愛の女神様はほくそ笑む 〜転生王子と十人の妃〜

ネコ野疾歩

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第1章 転がり落ちてきた玉座への道と、繰り上がり王太子の嫁取り事情

1-31.己の身を焦がす熱に抗えるのか否か

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 俺はわりと、フェミニスト、らしい。元々の男女平等のためのうんたら、という意味ではなく。女に甘い、いい顔をする男であると。女なら雄雌関係なく甘いから、それをフェミニストというのだとか。転じて男なら多少雑に扱っても大丈夫、という同性意識がとても強く、男の雌にはちょっと雑と言われることもある。
 これでも、この世界の雄雌という概念を受け入れて俺なりに昇華した結果の主義なので、あまりとやかく言われても困るのだが。だって女の子って雄だとしても、ふわふわしてて可愛いよ? 凛々しい系の子も、結局女の子なら可愛いと思うよね?

 結局、そんな俺は余程がない限り女の子のパウに甘く、次点で半分お客さんな万葉殿への配慮することになる。となると、どうなるかというと、あのあとは俺の脇にはこの二人が固めて寝ることになりました。一応、パウは女の子だから壁側、その隣に俺。で、万葉殿、ユハ、という順に並んで寝た。多少狭かったのはご愛嬌。流石に、まだ婚姻の話も出ていない、婚約者探しに右往左往している王子の私室なのだ。複数人で寝ることを前提にしていないのだ。ケニー? 俺は重要人物に値しない、と言って王宮の寮に下がりました。逃げたのだ、アイツ。この一件が落ち着いたらお仕置き決定である。もちろん、本人に通告してあるので顔を顰めていた。あれは、お仕置きの内容が想像ついて喜びを隠しているのか、それとも本気で嫌がっているのか。どうであろうと、お仕置き(意味深)するけど。

 それから結局は侍従補佐、という形で万葉殿はケニーと共に行動してもらうことになった。そして、夜は閨の御供係という体でケニーも巻き込んで、引き続き俺のベッドで一緒に寝てもらうことに。一応、パウとユハは帰ることになったので、あの地獄なお泊り会は解散である。やったね!
 で、急ピッチで何やらもう一人の神子様の、お披露目がなされることになったらしい。残念なことに、その準備を手伝えと言われたから、パウリーネも忙しいだろうけど強制召喚して、全員でお披露目の準備の手伝いに奔走している。猫の手も借りたいほど忙しいのだ、パウは猫の手というのもおこがましいほど優秀だけど。

 毎日てんてこまいで、万葉殿が音を上げた。まあ、男子高校生が繁忙期の都庁や県庁に放り込まれるようなものだもんな、そりゃ疲れる。中坊相当の俺は、もう王族としての意地で涼しい顔を保っているだけだ。


「もう、別にお披露目とかいらない……」
「いや、万葉殿がお披露目されないと、守る理由がなくて不自然になる。あと、少しとある国がキナ臭いらしく……。万葉殿には、迷惑をかける」
「なんつーか、王族って言っても、楽じゃないな」
「一応、国の最高権力である行政府の役人のようなものだ。特権を享受する以上は、果たす義務が多くなるのは仕方ない、んだが……」
「レーメ様。嘆いていても現状は変わりませんので、次はこれの確認とサインお願いします」


 あのお泊り会があったせいか、無理やりぶちゅーっとディープなアレをかましたせいか、ユハの俺への遠慮が少しなくなった。愛称で呼んでくれるし。……忙しくて余裕がないだけとは言ってはいけない。

 そんなこんなで迎えた、もう一人の神子のお披露目の夜会。最初の挨拶だけして万葉殿と関係が良好であることをアピールしてから、私室に下がった。まだ14歳で未成年の俺は夜会に積極的に参加すべきでない、という建前の元で立場が明確でないため追及されないようにというのが本音である。
 急に開いた夜会であるからトラブルが多いようで、ケニーは会場の手伝いに回っていた。この夜会が成功すれば万葉殿の護衛もおけるし、安全が増す。失敗する訳にはいかなかった。まあ、侍従としては優秀なケニーはそつのない仕事をするのは分かっていたから、快く送り出した。

 そんなこんなで俺は、油断してしまったのだと思う。何だかんだ上手く事が運んでいて、トラブルも周りの手を借りれば何とかなっていたから。リモになることは公表していないが、上位貴族あたりは暗黙の了解という程度には根回しが済んでいて、あの男第一王子達の処分もだいたい方針が決まったとも聞いていた。人生設計やり直し! って騒いだけれど、結果的にはケネスを日陰者にせずに済み、昔から仲が良かったお兄さんであるユハも少しは救えたと思う。順風満帆だから、問題が起きる可能性について考えていなかったのだ。

 ――本来、俺の立場はとても危うく、死の気配を恐れながら生きてきたというのに。


「っ、ぅあ、はあ、はあ……っ!」
「なっ、レーメ様!? どうされたのですか?」
「あつ、ぃ……侍医を……っく、ぁう」
「っ承知いたしました、……誰か! 秘密裏に宮廷医を呼べ! 気取らせるな!」


 部屋に下がる時は、近衛と一緒に移動していた。ケニーはまだ会場の裏方で働いている。ユハは少なくともあの男と婚約解消したのは公表していたし、俺との婚約が噂されている。だから、もうすぐ成人していて学園を卒業するユハは会場に残って、必要な社交をしてくると聞いていた。この国では15歳で成人扱いだから、16歳の万葉殿は俺と同じ理由が使えず、少し残ってから慣れないので疲れたと言って下がる予定で、まだ会場に居るはずだ。当たり前であるが、デビュタント前の12歳のパウリーネは王宮にすら来ていない。
 つまり、気を許している婚約者や婚約者(仮)は俺の周りに誰も居なかった。幸か不幸かは、判断に苦しむが、たぶんよかったのだと思う。


「……最近、頻発している媚薬に近い症状が出ている患者に似ています。この症状の患者は薬物反応が出ないので、恐らく呪術に近い何かと研究連が言っていました。殿下も、断言できませんが恐らく……」
「っく、あの事件か。はっ、……なら、念の為解毒魔法だけかければ、下がっていい。お前は然るべきタイミングで、両陛下に伝えろ。私は寝室に居るから、夜会が終わる頃に寝支度をするよう、ケネスに伝えろ……っ。分かったら下がれ」
「ですが、殿下の御身おんみが……!」
「構わん、……くっ、今は大切な夜会の成否がかかっている。伝えるタイミングを間違えるな、行け」


 帝国が新たなヤバめの呪術を開発しているという噂は入っていた。アッサールにも探らせていたが、まさか俺にかけるのが本命とか言わないよね? 陰謀に巻き込まれるとか、泣きそう。でも、これ結構キツいから好きな子にかけられるよりはマシかなぁ。好きな子と言えば、ケニーやユハは無事だろうか。ユハは会場に居るのだから特に心配だ……――。

 取り留めもないことを考えながら、先ほどまで俺を診察していた宮廷医や心配してくれた護衛を追い払った静かな私室の寝所で、ぼんやり熱に侵されてた。
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