げてもいいと思えた。たぶん、自分の性癖を否定するのに疲れてしまったこともあったのだろう。どうせ犯されてしまうなら、あの手がいいと思ってしまった。
しかし、希望を聞くと言いながら叶えてくれないらしい。理由が、クレーメンス殿下が嫁しか抱きたくないから、らしい。いいなあ、そんな風に嫁を大切にしてくれる雄の元に嫁げるのなら、僕だって苦しい思いをしないで済むかもしれないのに。
きっと、僕は実家から縁を切られる。そんな者の末路は、見え切っている。なら、最後にイイ思い出くらい、欲しかったかもしれない。
がっくりと落ち込む僕を、公爵閣下は見ているようだった。気が付くと、身を這う熱は居なくなっていて、呼吸がし易くなっていた。どうやらあの恐ろしい責め苦は一時休止らしい。終わりということはないだろう、僕はこの拷問方法を嫌と言うほど知っている。
「……そうさな、今のお前を犯しても何も意味がなさそうだ。我々に最後まで付き合え、それでこの場は流してやろう」
「その、あとは……?」
「さて、それは陛下が決めることだからな。ただ、あの兄上のことだからな……。そうだ、ひとつ聞いておこう。あの姫君のことは、どう考えている?」
「まもるべき、おさななじみで……。ぼくは、あのかたをだけないし、だかれたいとも、おもえない。ぼくがすきなのは、おとこ、だから」
そうか。そう一言だけ呟くと、公爵閣下は僕の頭をぽんぽんと撫でた。それからのことは、覚えていない。僕自身の戒め、コックリングだけ取ってくれた公爵閣下が、褒美の時間だ、と言っているのは聞こえたと思う。でも、その後に始まった先ほどまでの甘ったるい熱ではなくて、鋭く抉るような熱に切り替わって、他に考えられないくらい身体中が翻弄されて。
意識が落ちる時に思ったのは、まさかの処女が守られてしまったな、だった。喪う覚悟をしていたし、次に目が覚めたら捨てることになるだろう。その時は、あの優しい手の熱を思い出しながら抱かれたいなぁ、なんて考えても詮無き事を思った。
口から漏れ出る恥ずかしい声は、もう諦めた。だって、身体中がとても熱くて、色んな熱が僕に触れてくる。気持ち良すぎるから我慢できなくて、バカみたいにあんあんと喘ぎながら、理性を手放しきれない不思議な状況で、頭と身体が分かれてしまったみたいだった。そんな状況だから、身体中を這う熱から意識をどうにか逸らして耳を澄ましてみると、僕は呪術をかけられたらしい。しかも、我が国の呪術をパワーアップしたものを、実験体かのように使われているようだ。どうやら、帝国の呪術師が開発した催淫の呪術は解析されてしまったらしい。
ということは、僕は――帝国の使節団は負けた。姫様の暴走でこちらに非がある上に、最新の呪術だって解読されてしまったのだ。どう考えても、相手が上手だったということだろう。
不思議と、この状況を受け入れることができた。それは、愛しいと物語る手で触れられた気がしたからかもしれないし、そうして愛された人たちの快感や絶頂を感じることができたからかもしれない。自然と自分の身に何が起きているかは理解できていたし、クレーメンス殿下が僕の身を這うこの優しい手の持ち主だとも理解できていた。そして、嫌悪感を覚えないことに一番、驚いた。
僕はこの人生で、欠陥品と呼ばれるほどに男の雄に焦がれる欠けた人間だったし、僕自身のその性質は認められていなかったから。だから、姫様を受け入れられず逃げたかったし、男の雄を欲しいと思ってないと自分に言い聞かせるため独身を貫くために一生懸命に逃げていたから。
気がつくと人が増えていて、王妹である公爵閣下が見えたから、ああ本格的に犯されてしまうのだなと諦めた。
