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大使館3年目・春(15部分)
ミモザの花束
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甥から姉を託されてもう3年ほど経つ。
仕事のために異世界へと渡った甥っ子が様々なトラブルを乗り越えていく姿を姉と亡き義兄の代わりに見守って来た。
「イト、今日休みなら車出してくれる?」
「叔母さんとこ行くの?」
「姉さんこのところ調子良くないみたいだし、息子とろくに会えてないんだからたまに様子見に行ってあげないと可哀想でしょ」
上の娘は「そうかね?」と疑問混じりにつぶやきつつも、車の鍵を手にしているので運転はしてくれるらしい。
「叔母さんとこ行く前に莉羅のとこに行ってミモザを買ってこ」
少し前に近所の花屋に嫁いだ下の娘の名前を挙げなから勝手にこの後の動きを決める。
「いいけどなんでミモザ?」
「今日はミモザの日らしいよ」
上の娘はなんの役に立つのか分からないようなことを良く知っていて、こういうときにちょっとした豆知識を披露して来た。
車に乗って下の娘の嫁ぎ先へと車を走らせながら、そう言えばミモザってどんな花だったっけ?と調べてみる。
まだ使い慣れないスマホの検索アプリにミモザの花と打ち込むと、黄色いふわふわとした花が画面の中で咲く。
「ミモザって黄色い毛玉みたいな感じのやつね」
「…‥黄色い毛玉って表現はどうかと思う」
上の娘は微妙な顔をしてそんな事を言う。
「花言葉は感謝・友情、色にやっても違うのね」
「薔薇とか本数とか状態でも変わるしね」
ミモザの花言葉の一覧を見ていてふとある言葉で手が止まる。
(白いミモザの花言葉は、死に勝る愛情……)
夫と死別して20年過ぎても40年過ぎても独身を貫くその愛情はまさに死に勝るものであった。
私には到底真似のできないその深い愛は賞賛に値すると思ったのだ。
「イト、白いミモザを買っていきましょう」
「莉羅のとこにおいてあればね」
仕事のために異世界へと渡った甥っ子が様々なトラブルを乗り越えていく姿を姉と亡き義兄の代わりに見守って来た。
「イト、今日休みなら車出してくれる?」
「叔母さんとこ行くの?」
「姉さんこのところ調子良くないみたいだし、息子とろくに会えてないんだからたまに様子見に行ってあげないと可哀想でしょ」
上の娘は「そうかね?」と疑問混じりにつぶやきつつも、車の鍵を手にしているので運転はしてくれるらしい。
「叔母さんとこ行く前に莉羅のとこに行ってミモザを買ってこ」
少し前に近所の花屋に嫁いだ下の娘の名前を挙げなから勝手にこの後の動きを決める。
「いいけどなんでミモザ?」
「今日はミモザの日らしいよ」
上の娘はなんの役に立つのか分からないようなことを良く知っていて、こういうときにちょっとした豆知識を披露して来た。
車に乗って下の娘の嫁ぎ先へと車を走らせながら、そう言えばミモザってどんな花だったっけ?と調べてみる。
まだ使い慣れないスマホの検索アプリにミモザの花と打ち込むと、黄色いふわふわとした花が画面の中で咲く。
「ミモザって黄色い毛玉みたいな感じのやつね」
「…‥黄色い毛玉って表現はどうかと思う」
上の娘は微妙な顔をしてそんな事を言う。
「花言葉は感謝・友情、色にやっても違うのね」
「薔薇とか本数とか状態でも変わるしね」
ミモザの花言葉の一覧を見ていてふとある言葉で手が止まる。
(白いミモザの花言葉は、死に勝る愛情……)
夫と死別して20年過ぎても40年過ぎても独身を貫くその愛情はまさに死に勝るものであった。
私には到底真似のできないその深い愛は賞賛に値すると思ったのだ。
「イト、白いミモザを買っていきましょう」
「莉羅のとこにおいてあればね」
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