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大使館3年目・秋(17部分)
もてなし、うらばなし
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「総理からの指示なんだが、北の国との会談の後何かインパクトのある軽食のようなものを出してくれないかと指示が来た」
内閣府の片隅で北の国へのもてなしの準備を指示された官僚たちは、総理からの新しい指示に頭を悩ませていた。
「軽食?ランチとかでなく?」
もてなしチームのリーダーの指示に若手の官僚が不思議そうに声を上げた。
「大使館の金羊国生活実態報告書読んでないのか?あちらは1日に朝晩の2食しか食べないしおやつの文化もそこまで発達してない、お昼に出すなら軽食くらいで良かろうという話だ」
対北の国ご一行様もてなしのため編成されたチーム中では、大きな事から小さな事まで最良のもてなしのため日々頭を抱えていた。
「しかも数を揃えないとならないんですよね?」
「先方とこちらで食べる分を出すから50くらいは必要か」
「異世界でインパクトありそうっていうとカレーですかねえ、ああいうとこって香辛料が高価で滅多に食べられないからカレーの複雑さが刺さるってのはあるあるですし」
チーム最年少の若手が手を挙げながらそんな提案をすると「確かに香辛料が高いという話はあったな」「アリかもしれませんね」という話になる。
「でも昼ごはんを食べない文化圏の人からするとカレーは重いのでは?」
そう指摘してきたのはサブリーダーの女性官僚だ。
「少なめのカレーを出せばいいんじゃないですか?」
「それだと見た目で不公平感が出ませんか?それにカレーは軽食と呼ぶには重すぎる気がします」
「それはそうか……となると、スパイス感があって小腹を満たす程度に軽く食べられるものという感じか」
「たこ焼き!たこ焼きなら軽く食べられますよ!ソースはスパイス感もありますし!」
再び声をあげたのは最年少の若手官僚だ。
「たこ焼きは向こうがタコを食べない文化圏だとハードルが高いが、ソース味という視点はアリだな」
「そういえば先方が食べる前に毒味するという場合もあり得ますよね?そうなると冷めても美味しく食べれられるものが良いのでは?」
そこから話が弾んだ。
食べ物の条件がかなり絞られてきたのであとは手当たり次第にあげで見れば割とすぐに結論が出た。
「スパイス感のあるソース味で冷めても美味しく食べられ、軽食として小腹が空いた程度でも食べられる。
以下の条件を満たすものとしてカツサンドとする!」
そんな訳でカツサンドが選ばれたわけである、が。
「で、どこのカツサンドにします?」
次の問題はそれだったがリーダーが声を上げた。
「敢えてチェーン店のものにしよう」
「どうしてですか?」
「日本では安価にスパイス味のものが食べられる事を示す事で日本との関係に魅力を感じさせたい、だからと言って高価な品を安く見せかけるような事をすればメディアに突かれる可能性がある」
「それでチェーン店なんですね」
「ちなみに俺はさぼてんのカツサンドがいいと思うんだが……」
「俺はまい泉のがいいです!」
対北の国もてなしチームの話し合いはその日の夜まで続き、翌日国内チェーン店のカツサンドを取り寄せてまい泉に決まるまで大いに揉めるのであった。
内閣府の片隅で北の国へのもてなしの準備を指示された官僚たちは、総理からの新しい指示に頭を悩ませていた。
「軽食?ランチとかでなく?」
もてなしチームのリーダーの指示に若手の官僚が不思議そうに声を上げた。
「大使館の金羊国生活実態報告書読んでないのか?あちらは1日に朝晩の2食しか食べないしおやつの文化もそこまで発達してない、お昼に出すなら軽食くらいで良かろうという話だ」
対北の国ご一行様もてなしのため編成されたチーム中では、大きな事から小さな事まで最良のもてなしのため日々頭を抱えていた。
「しかも数を揃えないとならないんですよね?」
「先方とこちらで食べる分を出すから50くらいは必要か」
「異世界でインパクトありそうっていうとカレーですかねえ、ああいうとこって香辛料が高価で滅多に食べられないからカレーの複雑さが刺さるってのはあるあるですし」
チーム最年少の若手が手を挙げながらそんな提案をすると「確かに香辛料が高いという話はあったな」「アリかもしれませんね」という話になる。
「でも昼ごはんを食べない文化圏の人からするとカレーは重いのでは?」
そう指摘してきたのはサブリーダーの女性官僚だ。
「少なめのカレーを出せばいいんじゃないですか?」
「それだと見た目で不公平感が出ませんか?それにカレーは軽食と呼ぶには重すぎる気がします」
「それはそうか……となると、スパイス感があって小腹を満たす程度に軽く食べられるものという感じか」
「たこ焼き!たこ焼きなら軽く食べられますよ!ソースはスパイス感もありますし!」
再び声をあげたのは最年少の若手官僚だ。
「たこ焼きは向こうがタコを食べない文化圏だとハードルが高いが、ソース味という視点はアリだな」
「そういえば先方が食べる前に毒味するという場合もあり得ますよね?そうなると冷めても美味しく食べれられるものが良いのでは?」
そこから話が弾んだ。
食べ物の条件がかなり絞られてきたのであとは手当たり次第にあげで見れば割とすぐに結論が出た。
「スパイス感のあるソース味で冷めても美味しく食べられ、軽食として小腹が空いた程度でも食べられる。
以下の条件を満たすものとしてカツサンドとする!」
そんな訳でカツサンドが選ばれたわけである、が。
「で、どこのカツサンドにします?」
次の問題はそれだったがリーダーが声を上げた。
「敢えてチェーン店のものにしよう」
「どうしてですか?」
「日本では安価にスパイス味のものが食べられる事を示す事で日本との関係に魅力を感じさせたい、だからと言って高価な品を安く見せかけるような事をすればメディアに突かれる可能性がある」
「それでチェーン店なんですね」
「ちなみに俺はさぼてんのカツサンドがいいと思うんだが……」
「俺はまい泉のがいいです!」
対北の国もてなしチームの話し合いはその日の夜まで続き、翌日国内チェーン店のカツサンドを取り寄せてまい泉に決まるまで大いに揉めるのであった。
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