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第1章 転がり落ちてきた玉座への道と、繰り上がり王太子の嫁取り事情
ケネス01.いつも傍に居させてくれた俺の「王子様」
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生まれた時から、俺の傍には王子様がいる。いや、確かにレーメ様はこの国の王子殿下なんだけど、俺自身にとっても絵本に出て来るような素敵な王子様なのだ。
いつもレーメ様の乳母である母上がレーメ様のお世話をしていて、その手伝いをしているから知っている。レーメ様の御髪はとてもサラサラで、綺麗な薄紫色だ。ちょうど、昔にレーメ様と一緒に庭園で教わった、ベルフラワーという花の色に近かった。いや、もう少しレーメ様の方が薄かったかもしれないけれど、そのくらいの色合いでとても綺麗なのだ。早く、母上からレーメ様の御髪を整える役目を譲ってもらえるよう、鋭意努力中である。母上や3つ上の姉の髪を弄らせてもらって、練習もしている。姉はあきれ顔だったけど、母上は笑いながらよく髪を弄らせてくれた。
物心つく前から一緒に育てられてきたから、雄雌の区別がハッキリつく前まではレーメ様と一緒に風呂に放り込まれたりと、一緒に居ることが多かった。だから、レーメ様の身体は俺とは根本的に違うな、と思わせる神々しい肢体をしているのも知っている。やっぱり一緒にお昼寝として一緒のベッドに放り込まれるから、レーメ様にくっつくとドキドキするのも、こっそり胸元に顔を埋めると抱きしめてくれることも知っている。
俺は雌だろうと判断されてから、レーメ様と少し距離を置くよう教育された。でも、レーメ様が変わらず俺をお傍に置いてくださるから、多少の触れ合いが減っただけだった。だから、レーメ様の瞳が角度によって赤紫色に見えたり青紫色に見えたり、不思議な色合いである瞳を変わらず見ることが出来たし観賞できるほど近くに居させてもらえた。ちなみに、この不思議な瞳は王家の直系だけが持つ色合いらしい。
俺の世界は、クレーメンス様という王子様で全て構成されていた。だから、この時の姉の言うことが理解できなかった。
「セドに甘んじているなんて、有り得ない! 臣籍降下するってばかり言っているし、おかげで私は嫁ぎ先を見つけねばならないわ!」
「……確かに、レーメ様のお傍は離れなければならないかもしれないけど。姉上は帰ってこないの?」
「むしろ、帰るのよ! 将来が怪しいセドなんて、こっちが見切りをつけてやるの!」
この時、俺とレーメ様は10歳、姉は13歳になった頃だった。レーメ様は、リモにもなれる才覚を示したが、色々と検討された結果、セドと名乗ることになった。つまり、王家のセドということは雄であるということだ。高貴なレーメ様は、みだりに身体を重ねることは許されない。俺も姉も雌であるから、傍に侍ることは許されなくなった。
だが、ひとつだけ一緒に居る方法がある。リスクは大きいけれど、不妊の魔術という避妊去勢を受け入れれば、変わらずレーメ様の傍に居れるのだ。それを聞いた時、一も二もなく俺はそちらに飛びついた。だが、姉はそうではないようであった。そうして、姉はさっさと宿下がり――乳姉弟という立場を降りた。
レーメ様の傍に居る、それ以上の幸せがあるのかと、とても不思議だった。
それから俺はレーメ様の傍を少し離れて、侍従となる本格的な教育を受けた。そして、大丈夫と判断されてから、不妊の魔術を受けて、レーメ様の元へ戻った。今度は乳兄弟としてではなく、侍従として。
レーメ様は勝手にお傍を離れたのを怒っているのか、しばらく私語を許されることはなかった。ちょっとショックだったけど、レーメ様の傍に居てお世話できるのは幸せだ。だから、俺は黙ってせっせとレーメ様に尽くすべく邁進していた。
結局、レーメ様の乳母である母上の取り成しで、昔のように話せるようになって。何故かレーメ様がリモになって、俺を第十側妃に選んでいただけて、閨の御供にも呼んでいただけて。レーメ様のお傍に居る以上の幸せを享受している。まさに、この世の春を謳歌していると言ってもいい。まあ、レーメ様は巻き込まれて可哀想だとは思うけど。人生諦めが肝心といつも言っているのはレーメ様なのだから、ブーメラン? になっていて笑いを禁じ得ないのは許して欲しい。