帝国でも、公爵閣下は有名人だ。基本的に男女に関わらず騎士を娶り、支援する騎士の星。そして、王国の騎士団を掌握するために、双性の魔法を受けてすぐに反抗する騎士を次々に組み伏せて雄雌関係なく犯しまくったと有名だ。元々、騎士は力比べをしてそのまま弱く後ろ盾のない騎士は犯される運命にあったけど、王妹だった方に逆らえる騎士などいるはずもなく。本当に、犯しては下僕を増やしていったというのは有名で伝説になっている。僕は騎士団にいたから、公爵閣下の武勇伝は自然と耳に入ってきたし、たぶん普通の貴族と生きていくより詳細に話が耳に入ってきた。
もしかしたら、姫様のことを受け入れられなかった原因の1つに、公爵閣下の武勇伝が頭にあって似た性質の姫様を怖く思っていたからかもしれない。
その相手に犯されそうになるとは、何の因果か。諦めて、瞳を閉じた。
「おや? 自分のたどる運命を悟っていると見える。潔いな、いい騎士だったのだろう。――……お前に選択肢をやろう。誰に犯されたい? ハジメテの相手だ、希望は聞いていやる」
「かな、んんっ、なら……はあっ、ぅあ……。くれ、ぁあんっ、め、でんか……」
「ほう、クレーメンスか。面白い選択だ、呪術の効果か? ……だが残念だったな、甥っ子は最後の仕上げは私にやってくれと頼んできたのだ。何でも、きちんと好きな相手と最後までしてないくらいなのに、義務で抱くのは嫌なんだと。今後も嫁以外抱かずに済むよう、私みたいな適任者を探すそうだ」
ははっ。そんな雄がいるのなら、羨ましくて泣いてしまいそうだ。
朦朧とした意識の中で、公爵閣下に問いかけられたことだけは理解できているから、そう答える。あの優しい手の持ち主になら、自分の身を捧げてもいいと思えた。たぶん、自分の性癖を否定するのに疲れてしまったこともあったのだろう。どうせ犯されてしまうなら、あの手がいいと思ってしまった。
しかし、希望を聞くと言いながら叶えてくれないらしい。理由が、クレーメンス殿下が嫁しか抱きたくないから、らしい。いいなあ、そんな風に嫁を大切にしてくれる雄の元に嫁げるのなら、僕だって苦しい思いをしないで済むかもしれないのに。
きっと、僕は実家から縁を切られる。そんな者の末路は、見え切っている。なら、最後にイイ思い出くらい、欲しかったかもしれない。
がっくりと落ち込む僕を、公爵閣下は見ているようだった。気が付くと、身を這う熱は居なくなっていて、呼吸がし易くなっていた。どうやらあの恐ろしい責め苦は一時休止らしい。終わりということはないだろう、僕はこの拷問方法を嫌と言うほど知っている。
「……そうさな、今のお前を犯しても何も意味がなさそうだ。我々に最後まで付き合え、それでこの場は流してやろう」
「その、あとは……?」
「さて、それは陛下が決めることだからな。ただ、あの兄上のことだからな……。そうだ、ひとつ聞いておこう。あの姫君のことは、どう考えている?」
「まもるべき、おさななじみで……。ぼくは、あのかたをだけないし、だかれたいとも、おもえない。ぼくがすきなのは、おとこ、だから」
そうか。そう一言だけ呟くと、公爵閣下は僕の頭をぽんぽんと撫でた。それからのことは、覚えていない。僕自身の戒め、コックリングだけ取ってくれた公爵閣下が、褒美の時間だ、と言っているのは聞こえたと思う。でも、その後に始まった先ほどまでの甘ったるい熱ではなくて、鋭く抉るような熱に切り替わって、他に考えられないくらい身体中が翻弄されて。
意識が落ちる時に思ったのは、まさかの処女が守られてしまったな、だった。喪う覚悟をしていたし、次に目が覚めたら捨てることになるだろう。その時は、あの優しい手の熱を思い出しながら抱かれたいなぁ、なんて考えても詮無き事を思った。
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