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大使館3年目・春(15部分)
救いの女神はどこにいる
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*このお話は本編16:大使館とエルダールの島の前日談です。
獣人の国が西の国の軍を打ち負かしたと聞いた時、何かがあると直感した。
弟にかけられた血の呪いを解くため島を出て大陸を彷徨い続けて50年ちょっと、なかなか手掛かりを得られず苛立ちを覚えていた頃であった。
新興国故に碌なもの無かろうと未だ足を伸ばしていなかった金羊国に足を伸ばす事はちょっとした賭けであった。
しかしこれまで通りに大陸各地をウロウロしたところで手がかりの無さに苛立ちを募らせるくらいならば、何の手がかりが見つけられなくとも未知の国を視察する方がよほどエルダールのためにも有益なように思えた。
いつも通り身分を偽って入国した金羊国は確かに何もないまだ文明の未発達な国で思った通りという印象であったが、その中に於いて異彩を放っていたのが日本という異世界の国の人々についての話だった。
薄黄色の肌と黒髪黒目を持ち、魔術は使えないが変わった機械で魔術と同じような事を行うことか出来、獣人やドワーフに対して友好的で好奇心旺盛、この世界にない動画や知識は黄金の魔女と恐れられるヴィクトワール・クライフも関心を持っていた。
そんな折、異世界にはこの世界とは異なる医術があることを知った。
きっかけは暑気あたりを起こした老人をこの土地の警備に当たる鳥の獣人が塩と砂糖を混ぜた水で助けたのを目撃した事だった。
経口補水液というその水の作り方を異世界人から教わったと聞いた時、大陸を彷徨う中で呪術のみならず医術もかじってきたが全く聞いたことのない救命方法に異世界の可能性を確信した。
この世界では無理だったとしても異世界の医術ならば弟を救う手がかりを得られるかもしれない!
そのためには大叔父様から許可を得る必要があり、説得材料を集め次第一度島に戻って話をする必要があった。
「世界を渡る?そんな事をする必要があるのか?」
大叔父は不審がった。
「こちらにはない医術があちらの世界にはあります、それを吸収した上でこの島に戻れば血の呪いを終わらせることすらできるかも知れないのです」
「お前がたった1人の弟を案ずる気持ちは分かっている、しかし大陸を回っている今ですら死の危険があるというのに異世界などと言う何処に何があるかも分からない場所にお前を送り込むわけにはいかん」
そんな話をしばらく続けていると、話が弟の血の呪いを解こうと悪戦苦闘していたハラエバルの耳に届いた。
「フィフィタ、お前は異世界の医術についてどのくらい把握してる?」
「異世界の医術書の写しを手に入れて来た」
これは黄金の魔女と呼ばれたヴィクトワール・クライフの部屋にあった医術書を魔術的方法により写しとったものである。
医術書の私に目を通したハラエバルは精緻な人体骨格図や解剖図の山に目を見張った。
「……確かにこいつはすごいな、ここまで正確なものは初めて見たよ。確かにこんな物が作れるほど医術や医療の発達した世界なら手がかりがあるだろうな。私も説得を手伝うよ」
そうして2人がかりでの説得の果て、ようやく世界を渡って医術を学びに行く許可が降りた。
そして今日、異世界へ渡るため再び中継地となる金羊国を目指す。
「フィフィタ、あの世界には確かに優れた医術がある。でもあれだけのものが作れると言うことはそれなりの犠牲も払ってるはずだ、お前が巻き添えられないように気をつけとけよ」
「わかってる。どうか、イシレリを頼んだ」
獣人の国が西の国の軍を打ち負かしたと聞いた時、何かがあると直感した。
弟にかけられた血の呪いを解くため島を出て大陸を彷徨い続けて50年ちょっと、なかなか手掛かりを得られず苛立ちを覚えていた頃であった。
新興国故に碌なもの無かろうと未だ足を伸ばしていなかった金羊国に足を伸ばす事はちょっとした賭けであった。
しかしこれまで通りに大陸各地をウロウロしたところで手がかりの無さに苛立ちを募らせるくらいならば、何の手がかりが見つけられなくとも未知の国を視察する方がよほどエルダールのためにも有益なように思えた。
いつも通り身分を偽って入国した金羊国は確かに何もないまだ文明の未発達な国で思った通りという印象であったが、その中に於いて異彩を放っていたのが日本という異世界の国の人々についての話だった。
薄黄色の肌と黒髪黒目を持ち、魔術は使えないが変わった機械で魔術と同じような事を行うことか出来、獣人やドワーフに対して友好的で好奇心旺盛、この世界にない動画や知識は黄金の魔女と恐れられるヴィクトワール・クライフも関心を持っていた。
そんな折、異世界にはこの世界とは異なる医術があることを知った。
きっかけは暑気あたりを起こした老人をこの土地の警備に当たる鳥の獣人が塩と砂糖を混ぜた水で助けたのを目撃した事だった。
経口補水液というその水の作り方を異世界人から教わったと聞いた時、大陸を彷徨う中で呪術のみならず医術もかじってきたが全く聞いたことのない救命方法に異世界の可能性を確信した。
この世界では無理だったとしても異世界の医術ならば弟を救う手がかりを得られるかもしれない!
そのためには大叔父様から許可を得る必要があり、説得材料を集め次第一度島に戻って話をする必要があった。
「世界を渡る?そんな事をする必要があるのか?」
大叔父は不審がった。
「こちらにはない医術があちらの世界にはあります、それを吸収した上でこの島に戻れば血の呪いを終わらせることすらできるかも知れないのです」
「お前がたった1人の弟を案ずる気持ちは分かっている、しかし大陸を回っている今ですら死の危険があるというのに異世界などと言う何処に何があるかも分からない場所にお前を送り込むわけにはいかん」
そんな話をしばらく続けていると、話が弟の血の呪いを解こうと悪戦苦闘していたハラエバルの耳に届いた。
「フィフィタ、お前は異世界の医術についてどのくらい把握してる?」
「異世界の医術書の写しを手に入れて来た」
これは黄金の魔女と呼ばれたヴィクトワール・クライフの部屋にあった医術書を魔術的方法により写しとったものである。
医術書の私に目を通したハラエバルは精緻な人体骨格図や解剖図の山に目を見張った。
「……確かにこいつはすごいな、ここまで正確なものは初めて見たよ。確かにこんな物が作れるほど医術や医療の発達した世界なら手がかりがあるだろうな。私も説得を手伝うよ」
そうして2人がかりでの説得の果て、ようやく世界を渡って医術を学びに行く許可が降りた。
そして今日、異世界へ渡るため再び中継地となる金羊国を目指す。
「フィフィタ、あの世界には確かに優れた医術がある。でもあれだけのものが作れると言うことはそれなりの犠牲も払ってるはずだ、お前が巻き添えられないように気をつけとけよ」
「わかってる。どうか、イシレリを頼んだ」
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