「――やぁっと、閨の御供に呼んでいただけたのね。でも、最後まではしてないでしょうね? あなたも魔術施してあるけど、メシー様のためにも雌の中はまだ知らない方が良いでしょう」
「その前に、爺が俺に盛っただろ? レーメ様がおかしい、って途中で手を止めてくださったもん」
「うーん、良いことなんだけれど何だかメシー様って、自制心がすごいわねぇ。いつか爆発しないか心配なのだけど」
「そんなこと言って、レーメ様が爆発しているの見たことない」
昨日の閨の御供に呼ばれたことを、母上が揶揄ってくるが、そもそも色々とやらかしたのは爺と母上が手を組んだからだろうに。ジト目を向けるが、母上が堪えた様子はない。
レーメ様は、昔から、とても穏やかだ。こっそり、前世の記憶があるからなのだと聞いた。童貞だとも聞かされている、初めてだから誤解するな期待するな、と。
そこでふと、思い出したことを母上に告げる。
「なぁ、閨の御供として何回までなら、俺を呼んでも文句言われないか爺か母上に聞いとけ、って言われたんだけど。俺、何て答えればいい? 何回も呼ばれて、最後までは我慢しなきゃなのか?」
「……相変わらず、メシー様は慎重というか。そうねぇ、週に2、3度ならまあ第一王子殿下より少なめの回数だから目立たないのではないかしら?」
「……そんなに呼ばれる可能性があるの、俺。昨日も媚薬入りとはいえ、ツラかったんだけど。母上も雌ならわかるだろ?」
「うふふ、愛されてるのだから、そのくらい頑張ることね~」
母上はこのまま立ち去って行ったが、現状のまま――いやそれよりも悪化するであろう状況を思って俺はガックリと項垂れた。
昨日、思った以上の醜態を晒した。めっちゃレーメ様の前でイキまくる……淫乱みたいな、そんなダメな姿を見せてしまったのだ。それに、結局は後ろを使わなかったから、普段そこも使って自慰する俺としてはとても疼いてツラかったのだ。というか、触られてもいいようにきっちり洗浄して解してからレーメ様のところに行ったのに!
今でもまだ疼く感じがあるので、たぶん今日の業務を終えたら自慰するのは確実である。……レーメ様にもっと触って欲しかったなぁ。
ただ、レーメ様にまたお呼び頂ける、触ってもらえると思うともっと励もうと思える。くるり、と向かうべき場――レーメ様の下へ戻るべく足を向けた。
いつもレーメ様の乳母である母上がレーメ様のお世話をしていて、その手伝いをしているから知っている。レーメ様の御髪はとてもサラサラで、綺麗な薄紫色だ。ちょうど、昔にレーメ様と一緒に庭園で教わった、ベルフラワーという花の色に近かった。いや、もう少しレーメ様の方が薄かったかもしれないけれど、そのくらいの色合いでとても綺麗なのだ。早く、母上からレーメ様の御髪を整える役目を譲ってもらえるよう、鋭意努力中である。母上や3つ上の姉の髪を弄らせてもらって、練習もしている。姉はあきれ顔だったけど、母上は笑いながらよく髪を弄らせてくれた。
物心つく前から一緒に育てられてきたから、雄雌の区別がハッキリつく前まではレーメ様と一緒に風呂に放り込まれたりと、一緒に居ることが多かった。だから、レーメ様の身体は俺とは根本的に違うな、と思わせる神々しい肢体をしているのも知っている。やっぱり一緒にお昼寝として一緒のベッドに放り込まれるから、レーメ様にくっつくとドキドキするのも、こっそり胸元に顔を埋めると抱きしめてくれることも知っている。
俺は雌だろうと判断されてから、レーメ様と少し距離を置くよう教育された。でも、レーメ様が変わらず俺をお傍に置いてくださるから、多少の触れ合いが減っただけだった。だから、レーメ様の瞳が角度によって赤紫色に見えたり青紫色に見えたり、不思議な色合いである瞳を変わらず見ることが出来たし観賞できるほど近くに居させてもらえた。ちなみに、この不思議な瞳は王家の直系だけが持つ色合いらしい。
俺の世界は、クレーメンス様という王子様で全て構成されていた。だから、この時の姉の言うことが理解できなかった。
「セドに甘んじているなんて、有り得ない! 臣籍降下するってばかり言っているし、おかげで私は嫁ぎ先を見つけねばならないわ!」
「……確かに、レーメ様のお傍は離れなければならないかもしれないけど。姉上は帰ってこないの?」
