104 / 135
大使館3年目・夏(16部分)
沢村叶の夏
しおりを挟む
俺の伯母に当たる人が死んだのは今年の春のことだった。
伯母の一人息子(つまり従兄弟である)真柴春彦が帰って来ないと分かると、おふくろは俺に伯母の新盆を手伝うように命じてきた。
「……めんどくせえ」
「面倒がるなよ」
上の姉貴がぺちんと軽く俺の頭をはたくので「実際めんどいじゃん」と文句をこぼす。
「それに、俺は姉貴やおふくろ程あの人に愛着無いし」
確かにあの人には何度か勉強を教えて貰ったけど、それ以上の思い出がない。
そんな人のために必死こいて頑張るのが少々面倒なのは仕方ないと思う。
「まあお前にとってはそうだよな」
姉貴はポツリとそう答える。
「情けは人のためならず、と思ってやってやりなよ」
「それ最終的に本人のためになってないじゃん」
「情けは人の為ならずは人に情けを掛けておくと巡り巡って結局は自分のためになる、って意味だぞ。それに仕事が仕事だしねえ」
従兄弟はいま、日本と異世界を繋ぐ全権大使として働いている。
その仕事の関係で長期で日本に帰れなくなったのでうちのおふくろが代わりに新盆を行う事になったのだ。
「回り回って帰ってくんなら良いけど」
「春兄なら大丈夫でしょ」
おふくろや姉貴達はこの従兄弟へ厚い信頼を向けていて、だからこそこうして世話を焼くのだろう。そこに俺を巻き込まないで欲しいが。
車を止めて一歩外に出れば殺意に似た強い日差しが降ってくる。
「……暑」
「諦めな」
そう言いながら姉貴は足早に店の入り口を目指した。
伯母の一人息子(つまり従兄弟である)真柴春彦が帰って来ないと分かると、おふくろは俺に伯母の新盆を手伝うように命じてきた。
「……めんどくせえ」
「面倒がるなよ」
上の姉貴がぺちんと軽く俺の頭をはたくので「実際めんどいじゃん」と文句をこぼす。
「それに、俺は姉貴やおふくろ程あの人に愛着無いし」
確かにあの人には何度か勉強を教えて貰ったけど、それ以上の思い出がない。
そんな人のために必死こいて頑張るのが少々面倒なのは仕方ないと思う。
「まあお前にとってはそうだよな」
姉貴はポツリとそう答える。
「情けは人のためならず、と思ってやってやりなよ」
「それ最終的に本人のためになってないじゃん」
「情けは人の為ならずは人に情けを掛けておくと巡り巡って結局は自分のためになる、って意味だぞ。それに仕事が仕事だしねえ」
従兄弟はいま、日本と異世界を繋ぐ全権大使として働いている。
その仕事の関係で長期で日本に帰れなくなったのでうちのおふくろが代わりに新盆を行う事になったのだ。
「回り回って帰ってくんなら良いけど」
「春兄なら大丈夫でしょ」
おふくろや姉貴達はこの従兄弟へ厚い信頼を向けていて、だからこそこうして世話を焼くのだろう。そこに俺を巻き込まないで欲しいが。
車を止めて一歩外に出れば殺意に似た強い日差しが降ってくる。
「……暑」
「諦めな」
そう言いながら姉貴は足早に店の入り口を目指した。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
インフィニティ•ゼノ•リバース
タカユキ
ファンタジー
女神様に異世界転移された俺とクラスメイトは、魔王討伐の使命を背負った。
しかし、それを素直に応じるクラスメイト達ではなかった。
それぞれ独自に日常謳歌したりしていた。
最初は真面目に修行していたが、敵の恐ろしい能力を知り、魔王討伐は保留にした。
そして日常を楽しんでいたが…魔族に襲われ、日常に変化が起きた。
そしてある日、2つの自分だけのオリジナルスキルがある事を知る。
その一つは無限の力、もう一つが人形を作り、それを魔族に変える力だった。
ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~
桂
ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。
そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。
そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる