愛の女神様はほくそ笑む 〜転生王子と十人の妃〜

ネコ野疾歩

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第1章 転がり落ちてきた玉座への道と、繰り上がり王太子の嫁取り事情

1-19.傷付いた君を慰める存在は俺だけでいい

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 両陛下への許可申請は、そう簡単に下りる訳でもあるまい。ひとまずケネスが帰ってくるまで身動きがとれないのだから、それまで長い休憩としてもいいだろう。
 ちゅっ、ちゅっと軽いキスをたくさん贈っていく。最初に、唇にキスしただけでカチンコチンに固まってしまったので、それ以降は唇以外を――額に、頬に、瞼に、と好き放題キスしていく。ユーハン殿は何故かちょっぴりはぁはぁと息が浅くなっているようだが、マウストゥマウスはしてないんだけどな。頬から徐々に耳の方へ口づけを移していき、耳を浅く食んでから囁く。


「ユーハン殿は、俺が愛称をつけても困らないか?」
「っぁ、こ、まりませ、ん……っぅう」
「なら、今からユハって呼んでもいい? ユハって響き、可愛いでしょう。可憐で美しいあなたにピッタリだと思ったんだ」
「か、わいく、な……っんぁああ、や、ゃめ、ぇえっ」
「ダメだよ、ユハは可愛い。俺が言うこと、否定するの?」


 自分に自信のないユーハン殿――改めユハは、自分が可愛いとは微塵も思ってないようだ。でも俺は知っている、ユハはモテる。雄にも、だ。むしろ雄からすると接すれば接するほど雌にしか見えないのだろう。ユハが無事だったのは、偏に「第一王子殿下の婚約者」だったからだ。ユハの美しい心根が荒らされる前に、捕まえることが出来てよかった。そうでないと、この状況すら許されない。

 自分を卑下したら耳を食み、ちゃんと返事をしたら耳朶をねぶる。我ながら執務室ですることじゃないけど、ユハの声以外は健全です。傍から見たら、俺が囁いているのをユハが過剰反応しているようにしか見えないだろう。いや、近しい者にはバレバレだろうけど。

 ちょっぴり腕でぐいぐいと押されたので、素直に離れる。やり過ぎて嫌われたら困る。いくらケニーとエロいことをしてても、心はヘタレ童貞のままです。身体も童貞のままだけどな!


「戯れはよしてくださいませ。閨の御供のことも聞き及んでおります。足りなければ、他の者もご用意しますか?」


 ……全然、俺の愛が伝わってない。やっぱり浮気野郎! ってなるのだろうか? いやでも、十妃を娶るのは決定事項だからそれを言われると少し困る……。


「確かに、ユハの指摘通りだ。そして、忙しいであろうとユハへの連絡が手紙のみで、会いに行かなかったのは浅慮だったかもしれない。……もう、私のことを嫌いになっただろうか? それとも、白い結婚が望みであったのだろうか?」
「っいえ、私が殿下を嫌うなどそんなことは……。その、ケネス殿が寵愛を受けているなら、私は不要だと……」
「私は、ユハを愛したいと伝えたはずだが? 第一、この身を差し出すと健気なことを言ってくれたのはユハではないか。やっとあの男との縁がなくなって、俺のモノにできるって思ったのに……」
「……本当に、あ、ああ愛して、くださるのですか?」
「何故愛さずにいられると思う。ユハが俺の手元に堕ちてくるのを待っていたのに」


 再び抱き寄せて、ユハは俺に愛される妃だよ、と最後に囁くと耳への蹂躙を再開した。
 いや、本当に待っていたんだ。だって、下手にユハに手を出して色気が出たらどうする。ケニーだって初めて閨の御供として一晩共に過ごし、回数を重ねていくごとにふとした時の妖艶な表情とか、色々エロくヤバくなっているんだぞ! ユハにも同じ現象が起きて見ろ、性処理にちょうどいいってあの男が手を出したらどうしてくれるんだ! もうユハは俺のモノなのだ、そんな暴挙は絶対許さない。

 艶やかな声をあげて、身をよじらせるユハを捕まえたまま、ひたすら耳朶だけ舐める食べるを心ゆくまで愉しむ。しかも片耳だけ、反対側がうずいていたら可愛いね? ふぅ、と息を吹きかけると俺の涎でびしゃびしゃになっているのもあって、とてもびくびくと身体を跳ねさせている。ちらりと視線をやったユハのスラックスは見るからに、勃ちあがっていて苦しそうだ。流石に執務室なんて場所で触らないけど。


「でん、かぁ……。ここ、やだぁ……」
「んー? 確かに護衛とはいえ他の人にこんなユハを見せるのは嫌だね。でも、次に他の閨の御供をって言い出したら、またお仕置きするから。どうしても気になるなら、ユハが寝所にきて俺を慰めて」
「するぅ、す、るからぁっ……うぅ……」
「泣いちゃって可愛いね、ユハ。ここが私室ならベッドに誘ってたよ。婚約者なら、途中まではしても怒られないんだろう?」
「ぅん、ほかのこ、よばれてた……」


 ユハとしても、執務室という禁欲的な場所で乱されて不本意のようだ。え? 耳が嫌だって言ったんじゃないのかって? 知りません、うちのユハはそんなこと言わないし言わせない。だって、耳だけでこんなびくびくしちゃってるの、可愛いもの。またやるしかないよね?
 ただ、恥ずかしかったのかちょっぴり泣いちゃったけど、それを可愛いとか鬼畜な発言したけど。それ以上に、私室に連れ込む約束を取り付けようと色々言っていたら、他の子は呼ばれていた、という言葉とユハの名にも映していないような瞳。これは頂けない、言っている意味はわかるがそれに付随するユハの心の傷まではわからない。本当に、ろくなことしないな! あの男!

 異母兄上が、他の婚約者を食い物にする中、ユハだけ呼ばれなかった事実が彼の心の中を蝕んでいるのだろう。であれば、その心を掬いとる役目は俺がいい。


「ユハは俺に呼ばれたい? ユハが選んでいいよ、俺が18歳になるまで4年間耐え忍ぶか。今から中途半端に手を出されて悶々とするか」
「ぅっ、……よばれないの、やだ……」
「いいよ。ケネスがだけど、雌の部分が疼いて仕方ない、ってよく泣いちゃうんだ。ユハも、ここが疼いちゃうかもね? でも一度手を出したら止まらないから、一緒に我慢しようね」
「は、ぁ……んぅ、がまん、するぅ……」
「いい子のお返事だ。いい子にはご褒美あげよう」


 ユハの腹を触り、軽く押しながら言ってやる。いや、ケネスの名を出すのも卑怯かと思ったけど、挿れられないツラさを俺が味わうのと同じように、欲しいモノが挿ってこないツラさもあるようなので。一応伝えておかないとフェアじゃないし。
 そして、ご褒美と称して、バードキスを送った。いや、ディープキスしたらとまらないし、ユハが目を回しちゃいそうなので。それに、これだけで顔が涙で濡れているけれど綺麗な微笑みを見せてくれたから、これでいいのだと思いたい。

 そっと抱き寄せる腕に力を込めて、俺の胸に倒れ込ませる。ケネスが戻ってくるまで、そのまま寄り添っていた。
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