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大使館3年目・夏(16部分)
きょうも休めない大人たち
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真柴から持ち込まれた新しい案件は少数民族への医療支援だった。
日本政府が予算を捻出し国境なき医師団や成田の研究所の協力のもと行われることになったのだが、現在俺たちの元には大量の批判が来ていた。
「1億円は多過ぎって言われてもなあ」
「内訳公開したのに批判のメールが減らないのは厳しいですね……」
国際支援の専門家である毒島くんも困ったように呟きながら、ため息を漏らす。
今回の医療支援のことが正式に明かされるとその金額に批判が集中し、俺たちはその対応のため真柴が持って来た見積書の写しを公開して無駄遣いでは無いと主張した。
しかし、裏工作費用を削れ送る人員を減らせ国境なき医師団にも自腹を切らせろと言い出す者が出て来たのだ。
最終的には首相の許可のもと国際支援用の予算から無理くり1億円もぎ取った訳である。
「もうこれ以上はどうにもならないと言い張るしか無いな」
「ですよね」
お互いの顔を見合ってため息をこぼしながら、批判のメールに目を通す。
真柴は今頃俺のこの苦労も知らずに船の上でのんびり目的地を目指している頃だろうか。
「……海行きてえなぁ」
窓の外は夏の盛りの酷暑、こちらは終わらぬ仕事地獄の中。
めちゃくちゃな現実逃避に走る脳みそははるか彼方の美しい海を想像してしまう。
「真柴さんが素敵なお土産持って来てくれますよ、多分」
「あいつが持ってくるのはお土産じゃなくて新しい仕事だよ」
遠い目をする俺に毒島は困ったように笑うのだった。
日本政府が予算を捻出し国境なき医師団や成田の研究所の協力のもと行われることになったのだが、現在俺たちの元には大量の批判が来ていた。
「1億円は多過ぎって言われてもなあ」
「内訳公開したのに批判のメールが減らないのは厳しいですね……」
国際支援の専門家である毒島くんも困ったように呟きながら、ため息を漏らす。
今回の医療支援のことが正式に明かされるとその金額に批判が集中し、俺たちはその対応のため真柴が持って来た見積書の写しを公開して無駄遣いでは無いと主張した。
しかし、裏工作費用を削れ送る人員を減らせ国境なき医師団にも自腹を切らせろと言い出す者が出て来たのだ。
最終的には首相の許可のもと国際支援用の予算から無理くり1億円もぎ取った訳である。
「もうこれ以上はどうにもならないと言い張るしか無いな」
「ですよね」
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「……海行きてえなぁ」
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