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第1章 転がり落ちてきた玉座への道と、繰り上がり王太子の嫁取り事情
1-34.麗しき銀月の君に愛を乞う
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ユハとの現在の関係は、なし崩し的に愛称を呼び合い執務の手伝いをしてもらっている、有能でそれなりに仲がいい婚約者、だと思う。俺が戯れに頬や額にキスしても怒らないし、抱きしめても怒らないし、たぶん嫌われていない。公式の認識とは違い、本人の申告によればユハは雌。雄みのある人だけれど、可愛いところもあるし、俺が雌扱いしても嫌がらない。だから、急に異母兄上から俺に婚約者がスライドした割には、仲がいいのだ。
では、俺はユハのことを――この雌のことをどう思っているのか。それは、ユハと婚約することになってからずっと、自分に問いかけている。義兄と婚約者では、身内になるという共通点はあっても意味合いが全く違うから。
「ユハ、俺は忙しさにかまけて、貴方に言葉を尽くしてこなかった。それは申し訳なく思っている」
「そんな、こんな私を受け入れて重用してくださっている。ここに居ていいのだと、そう思えるだけで幸せなのです」
「それ、だけでいいのか……? 俺の気持ちは、迷惑?」
取り敢えず、二人きりできちんと話せそうな今を逃す手はない、と抱きしめたまま謝罪する。ずっと、心のどこかに蟠りがあったのだ。ユハは、十妃になれるのであれば、俺でなくても構わなかったのではないかと。こんな優秀で綺麗な人、誰だって欲しい。ユハとしても王家という王侯貴族の頂点に位置するそれに仲間入りすれば、きっと才能を十全に振るえる。であるならば、俺がユハを可愛がるのは迷惑ではないか、と。
そもそも、忙しくて時間がないと言い訳しているけれど、話す時間は作ろうと思えば作れた。でも、俺は急に王家のリモになることになり、婚約者を増やさなければならないという圧があり、心が追い付いていなかった。そこに、前から仲良くしていた『お兄さん』が『お嫁さん』になってくれるという。どう考えても、弟分が心配だから了承したとしか思えない……。それなりに、キスしたりハグしたりとアピールしてみたけど、ユハは頬こそ染めるがいつも冷静だ。この間、ディープな方をしたら逃げたけど。いいじゃん、婚約者だもの。
ユハが戸惑っている気配がする、何だかオロオロしているようだ。離すもんか、とぎゅうっと力を入れて抱きしめて、足を絡ませる。が、なんか気になる……主にユハのエロ可愛いところが。反応してない……? 朝勃ちか? もちろんそんなの気付いたら、俺のも元気になりますが生理現象です。俺は悪くない、いやユハが悪いということもないけれど。
「レーメ様、その、離してください……」
「嫌だ、迷惑って言われるまで離さない。ユハは、俺のモノだよね?」
「っはい、私はレーメ様のものですが……」
「なら、このままでもいいね?」
小さく蚊の鳴くような声で、はい……という応えが帰ってきた気がするので、抱きしめるのは継続しよう。ついでに、もぞもぞと動いて、俺の太ももでユハの可愛いところをすりすり。ちょっとイヤイヤと逃げようとしたが、ガン無視してゆるく刺激を与え続ける。……昨晩、あまり気持ちよくなかったのだろうか? こんな反応しているということは、昨晩は微妙だったという証左では……? 複雑な気分になりながら、バスローブから覗くユハの白い肌に映える朱色の跡に、重ねるようにそっと口づけた。
ユハの美しい銀髪は、肩につくくらいのミディアムショートだ。この世界、貴族男性はそこまで髪を短くしない。色々と理由はあるけれど、元々は女の子が好きだった前世を持っているから、ベッドに広がる銀色が陽の光でキラキラと煌めていてドキッとする。いや、ユハは男性だしそこを否定するつもりはないけど。ときめく仕草は、前世で言うところの女性らしい仕草由来なところがある。流石に雄々しいところは憧れるけど、ときめき要素にはならないからなぁ。でも、ユハは見た目こそ雄みがあるけれど、可愛い人なので俺の心臓はいつでもときめき撃ち抜かれている。
今考えていた、目の前に広がる銀髪を手に取る。綺麗でなんていうか、ユハが綺麗であろうとしている努力が見えるような、単純に侍従の努力というか。そうっと、口づける。
「ユハは、こうした触れ合いは迷惑? 流石に手を出したなら、今後ユハと閨を共にしないという選択は出来ないけど」
「迷惑などでは……。その、レーメ様の寵を受けているケネス殿に悪いといいますか」
「可笑しなこと言うね? ケニーを愛でると、ユハを可愛がれないのかい?」
「……私にも慈悲をいただけると?」
「慈悲でなく、愛を受け取って欲しいかな」
はっ、と息を呑む音が聞こえた気がした。何となく、ユハとこの辺が意思疎通が出来ていない気がしていた。控えめなんだよな、ユハは。それは、元婚約者であるあの男の扱いが酷かったということと、たぶん男の雌にしては育った体躯への引け目なのだろう。最初は、俺も雄だと思っていたし。でも、やっぱり意識して欲しいというアピールは効いていないことが判明したわけで。ならば、俺としては頑張るしかないよね。
だって、こんな美しい人に愛を乞わずにいられようか。
「年下だし急にリモになったから頼りないだろうけど、いい男に、いい王になろう。その時に、隣にユハも居てくれたら嬉しい」
「お傍に……」
「好きだよ、ユハ。愛しているというほどユハと深く接してはいないけれど、いずれ愛してしまうことになるだろう。その時は俺を受け止めてはくれないか」
「……はい」
