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第1章 転がり落ちてきた玉座への道と、繰り上がり王太子の嫁取り事情

1-12.『閨の御供』の実態と誘惑に駆られて

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 ベッドにもぐりこみ、不貞寝を決行しようとしたところで、ケネスがやってきて不貞寝は中止となった。強制的にベッドから追い出されて、服を剥がれたのだ。着替えて支度するより他なかった。
 ついでに言うと、何故かケネスも不機嫌で怖い。普段から私室で朝食をとっているから、その不機嫌なケネスに給仕されながら何とか朝食を終える。もうやだ、今日は引きこもりたい。ユーハン殿が婚約者に内定したことで、処理する書類いっぱいだけども。

 朝食後のお茶を出された頃に、やっとケネスが理由を話してくれた。


「殿下。シェンティス王女殿下も、娶る予定ですか?」
「は? あの子は異母妹だ、妹としかみていない。第一、あの子は臣籍降下を希望していたが?」
「でも、今朝、兄上様から子種を貰ったと……」
「なっ、違う! 違うから、やめてくれ……シェンティス……」


 とんでもない爆弾発言だ、俺は頭を抱えた。何をどうしたら、そういう結論になるんだ。だが、微妙に事実とも言えないのがツラい。一応、精子が空気に触れると死滅する、というのは地球と同じようであるので、シェンティスの持って行ったアレはもう使えない。まあ端切れに吸わせているのもあるが、どうこうなるものではない。……そういう技術は聞いたことないから大丈夫だと思いたい。


「ケネス、お前は、……俺のサイドテーブルの端切れのこと、知っているだろ?」
「ええ、まあ……。あれの管理は俺の仕事です」
「聞きたくない事実が聞こえたが、今はいい。今朝、シェンティスが使用済の端切れを見つけてしまい持って行った。たぶん、そのことだ……」
「……確かに。子種を貰った、という発言に矛盾はありませんね」


 ようやっと、ケネスの空気が緩んだ。この手の勘違いは怖い、信じてもらえてよかった。というか、俺は前世含めてまだ童貞だよ、ケネスだって今世で俺がまだ経験ないの知っているだろうに。経験ないのに、いきなり10歳の少女で初体験とか無理が過ぎる。どう考えても、経験者に教えを乞うべきだ。そしてそのタイミングは、学園卒業後。初めて同士で失敗して、二度目がなかったらと思うと、きちんと待とうと思うのだ。だって、俺は婚約者――ケネスも、パウリーネも、ユーハン殿も好きなのだ。好きな子を泣かせたくないからと言い訳する、ヘタレ童貞です。どうも。


「何の嫌がらせだ。あの端切れを回収したいが、何と言えばいいかわからん」
「では俺が今から、シェンティス王女殿下の侍女に声をかけて来ます。シェンティス王女殿下は、時々行動的ですから早めに対策しないと」
「頼む、これ以上の恥の上塗りは勘弁したい。今の状態でも、いたたまれないんだ」
「――承知いたしました。少々、お待ちを」


 結局、シェンティスの侍女によって回収されてケネスが処理してくれることになった。幸いと言っていいのか、シェンティスは端切れを持ってにまにましているだけだったようだ。何でにまにましていたのか、考えたくない。俺は異母妹の性癖なんぞ知りたくない。

 問題が解決したら、次に待っているのは書類仕事だ。普段離宮で過ごしている俺にも、ついに本宮の私室と執務室が出来た。正確には昔から私室の用意があったが、本来移動すべき10歳の頃から頑なに離宮で過ごしてきただけである。流石に、15歳の学園入学時には移動しなきゃか、とは思っていたが半年も早まってしまった。ちなみに、執務室は異母兄上がやらかして危うくなった頃から粛々と用意していたらしい。
 そもそも、何で本宮の執務室で過ごすのかって、ちょっとずつリモとして書類仕事が第一王子である異母兄上に振られていた分の移行が始まることが決まったからだ。なんせ、『第一王子殿下のブレーン』であるユーハン殿を引き抜いてしまったからね。本来であれば、ユーハン殿も俺の婚約者に内定した時点で、第一王子の執務室から辞去して問題ない。だが、あの部屋で執務をしていたのは主にユーハン殿で、彼が居なくなると補佐役である文官たちしかいなくなる。それは、ということで暫定的にユーハン殿が引き続き対処することになったのだ。近いうちに、異母兄上の執務室と俺の執務室を行き来しながら、俺に執務を教えてくれる予定だそうだ。まあ、昨日婚約内定したばかりだし、異母兄上の扱いもまだ紛糾していると聞くし。

 とはいえ、俺はまだ側近すらいないし、執務のしの字も知らない学園未就学者だ。書類仕事と言っても、ユーハン殿との婚約に関する書類や、リモに関する書類で、基本的に目を通してサインするだけ。こういうのって、一緒にサインするものかと思ったけど、まだ内定段階だからそうでもないそうだ。ついでに、宰相アガタ殿から届いた分厚い本は、読んでおけということなのだろう。ユーハン殿がこっちに来れるまでは、学園のクラス分け試験の対策と並行してこれを読むしかないようだ。


「――そういえば、殿下って閨の御供を呼ばれませんけど、何故ですか? その割には、端切れ使ってますけど」
「っな、ぁ……!? いきなり、何を言い出すんだ!」
「いえ、今朝の騒動から少し疑問に思いまして」


 少し休憩された方が、というケネスの声掛けで、強制的にケネスを隣に座らせてまったりしていた。ら、何か言い出したんですけどこの子!? 確かに、最近ちょっと欲求不満かなぁと思うことはあったけど、妄想だけでも十二分に抜けるほど、婚約者達は魅力的なのだ。あと本人には内緒だけど、こっそり見たケネスのオナニーショーも忘れられないし、後日アッサールから盗撮された映像が届いたこともある。無論、ケネスにバレないようにアッサールに返した。流石に、ケネスに申し訳が立たないし、毎日顔を合わせるのだから罪悪感がすごくなる。

 でも、確か異母兄上の筆おろしは俺くらいの年齢で、もしかしたら閨の御供に手を出したのかもしれない。割と俺様な異母兄上なので、あり得なくはなさそうなのが何とも。


「……閨の御供を呼んで、知らない雌が独りで慰めているのを見るのも気まずい。そんな雌の前で、独りでするのも微妙な気分になる。一応、学園卒業までは実践はなし、ってなってるからその時まで、別に適当にすませばいいかと思ってる」
「ふむ、殿下は知らない雌の前で果てるのが嫌だ、ということですか?」
「まあそうなるな。というか、それより婚約者であるお前達の笑顔を見てる方が……いや何でもいいだろ?!」
「いえ、よく考えれば慎重な性格の殿下なら、閨の御供なぞ人に聞きにくいモノは避けますよね。でも、あの、……閨の御供を希望されたら最初は、第十側妃候補の乳兄弟が寝所に向かいますよ?」
「……? ちきょうだい、……はぁっ?!」


 え、閨の御供って乳兄弟が担当するの!? つまり俺の場合ってことは、ケネスで、ケネスのオナニーショーって合法だったってこと?! というか、乳母のリリーが色々とケネスが頑張っていることを教えてくれたのって、ケネスが俺に惚れてるとかそういう話でなく、ケネスが雌で練習してるから、閨に呼んでいいですよってこと?
 頭の中が大騒ぎでてんやわんやとなってしまい、頭を抱えてうずくまった。そんなこと、知らなかったよ誰か教えてよパトラッシュ……。
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