「むしろ、帰るのよ! 将来が怪しいセドなんて、こっちが見切りをつけてやるの!」
この時、俺とレーメ様は10歳、姉は13歳になった頃だった。レーメ様は、リモにもなれる才覚を示したが、色々と検討された結果、セドと名乗ることになった。つまり、王家のセドということは雄であるということだ。高貴なレーメ様は、みだりに身体を重ねることは許されない。俺も姉も雌であるから、傍に侍ることは許されなくなった。
だが、ひとつだけ一緒に居る方法がある。リスクは大きいけれど、不妊の魔術という避妊去勢を受け入れれば、変わらずレーメ様の傍に居れるのだ。それを聞いた時、一も二もなく俺はそちらに飛びついた。だが、姉はそうではないようであった。そうして、姉はさっさと宿下がり――乳姉弟という立場を降りた。
レーメ様の傍に居る、それ以上の幸せがあるのかと、とても不思議だった。
それから俺はレーメ様の傍を少し離れて、侍従となる本格的な教育を受けた。そして、大丈夫と判断されてから、不妊の魔術を受けて、レーメ様の元へ戻った。今度は乳兄弟としてではなく、侍従として。
レーメ様は勝手にお傍を離れたのを怒っているのか、しばらく私語を許されることはなかった。ちょっとショックだったけど、レーメ様の傍に居てお世話できるのは幸せだ。だから、俺は黙ってせっせとレーメ様に尽くすべく邁進していた。
結局、レーメ様の乳母である母上の取り成しで、昔のように話せるようになって。何故かレーメ様がリモになって、俺を第十側妃に選んでいただけて、閨の御供にも呼んでいただけて。レーメ様のお傍に居る以上の幸せを享受している。まさに、この世の春を謳歌していると言ってもいい。まあ、レーメ様は巻き込まれて可哀想だとは思うけど。人生諦めが肝心といつも言っているのはレーメ様なのだから、ブーメラン? になっていて笑いを禁じ得ないのは許して欲しい。
「――やぁっと、閨の御供に呼んでいただけたのね。でも、最後まではしてないでしょうね? あなたも魔術施してあるけど、メシー様のためにも雌の中はまだ知らない方が良いでしょう」
「その前に、爺が俺に盛っただろ? レーメ様がおかしい、って途中で手を止めてくださったもん」
「うーん、良いことなんだけれど何だかメシー様って、自制心がすごいわねぇ。いつか爆発しないか心配なのだけど」
「そんなこと言って、レーメ様が爆発しているの見たことない」
昨日の閨の御供に呼ばれたことを、母上が揶揄ってくるが、そもそも色々とやらかしたのは爺と母上が手を組んだからだろうに。ジト目を向けるが、母上が堪えた様子はない。
レーメ様は、昔から、とても穏やかだ。こっそり、前世の記憶があるからなのだと聞いた。童貞だとも聞かされている、初めてだから誤解するな期待するな、と。
そこでふと、思い出したことを母上に告げる。
「なぁ、閨の御供として何回までなら、俺を呼んでも文句言われないか爺か母上に聞いとけ、って言われたんだけど。俺、何て答えればいい? 何回も呼ばれて、最後までは我慢しなきゃなのか?」
「……相変わらず、メシー様は慎重というか。そうねぇ、週に2、3度ならまあ第一王子殿下より少なめの回数だから目立たないのではないかしら?」
「……そんなに呼ばれる可能性があるの、俺。昨日も媚薬入りとはいえ、ツラかったんだけど。母上も雌ならわかるだろ?」
「うふふ、愛されてるのだから、そのくらい頑張ることね~」
母上はこのまま立ち去って行ったが、現状のまま――いやそれよりも悪化するであろう状況を思って俺はガックリと項垂れた。
昨日、思った以上の醜態を晒した。めっちゃレーメ様の前でイキまくる……淫乱みたいな、そんなダメな姿を見せてしまったのだ。それに、結局は後ろを使わなかったから、普段そこも使って自慰する俺としてはとても疼いてツラかったのだ。というか、触られてもいいようにきっちり洗浄して解してからレーメ様のところに行ったのに!
今でもまだ疼く感じがあるので、たぶん今日の業務を終えたら自慰するのは確実である。……レーメ様にもっと触って欲しかったなぁ。
ただ、レーメ様にまたお呼び頂ける、触ってもらえると思うともっと励もうと思える。くるり、と向かうべき場――レーメ様の下へ戻るべく足を向けた。
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