何だか微妙な言い回しになってしまったけれど、了承は得られたから今日はそれでいい。10歳にもならぬ幼子である頃より付き合いがあり、ユハより体格も劣る年下の男なぞ恋愛対象にもならんだろう。記憶にないまま犯してしまって、最悪なことこの上ないが、関係に皹が入らなかったのは不幸中の幸いだ。これから、また信頼を築き上げていけばいい。……築けるといいなぁ。
では、俺はユハのことを――この雌のことをどう思っているのか。それは、ユハと婚約することになってからずっと、自分に問いかけている。義兄と婚約者では、身内になるという共通点はあっても意味合いが全く違うから。
「ユハ、俺は忙しさにかまけて、貴方に言葉を尽くしてこなかった。それは申し訳なく思っている」
「そんな、こんな私を受け入れて重用してくださっている。ここに居ていいのだと、そう思えるだけで幸せなのです」
「それ、だけでいいのか……? 俺の気持ちは、迷惑?」
取り敢えず、二人きりできちんと話せそうな今を逃す手はない、と抱きしめたまま謝罪する。ずっと、心のどこかに蟠りがあったのだ。ユハは、十妃になれるのであれば、俺でなくても構わなかったのではないかと。こんな優秀で綺麗な人、誰だって欲しい。ユハとしても王家という王侯貴族の頂点に位置するそれに仲間入りすれば、きっと才能を十全に振るえる。であるならば、俺がユハを可愛がるのは迷惑ではないか、と。
そもそも、忙しくて時間がないと言い訳しているけれど、話す時間は作ろうと思えば作れた。でも、俺は急に王家のリモになることになり、婚約者を増やさなければならないという圧があり、心が追い付いていなかった。そこに、前から仲良くしていた『お兄さん』が『お嫁さん』になってくれるという。どう考えても、弟分が心配だから了承したとしか思えない……。それなりに、キスしたりハグしたりとアピールしてみたけど、ユハは頬こそ染めるがいつも冷静だ。この間、ディープな方をしたら逃げたけど。いいじゃん、婚約者だもの。
ユハが戸惑っている気配がする、何だかオロオロしているようだ。離すもんか、とぎゅうっと力を入れて抱きしめて、足を絡ませる。が、なんか気になる……主にユハのエロ可愛いところが。反応してない……? 朝勃ちか? もちろんそんなの気付いたら、俺のも元気になりますが生理現象です。俺は悪くない、いやユハが悪いということもないけれど。
「レーメ様、その、離してください……」
「嫌だ、迷惑って言われるまで離さない。ユハは、俺のモノだよね?」
「っはい、私はレーメ様のものですが……」
「なら、このままでもいいね?」
小さく蚊の鳴くような声で、はい……という応えが帰ってきた気がするので、抱きしめるのは継続しよう。ついでに、もぞもぞと動いて、俺の太ももでユハの可愛いところをすりすり。ちょっとイヤイヤと逃げようとしたが、ガン無視してゆるく刺激を与え続ける。……昨晩、あまり気持ちよくなかったのだろうか? こんな反応しているということは、昨晩は微妙だったという証左では……? 複雑な気分になりながら、バスローブから覗くユハの白い肌に映える朱色の跡に、重ねるようにそっと口づけた。
ユハの美しい銀髪は、肩につくくらいのミディアムショートだ。この世界、貴族男性はそこまで髪を短くしない。色々と理由はあるけれど、元々は女の子が好きだった前世を持っているから、ベッドに広がる銀色が陽の光でキラキラと煌めていてドキッとする。いや、ユハは男性だしそこを否定するつもりはないけど。ときめく仕草は、前世で言うところの女性らしい仕草由来なところがある。流石に雄々しいところは憧れるけど、ときめき要素にはならないからなぁ。でも、ユハは見た目こそ雄みがあるけれど、可愛い人なので俺の心臓はいつでもときめき撃ち抜かれている。
今考えていた、目の前に広がる銀髪を手に取る。綺麗でなんていうか、ユハが綺麗であろうとしている努力が見えるような、単純に侍従の努力というか。そうっと、口づける。
「ユハは、こうした触れ合いは迷惑? 流石に手を出したなら、今後ユハと閨を共にしないという選択は出来ないけど」
「迷惑などでは……。その、レーメ様の寵を受けているケネス殿に悪いといいますか」
「可笑しなこと言うね? ケニーを愛でると、ユハを可愛がれないのかい?」
「……私にも慈悲をいただけると?」
「慈悲でなく、愛を受け取って欲しいかな」
はっ、と息を呑む音が聞こえた気がした。何となく、ユハとこの辺が意思疎通が出来ていない気がしていた。控えめなんだよな、ユハは。それは、元婚約者であるあの男の扱いが酷かったということと、たぶん男の雌にしては育った体躯への引け目なのだろう。最初は、俺も雄だと思っていたし。でも、やっぱり意識して欲しいというアピールは効いていないことが判明したわけで。ならば、俺としては頑張るしかないよね。
だって、こんな美しい人に愛を乞わずにいられようか。
「年下だし急にリモになったから頼りないだろうけど、いい男に、いい王になろう。その時に、隣にユハも居てくれたら嬉しい」
「お傍に……」
「好きだよ、ユハ。愛しているというほどユハと深く接してはいないけれど、いずれ愛してしまうことになるだろう。その時は俺を受け止めてはくれないか」
「……はい」
何だか微妙な言い回しになってしまったけれど、了承は得られたから今日はそれでいい。10歳にもならぬ幼子である頃より付き合いがあり、ユハより体格も劣る年下の男なぞ恋愛対象にもならんだろう。記憶にないまま犯してしまって、最悪なことこの上ないが、関係に皹が入らなかったのは不幸中の幸いだ。これから、また信頼を築き上げていけばいい。……築けるといいなぁ。
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