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第1章 転がり落ちてきた玉座への道と、繰り上がり王太子の嫁取り事情

1-28.複数プレイで使い物になるのか否か

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 閨では複数プレイが基本、と言われて久々にカルチャーショックならぬ異世界ショックを受けた転生男です。どう受け止めていいか分かりません。いや、知ってた。母上はあまり父上と過ごさないから、単独で一緒に過ごしている。が、王宮という場所柄、そういう噂は色々と入ってくるのだ。それぞれの、側妃の情夫の話も含めてな!
 ちなみに俺の母上は、父上との時間はずっと王妃陛下のことを語らせて、ご満悦に浸っているはず。そして情夫も持たないので、王妃陛下に与えられた魔術研究をして本当に日がな一日過ごして、たまに王妃陛下にお茶でもと言われ、ほいほい喜び勇んでお呼ばれする。そんな側妃をやっている人なので、複数プレイについては噂という不確かな情報しかないのだ。ちなみに、王妃陛下と一緒に閨に呼ばれたいと希望しても王妃陛下が是としない、という愚痴を母上本人から聞いたことはある。王妃陛下は一般感覚を持つ御方だから、さもありなん。

 が、それより気にすべきことがひとつある。ちょっと、話の流れが今日初対面の人の前で適切な話題だと思えない……。


「その、万葉殿。話の方向が、どんどん猥談になりつつあるけど、不快じゃないかい?」
「……この世界で生きていかなきゃなら、いずれ知らなきゃならないことだから。むしろ、今知っておきたい」
「……ねぇ、知りたいって、複数プレイがどうのこうのって話で非常にいたたまれないんだけど?」
「僕のことは置物だと思って、本物の婚約者達と話してくれ。気にしなくていいよ」


 ほんのり目元を赤く染めながら、万葉殿は視線を逸らしながら気にするなと言う。気にしなくていい、って気にするよ! 心の中でぎゃあぎゃあと騒ぎながら、どうしたものかと途方に暮れた。

 ひとつ深く呼吸をして、話題を変えようとした。が、不安そうに俺の袖を引っ張るパウに向き直るのを優先することに。何でパウはそんなに不安そうなんだろうね? こんな猥談で何を思ったんだ? なんだかともすれば死んだ魚の目のようになりそうなほど、心が萎びていくのを感じる。


「レーメ様……。お子様な身体のわたくしでは、物足りませんか? 胸なら成長期ですわ、もう少し待って欲しいのです」
「いやパウは今でも十分魅力的だから。物足りないとかそういうのじゃなくてね。……例え皆が割り切ってても、好きな子の前で他の好きな子に手を出すのは、心苦しくてあまりやりたいと思えないだけなんだ。ワガママなこと言って悪い」
「そう、ですの……? でもわたくし、別にレーメ様がケネス様を可愛がっていても、羨ましいだけですけれど。そんなこと言っていると、婚姻後が大変になりますから、少し考えた方がよろしいと思いますの」
「リンドフォーシュ嬢の言う通り、婚姻後の殿下の夜のスケジュールが、毎日詰まることになりますよ。慣れです、少しずつ練習することもご検討ください」


 否定はしたので、パウが魅力的でないなんてあり得ないことは言えた。だが、大切ナニカは捨ててしまったような気がしてならないのは、気のせいだろうか。
 そして何故か、複数プレイを婚約者に推奨されて説得されている不思議。なんでぇっ!? 確かにさ、10人もお嫁さんいたら大変だよ? 性欲がいつまで続くかわからないし、正直今の王家は子だくさんな方だし、父上は頑張っているのだと思うけど。俺にも同じことを求めないで欲しいな?!

 微妙な顔をする俺に、何を思ったのか。思いっ切り俺の腕にくっついたパウが、愉しげに提案してきた。……嫌な予感がするから辞めて欲しい。


「なら、最初はケネス様を愛でている姿を、わたくし達が見ていればいいのですわ! ケネス様ならば、普段から閨を共にしているから視線さえ気にしなければいつも通りでしてよ」
「なっ……!?」
「パウ、そんな簡単に言われると流石に傷付くよ……」
「わたくしとしては、早くレーメ様に慣れて頂きたいですわ! でないと、いつまで経ってもレーメ様と共に過ごせないではありませんか」
「……落ち着いたら、二人きりのお茶会もセッティングするから許しておくれ」


 どうすればこの状況を回避できるのであろうか? よく分からないが、パウにハメられた気がするし、ユハは控えめに微笑むばかりで助けにならない。いや、ユハは今後俺のスケジュールの調整をケニーと共にしていくことになるだろうから、俺が無理しないように調整の幅は広げたいはずだ。つまり、練習しろ、ということなのだろう。実際、今夜はみなでここで過ごすことになるから、建前を事実にしてしまっても問題ないと思っているのかもしれない。……ユハも見たいからじゃないよな?

 全部、あの男第一王子のせいだ……! と怒りをあらぬ方向に燃やしている俺を余所に、パウはにっこり笑って最後通牒を言い渡した。


「嫌です、わたくしは艶やかなレーメ様が見とうございます。ズハ様、少しばかり騒がしくなってもお許しくださる?」
「……構わないけど。本当に、性もオープンなんだな」
「いえ、そもそも俺はそんな大それたことは出来な……っひぃ!?」


 さっさと、万葉殿に許可を得てしまっていて、逃げ場がない。万葉殿はパウの勢いに負けただけだと思いたい。……だよな?

 そんな諦めモードの俺に反して、ケニーはまだ逃げる気であるらしい。その姿に、プッツンときてしまった。確かに、俺も逃げ腰ではあった。だが、俺との触れ合いが大それたこと、だと? あんなにも怒られないギリギリを見計らいながら呼び出しては、あんなに丁寧に可愛がっているはずなのに、俺からの愛は大それたことであると言う。そんなに、俺からの愛は、受け入れられないモノなのだろうか。確かに俺は、日陰者にしてでも手放そうとしなかった不誠実な男だ。ただ、そうしてでもケニーが欲しかったのに、それは有り得ないことであると?
 ――受け入れないというならば、受け入れるように愛し尽くすまでだ。この雌は俺のモノ、逃げることも許されないのだと分からせなければならない。

 後から考えれば思考がイっちゃってるし、目は据わっていたのだと思う。が、この時の俺は気付かずに、感情の赴くままにケニーに命じた。


「ケニー、いつもの準備してこい。そうだな、初回に着ていたアレと同系統のモノを、ここで着替えろ。出来るな?」
「……承知、いたしました」
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