異世界大使館雑録

あかべこ

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大使館3年目・夏(16部分)

深大寺くんの双海公国見聞録2

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「悪いけど行ってきて欲しいところがある」
「行ってきてって1人でですか?」
今の僕は大使館の借金のカタとして預かられており、外出する場合はカウサル女公爵自身が同行していないと外に出られない。
「1人な訳無いだろ、借金のカタに逃げられたら地の果てまで追いかけて捕まえるからな」
「ですよねー」
まあこんな美人のお姉さんに追いかけられるなら悪い気はしないのが男心というものだけど、内容的には全くロマンチックじゃないのが残念だ……という話はまあ置いといて。
「うちの人間をつけるからそいつと一緒にうちの商会と仕事してる木工職人のところに行って洗濯機の試作品を見てきて欲しい」
「あー、手動洗濯機かぁ。確かにわざわざここまで運ぶより俺が行ったほうが早いのか」
大使館で既に投入している大型手動洗濯機の話をしたのは半月ほど前の話だが、早速試作品が出来たらしい。
「どうせ確認するなら実物を知ってる人間の方が手っ取り早いしな」
「わかりました、行ってきますね」
「じゃあ早速だがアシル、鎖を」
「えっ」
そばにいたヤマンラール商会の人たちが足元の箱から金属製の鎖を出してきて、俺の身体に装着してくる。
ハーネス型に繋がれた鎖で胴体をがっちり固定された後にショールのようなものを肩から掛けられる。
(……これ脱走防止用の鎖だ!)
「あの、これってこの国的にはセーフなの?」
「これは人間用だからまあ普通じゃないかなぁ。上に隠し布被せるから目立たないし、獣人用の首とか腕につける奴よりは遥かにマシだと思うけど」
鎖がジャラジャラ鳴りながらまあ首を鎖で繋がれるよりはマシとはいえずっしりと重い鎖で繋がれてると、なんとなく自分という人間が信頼されてない感じがする。
(まあ借金のカタに逃げられたら困るのは当然なんだけどなぁ)
しばらく何かの話をした後、ヤマンラール女公爵は「ちゃんと帰ってこいよ」と告げてくる。


……美人のお願いを断れない男はいないんだよなぁ?!
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