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第1章 転がり落ちてきた玉座への道と、繰り上がり王太子の嫁取り事情
1-27.世界が変われば『自由恋愛』の意味も変わる
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俺とケニーは、産まれてからの仲だ。乳兄弟だから、当たり前であるが。同じ年齢で、誕生月も一緒だから、本当に同じような成長を重ねてきた。だから、経験もだいたい同じである訳で。
万葉殿もそれを知っている訳ではないが、乳兄弟と聞けば本物の兄弟のように育ったと思うだろう。そして、そんな俺達を見ることは、万葉殿と双子の弟である神子殿との関係についても思うことがあるのかもしれない。
のっそりと起き上がり、乱れて顔にかかった髪を適当に払う。ケニーが慌てて髪を綺麗に整えようと手を伸ばしてきたのを好きにさせて、万葉殿の様子を伺う。口調はもう、色々とバレたから気にしなくていいか。とにかく軽く聞こえるように、簡単にケニーとの関係を言語化しようと試みることにした。
「俺とケニーは、親友のような悪友のような、なんていうか腐れ縁なんだよね。それが、愛しい人に変わったから面映ゆいけど」
「……兄弟に恋する、みたいな感じか。どこで、違うと思った?」
「うーん? ケニーが、居なくなった時だね。ずっと一緒に居たのに、居なくなったから。俺さ、ケニーの姉とも交流あったけど、彼女が俺の下から去っても何も思わなかったけど、ケニーが居なくなった時は発狂するかと思った」
「いや、発狂してたって母上から聞いてるからな。俺が戻るまで荒れてて大変だった、って聞いたぞ」
「なぁんで、リリーはバラすかな。隠し事できないねぇ」
ケニーまで宿下がりしたのかと思って、あの時は本当に焦ったのだ。リリーに聞いても答えてくれないし、かといって宿下がりするにしては挨拶に来ないのも変だし。不妊の魔術を受けたからこれからも一緒です、って聞いた時は安堵と怒りで可笑しくなるかと思ったのだ。
あの時のことを思い出して、微妙な顔をしていると、いつの間にかパウまで会話に参戦してきた。どうやら、状況説明が終わったらしい。
「やはり、昔からレーメ様とケネス様は相思相愛でしたのね! わたくし、ケネス様の分まで受け入れ準備しておりましたが、大正解だったということですわ。まあもう、それは無駄になりましたけれど」
「ほら、ケニー。やっぱりパウも、俺がケニーを連れてくつもりだったって気付いてたじゃん。交渉してなかったのに」
「レーメ様がわたくしを愛してくださるのなら、レーメ様が他に愛するケネス様も受け入れるのが道理ですもの。不謹慎ですけれど、正式に娶れるようになったようで、おめでたいことにございますわね」
「……有り難いはずなのに、なんか腑に落ちない」
微妙な顔になったケニーをよそに、パウはベッドの中央に胡坐をかいて座る俺の傍までいそいそと近寄ってから、万葉殿に向き直った。どうでもいいけど、デイドレスを着たパウはそれなりに身動きしづらいはずなのに、実に軽やかにベッドに乗りあがったのだが。実は常習犯か? いや、別に人に見せる姿でもないし、構わないけれど。
……あれ、もしかしてこの状態で挨拶するの?
急に美少女に視線を向けられて、ベッドの端に腰掛けて俺の方を向いていた万葉殿はあからさまに動揺していた。が、それを気にすることはない強メンタルのパウである。
「はしたない姿で失礼いたしますわ、もう一人の神子様。わたくしレーメ様の婚約者のパウリーネ・ルツォ・リンドフォーシュと申しますの。お気軽に、パウリーネとお呼びくださいませ」
「……よろしく、パウリーネさん」
「パウは、俺の2つ年下の12歳。本来なら、こんなところに案内する年齢じゃないんだけどなぁ」
「よいではありませんか。合法的にレーメ様と夜を過ごせるなど、わたくし幸せにございます」
「言い方が悪い。健全に安全に過ごそうね、絶対に」
紛らわしい言い方をするパウの額をつん、と人差し指でつついた。だけどパウは堪えた様子はないので、確信犯だと思う。というか、公爵家の嫡子が純粋無垢で務まるはずないからね。その辺は、ちゃんと理解しているはず。
万葉殿ともきちんと挨拶したようだし、今夜の寝床について検討を始めることにしよう。……なんか、ケニーが逃げそうな気もするけど、絶対に逃がさん。道連れは確定だ。
が、そんな俺をよそにパウとユハが疑問を呈してくる。
「というか、少しばかり不思議なのですけれど。レーメ様はまだ14歳であらせられるのに、何故12歳のわたくしを閨事から遠ざけようとするのですか? わたくしもリモだった者ですのよ、きちんと閨教育も受けております」
「確かに、異母兄である第一王子殿下を見習えとは言いませんが……。閨事の練習を殿下どころかリンドフォーシュ嬢くらいの年齢であったも始めていて不思議ではありません。暗黙の了解といいますか」
「ケネス様とは、閨の御供として寝所にお呼びしていると伺いましたわ。なら、別に今日も我慢なさらなくてもよろしいのに」
「……リモとしての閨教育は、まだ始まっていないんだ。あまり意地悪しないでおくれ」
「レーメ様は、何を困っていらっしゃいますの? 別にわたくしに伽を命じても何ら問題ありませんし、いつも通りケネス様をご指名なさっても、スヴェンデン様にお願いしても、何も躊躇する必要はないのです。それとも、他に問題が?」
うっ、と言葉を詰まらせた。もちろん王家の、学園卒業するまでは最後まで致しべからずというルールが、頭の端にある。だが、いくらこの世界に染まったとはいえ、流石に3Pや4Pといった複数プレイは、ちょっと特殊過ぎて……。パウの下へ嫁ぐことになったら、他の男と一緒にパウを囲まねばならない、という覚悟はした。が、俺が雌に囲まれるハーレム状態は覚悟してなかった。
ついでに言うなら、似た感覚を持っているであろう、万葉殿がいる前でそれを喜ぶ真似もあまりしたくない妙な矜持が邪魔するというか……。
パウ達と俺で、お互いにかみ合ってない状態になって、見てられなくなったのかケニーが口を挟んでくる。
「そもそも、閨の御供って複数が基本だからな。俺とレーメ様で一対一が続いた方が、珍しい。一人に執着するのはご法度だからな、レーメ様が奥手だから見逃されていただけだ。そろそろ、一緒に誰を呼ぶか確認するよう爺にも言われていた」
「ということは、遅かれ早かれ、この状況に近いことになっていた……?」
頷く3人に、眩暈がする勢いの衝撃が襲った。視界の端で、ドン引いている万葉殿が見える。だよな、複数プレイが一般的とか信じたくないよな。……練習って、複数で集まることによって緊張して勃たなくなる事故を防ぐためのもの、とか言わないよね? というか、なんでリアル酒池肉林みたいな話になるんだ……。
この世界の自由恋愛の風潮、一度『自由恋愛』の意味を辞書で引いてこいって思います。絶対、意味が違う。
万葉殿もそれを知っている訳ではないが、乳兄弟と聞けば本物の兄弟のように育ったと思うだろう。そして、そんな俺達を見ることは、万葉殿と双子の弟である神子殿との関係についても思うことがあるのかもしれない。
のっそりと起き上がり、乱れて顔にかかった髪を適当に払う。ケニーが慌てて髪を綺麗に整えようと手を伸ばしてきたのを好きにさせて、万葉殿の様子を伺う。口調はもう、色々とバレたから気にしなくていいか。とにかく軽く聞こえるように、簡単にケニーとの関係を言語化しようと試みることにした。
「俺とケニーは、親友のような悪友のような、なんていうか腐れ縁なんだよね。それが、愛しい人に変わったから面映ゆいけど」
「……兄弟に恋する、みたいな感じか。どこで、違うと思った?」
「うーん? ケニーが、居なくなった時だね。ずっと一緒に居たのに、居なくなったから。俺さ、ケニーの姉とも交流あったけど、彼女が俺の下から去っても何も思わなかったけど、ケニーが居なくなった時は発狂するかと思った」
「いや、発狂してたって母上から聞いてるからな。俺が戻るまで荒れてて大変だった、って聞いたぞ」
「なぁんで、リリーはバラすかな。隠し事できないねぇ」
ケニーまで宿下がりしたのかと思って、あの時は本当に焦ったのだ。リリーに聞いても答えてくれないし、かといって宿下がりするにしては挨拶に来ないのも変だし。不妊の魔術を受けたからこれからも一緒です、って聞いた時は安堵と怒りで可笑しくなるかと思ったのだ。
あの時のことを思い出して、微妙な顔をしていると、いつの間にかパウまで会話に参戦してきた。どうやら、状況説明が終わったらしい。
「やはり、昔からレーメ様とケネス様は相思相愛でしたのね! わたくし、ケネス様の分まで受け入れ準備しておりましたが、大正解だったということですわ。まあもう、それは無駄になりましたけれど」
「ほら、ケニー。やっぱりパウも、俺がケニーを連れてくつもりだったって気付いてたじゃん。交渉してなかったのに」
「レーメ様がわたくしを愛してくださるのなら、レーメ様が他に愛するケネス様も受け入れるのが道理ですもの。不謹慎ですけれど、正式に娶れるようになったようで、おめでたいことにございますわね」
「……有り難いはずなのに、なんか腑に落ちない」
微妙な顔になったケニーをよそに、パウはベッドの中央に胡坐をかいて座る俺の傍までいそいそと近寄ってから、万葉殿に向き直った。どうでもいいけど、デイドレスを着たパウはそれなりに身動きしづらいはずなのに、実に軽やかにベッドに乗りあがったのだが。実は常習犯か? いや、別に人に見せる姿でもないし、構わないけれど。
……あれ、もしかしてこの状態で挨拶するの?
急に美少女に視線を向けられて、ベッドの端に腰掛けて俺の方を向いていた万葉殿はあからさまに動揺していた。が、それを気にすることはない強メンタルのパウである。
「はしたない姿で失礼いたしますわ、もう一人の神子様。わたくしレーメ様の婚約者のパウリーネ・ルツォ・リンドフォーシュと申しますの。お気軽に、パウリーネとお呼びくださいませ」
「……よろしく、パウリーネさん」
「パウは、俺の2つ年下の12歳。本来なら、こんなところに案内する年齢じゃないんだけどなぁ」
「よいではありませんか。合法的にレーメ様と夜を過ごせるなど、わたくし幸せにございます」
「言い方が悪い。健全に安全に過ごそうね、絶対に」
紛らわしい言い方をするパウの額をつん、と人差し指でつついた。だけどパウは堪えた様子はないので、確信犯だと思う。というか、公爵家の嫡子が純粋無垢で務まるはずないからね。その辺は、ちゃんと理解しているはず。
万葉殿ともきちんと挨拶したようだし、今夜の寝床について検討を始めることにしよう。……なんか、ケニーが逃げそうな気もするけど、絶対に逃がさん。道連れは確定だ。
が、そんな俺をよそにパウとユハが疑問を呈してくる。
「というか、少しばかり不思議なのですけれど。レーメ様はまだ14歳であらせられるのに、何故12歳のわたくしを閨事から遠ざけようとするのですか? わたくしもリモだった者ですのよ、きちんと閨教育も受けております」
「確かに、異母兄である第一王子殿下を見習えとは言いませんが……。閨事の練習を殿下どころかリンドフォーシュ嬢くらいの年齢であったも始めていて不思議ではありません。暗黙の了解といいますか」
「ケネス様とは、閨の御供として寝所にお呼びしていると伺いましたわ。なら、別に今日も我慢なさらなくてもよろしいのに」
「……リモとしての閨教育は、まだ始まっていないんだ。あまり意地悪しないでおくれ」
「レーメ様は、何を困っていらっしゃいますの? 別にわたくしに伽を命じても何ら問題ありませんし、いつも通りケネス様をご指名なさっても、スヴェンデン様にお願いしても、何も躊躇する必要はないのです。それとも、他に問題が?」
うっ、と言葉を詰まらせた。もちろん王家の、学園卒業するまでは最後まで致しべからずというルールが、頭の端にある。だが、いくらこの世界に染まったとはいえ、流石に3Pや4Pといった複数プレイは、ちょっと特殊過ぎて……。パウの下へ嫁ぐことになったら、他の男と一緒にパウを囲まねばならない、という覚悟はした。が、俺が雌に囲まれるハーレム状態は覚悟してなかった。
ついでに言うなら、似た感覚を持っているであろう、万葉殿がいる前でそれを喜ぶ真似もあまりしたくない妙な矜持が邪魔するというか……。
パウ達と俺で、お互いにかみ合ってない状態になって、見てられなくなったのかケニーが口を挟んでくる。
「そもそも、閨の御供って複数が基本だからな。俺とレーメ様で一対一が続いた方が、珍しい。一人に執着するのはご法度だからな、レーメ様が奥手だから見逃されていただけだ。そろそろ、一緒に誰を呼ぶか確認するよう爺にも言われていた」
「ということは、遅かれ早かれ、この状況に近いことになっていた……?」
頷く3人に、眩暈がする勢いの衝撃が襲った。視界の端で、ドン引いている万葉殿が見える。だよな、複数プレイが一般的とか信じたくないよな。……練習って、複数で集まることによって緊張して勃たなくなる事故を防ぐためのもの、とか言わないよね? というか、なんでリアル酒池肉林みたいな話になるんだ……。
この世界の自由恋愛の風潮、一度『自由恋愛』の意味を辞書で引いてこいって思います。絶対、意味が違う。
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