6 / 11
エルフさんと畑に行く:前
しおりを挟む
今日はミツナリと畑へお邪魔することになった。
佐野家から車で10分ほど離れたところにある郊外の大きな畑に足を踏み入れると、ふわりと柔らかくいい土の気配がする。
今は冬の終わりなのでまだ大地の精霊は眠っているようだ。
「よく手入れされた畑だ」
「ですよね。この辺りの大根抜いていいらしいので運んでもらっていいですか?」
「せっかくだから私の鞄を使うといい」
収納魔法からしばらく使っていなかった小ぶりな魔法鞄を渡すと「汚れちゃいませんか?」と心配そうに問うてくる。
「この魔法鞄は私は使っていないものだし、時間経過と重さが10分の1になるから大根を新鮮に保てるぞ」
「ファ、ファンタジー……なら余計に僕じゃ無いほうがいいような」
「私は収納魔法を習得したからもう使わないものだ。子ども時分の思い出の品だから手放すのも惜しくて底の方に眠らせてたものだから、使ってもらったほうが鞄も喜ぶ」
ミツナリはしばらく考えてから「じゃあ、お言葉に甘えて」と鞄を受け取る。
この畑はお寺に併設されてる保育園の先生の両親がやってる畑だそうで、大根が食べきれず勿体無いので好きなだけ持っていけとのことだった。
「大根は日持ちしますし、色々使えるのでいっぱいあると便利なんですよね」
葉っぱを掴んでギュッと引っ張ると、大ぶりの大根がスポッと抜けてくる。
「おお……!」
白くてツヤツヤの大根の泥を軽く落としてから収納魔法へ放り込む。
次から次へと大根を引き抜いていると故郷でマンドラゴラを引き抜いてた幼少期を思い出す。
(引き抜いたマンドラゴラを叫ぶ前に魔法で凍らせる手伝いをよくしたものだ……)
そんな懐かしいことを考えていると、隣に青々としたネギが生えていることに気づく。
「このネギも美味しそうだな」
「ですね。まあうちでは出せないんですけどね……」
「そうなのか?」
「仏教では五葷(ごくん)と言いまして、ネギ・ニンニク・ニラなどは煩悩を刺激すると言われて禁止されてるんです」
「僧侶は煩悩をあまり持たないほうがいいから、そう言ったものを避ける訳だな」
宗教上の理由で食べない彼らと体質上の理由で食べない私とはやはり制限の内容は似て非なるのだな、と妙に納得してしまう。
しかし食卓にネギがないと言うことは今回言われるまで全く気づけなかった。
「食材の制限があっても美味しいものがみんなと食べられると言うのはいいものだな」
肉や魚が食べられないことで起きた問題を思えば多少食べられない野菜があることなど、誤差に過ぎないように思えてくる。
「そうですね?帰ったら、大根で色々作りましょうか」
佐野家から車で10分ほど離れたところにある郊外の大きな畑に足を踏み入れると、ふわりと柔らかくいい土の気配がする。
今は冬の終わりなのでまだ大地の精霊は眠っているようだ。
「よく手入れされた畑だ」
「ですよね。この辺りの大根抜いていいらしいので運んでもらっていいですか?」
「せっかくだから私の鞄を使うといい」
収納魔法からしばらく使っていなかった小ぶりな魔法鞄を渡すと「汚れちゃいませんか?」と心配そうに問うてくる。
「この魔法鞄は私は使っていないものだし、時間経過と重さが10分の1になるから大根を新鮮に保てるぞ」
「ファ、ファンタジー……なら余計に僕じゃ無いほうがいいような」
「私は収納魔法を習得したからもう使わないものだ。子ども時分の思い出の品だから手放すのも惜しくて底の方に眠らせてたものだから、使ってもらったほうが鞄も喜ぶ」
ミツナリはしばらく考えてから「じゃあ、お言葉に甘えて」と鞄を受け取る。
この畑はお寺に併設されてる保育園の先生の両親がやってる畑だそうで、大根が食べきれず勿体無いので好きなだけ持っていけとのことだった。
「大根は日持ちしますし、色々使えるのでいっぱいあると便利なんですよね」
葉っぱを掴んでギュッと引っ張ると、大ぶりの大根がスポッと抜けてくる。
「おお……!」
白くてツヤツヤの大根の泥を軽く落としてから収納魔法へ放り込む。
次から次へと大根を引き抜いていると故郷でマンドラゴラを引き抜いてた幼少期を思い出す。
(引き抜いたマンドラゴラを叫ぶ前に魔法で凍らせる手伝いをよくしたものだ……)
そんな懐かしいことを考えていると、隣に青々としたネギが生えていることに気づく。
「このネギも美味しそうだな」
「ですね。まあうちでは出せないんですけどね……」
「そうなのか?」
「仏教では五葷(ごくん)と言いまして、ネギ・ニンニク・ニラなどは煩悩を刺激すると言われて禁止されてるんです」
「僧侶は煩悩をあまり持たないほうがいいから、そう言ったものを避ける訳だな」
宗教上の理由で食べない彼らと体質上の理由で食べない私とはやはり制限の内容は似て非なるのだな、と妙に納得してしまう。
しかし食卓にネギがないと言うことは今回言われるまで全く気づけなかった。
「食材の制限があっても美味しいものがみんなと食べられると言うのはいいものだな」
肉や魚が食べられないことで起きた問題を思えば多少食べられない野菜があることなど、誤差に過ぎないように思えてくる。
「そうですね?帰ったら、大根で色々作りましょうか」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
神は激怒した
まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。
めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。
ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m
世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
恋愛
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
行き場を失った恋の終わらせ方
当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」
自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。
避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。
しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……
恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。
※他のサイトにも重複投稿しています。
強面夫の裏の顔は妻以外には見せられません!
ましろ
恋愛
「誰がこんなことをしろと言った?」
それは夫のいる騎士団へ差し入れを届けに行った私への彼からの冷たい言葉。
挙げ句の果てに、
「用が済んだなら早く帰れっ!」
と追い返されてしまいました。
そして夜、屋敷に戻って来た夫は───
✻ゆるふわ設定です。
気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる