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第1章 転がり落ちてきた玉座への道と、繰り上がり王太子の嫁取り事情

1-38.エロの国の閨教育は割と過激

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 めっちゃ偉そうな椅子で踏ん反り返って座りながら、足元にユハを傅かせて膝の上のケニーを愛でるという、ヤバいやつなう。が、これが割とオープンセックスする王侯貴族のスタンダードだったりする。お作法というか、何というか。……考えた奴、誰だよ!? とんでもない性格、もとい性癖だね?
 まあ目の前に他国貴族がいる以上、メンツの方が大切なので、その辺はスルーの方向で。

 そんな幼馴染騎士くんは、目の前で唐突に始まった濡れ場に目を白黒させている。別にヘテロ主義の帝国でも、こんな光景は普通にあるだろうに。
 ヘテロ主義で雄雌の区切りを好まない帝国であっても、乱交自体は普通にあるんだよな。東の果てには、そんな淫行けしからん! っていう国もあるらしいよ、そういうお国柄の方が変態を拗らせていると俺は思います。

 なるべく、閨教育で教わった通りに艶やかに笑んでみせる。……王族として必要になるかもしれないからって、10歳の時に仕込まれました。何も言わないでくれ……。あの時はこの世界に慣れたと思っていた俺も、絶句した。


「そういえば知っていたか? 貴国のお姫様は、我が国の神子殿を害する気持ちがおありだったようだ。好きな人と結婚するはずがその存在に邪魔されたのだから、亡き者にすれば元通り、と泣き叫んでいたと聞いた」
「神子様を……!?」
「我が国の神子殿が貴国に行きたいと願うなら、喜んで送り出すのだがな。残念なことに神子殿は貴国では生きづらいようだ。少なくとも私が保護している方の神子殿にそれとなく貴国のことを話したが、遠慮したいと言われてしまった。だから貴国に連れて帰るのは諦めてくれ」
「そんな……!?」


 俺の渾身の艶然とした笑みに少し頬を染めていた幼馴染騎士くんは、全部バレているとは思わなかったのだろう。一転して、俺の台詞に絶望とでも書いてあるような青白い顔をしている。

 この帝国から来た皇女とその幼馴染の痴情のもつれは、要は幼馴染くんが父親を通して皇帝陛下に進言したのが始まりらしい。「皇女と神子様をめあわせたらどうか」という、どうしても雌であり雄となれないと自覚がある幼馴染くんが、皇女との結婚を回避するための策だったと。で、帝国としても人口低下は気になっているから、子を確実に授けられる神子は欲しい、と乗り気になった。
 もちろん、それを耳にした皇女はめっちゃ怒った。で、皇女は帝国とは別の思惑――神子を亡き者に、というつもりで動いていたのが事の真相だ。残念ながら、脳筋気味の皇女では計画が杜撰すぎて本懐を遂げるどころではなかったようだが。

 ちなみに万葉殿神子に話した、というのは事実である。ちょっと顔を赤くしながら、「悪いけど、男女のみの恋愛しか出来ない国にわざわざ行くのは……」って言っていた。まあ、そりゃあそうだよな。せっかく、異世界転移して男同士も認められている国に来たのに、わざわざ自分のセクシャルが認められない国には積極的には行きたくないのは自然の道理である。万葉殿、まだオープンとはいかないけれど、少なくとも恋愛対象は男っていうのはハッキリ言うようになったからね。流石に、雌ですと公言するのは抵抗あるらしい。その辺は日本人がこの世界に染まってきた過程として普通だろう、うん。


「神子殿は貴殿と同じだそうだ。――男の雌、という意味で。ああ、貴国では何と表現するんだったかな。ど忘れしてしまったが、許されよ。あまりいい表現ではなく好ましくなかったのだ」
「なっ、俺は、欠陥品なんかじゃない……っ!」
「ほう? 帝国のホーカンソン公爵家嫡男の噂は、此処にも届いている。近隣諸国の首脳には知れ渡っている事実だ。別に、貴国の言うところの『欠陥品』は恥ずべきことではないだろう」


 この幼馴染騎士くんの最大の不幸は、帝国の高位貴族として生を受けたことだろう。帝国でなければ、普通に男の雌として逆ハーレムを築くでも、どこかに嫁入りでも何ら問題ない。公爵家という生まれを考えれば、王室だって狙える。
 幸せなんぞ本人にしか決められない、というしその通りだろう。それでも、現状を見ると彼は幸せそうには見えなかった。

 だが、しかし! 俺がユハに無体を働くハメになった、その元凶だから同情はしても容赦はしないかんな!


「そうだ、貴殿が違うと言うのならその『欠陥品』とやらではないと証明してみせればいい。なに、貴殿はそこで見ているだけで構わん」
「っ、それが王国のやり方か!?」
「酷い言われようだ、社交でもこうした触れ合いは普通だろう? 私もまだデビュタント前だがね、教育は一通り受けている」
「第一、相手の意思はどうなる? 強要しているんじゃないのか」


 さも今思い付いた、という風を装って公開セックスショーの提案をする。要は、どう興奮するか見せてみろ、ということだ。雄なら、イライラするだろうし、雌なら濡れてソワソワするだろう、と。……これ考えたの、12歳の女の子ってところが異世界しゅごい。パウはとても愉しそうだったし、アッサールが適宜アドバイスという名の邪魔しに来ていたから、たぶんとても雌にとってはえげつないのではないだろうか。
 まあ、やるけどな! ゆるすまじ、の精神はそのままです。ついでに俺も王族としての社交の練習です。色んな意味で踏み台になってくれ、幼馴染騎士くん。

 強要している、と言われてしまったので、どうしようかと思案する。なお、それなりに幼馴染騎士くんとやり取りをしていたが、その間ユハはとてもちゅぱちゅぱとえっちぃ音を立てながら俺の指をみ続けている。ケニーに至っては、俺の息子さんを人質にとっている状態だ。そろそろマイサンがスラックスに押さえつけられて痛いから、刺激するのやめてくれないかな。
 何を思ったのか、ケニーは俺の膝の上から降りて、自分の身体を壁にしながら俺のスラックスを寛げ始めた。え、ガチでここでおっぱじめるの? そういう台本だったっけ?


「私はお前たちに強要しているらしいよ、一度離れなさい」
「嫌です、お情けを頂くまで離れません」
「ご主人様は、我らが縋るのはお嫌ですか……?」


 お・ま・え・ら! 特にケニー、お前は俺のこと「ご主人様」だとか呼んだことないだろう。いや、未だに侍従扱いで傍に侍っているケニーが、公の場で俺のことをご主人様と呼ぶのは問題ない。むしろ名で呼ばせるのは閨の秘め事に該当するから、人前でそう呼ぶのは問題ない。だが、普通に殿下呼びでも問題なかったのでは……? なんか、ご主人様って呼ばれると変な気分になるから、やめて欲しい。あっ、ちょっとケニー、ガチで直に息子さん触るのやめて!?
 もはや、幼馴染騎士くんこと公爵令息がいること関係なく、俺の婚約者が自由に攻めてくるんですが、どうするのが正解ですかね?
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