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大使館2年目・冬(13~14部分)
にゃんて素敵なおやつ時
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「この後手が空いてたらおやつ作りたいんだけど大丈夫?」
飯山さんがそんなふうに問いかけるのでオーロフくんと顔を見合わせた。
料理の手伝いは僕よりオーロフくんの方が器用で向いてるんだけど、オーロフくんの方はこの後やる事があるようで首を小さく振った。
「あの、僕はこの後洗濯物の仕分けがあるのでお手伝い難しいのでアントリくんが手伝ってくれるみたいです」
僕でいいのかな?と思いつつもこくりと頷くと飯山さんは「じゃあお願いするねー」と微笑んだ。
***
飯山さんが最初に始めたのは小麦粉と卵を混ぜてサラリとした生地を作ることだった。
「これをたくさん作らないといけないからお願いするね」「はい」
言われた通り小麦粉と卵を混ぜている横で、飯山さんは雪の詰まった箱の上に金属製のボウルを乗せてさらに生クリームを開けてくる。
「それどうするんですか?」
「泡立ててふわふわにするんだよー」
電気で動く泡立て器を蓄電器に繋げると、生クリームを一気にかき混ぜる。
すると液体からふわふわとした何かになっていく。
「こんな使い方があるんですね」
やがて泡立て器を止めて持ち上げると生クリームが柔らかそうな角が立ち、泡立て器についた生クリームを指で掬ってぺろりと舐めると「うん」と呟いた。
「ついたやつをちょっと舐めてみて?」
言われた通りに指で掬って舐めてみると牛乳の甘さが舌先で優しく溶けていく。
「美味しいです!」「でしょ?」
飯山さんがにっこりと笑う。
僕の頼まれていた生地の方も出来た。
「生地の方も焼くよ」
飯山さんはどこからか丸っこい形のふわふわした塊を差し出して来た。
「この生地をスポンジに吸わせて、熱い鉄板に押し付けるんだよ」
飯山さんがその手つきでスポンジと呼ぶものを生地に吸わせて熱した鉄板にポンと押し付けると、スポンジと同じ形が鉄板の上に出来上がる。
「これってなんの形なんですか?」
「猫ちゃんだよ!今日は日本だと猫の日だからねー」
鉄板の上にはクリーム色の猫の生地がたくさん生まれ、焼けたものからどんどんきれいに剥がされる。
「これどのくらい焼くんですか?」
「最低で110枚かなぁ」
これは大変だな、と思うと同時にオーロフくんの洗濯物の仕分け仕事の方が楽な気がして来た。
(まあ仕方ないかあ)
「あ、普段はわざわざスポンジなんか使わないで丸く焼くから今日はちょっと特別仕様なんだよー?」
「でも作るためには同じものを何枚も焼くんですよね?」
「そうだねぇ」
「……もしかして僕、皇帝のおやつとか作ってます?」
「そんな大袈裟なものではないよ」
生クリームを泡立てるのだって手作業ならきっともっと大変な作業だろうし、こんなに手間暇のかかるおやつを普段から食べられるのはきっと皇帝とか王様とか偉い人だけなのではないだろうか?
やがて作っておいた生地を全部使い切り、まな板の上に焼けた猫の生地がいっぱいになる。
「この生地をどうするんですか?」
「さっきの生クリームと組み合わせます!」
お皿の上に焼けた生地を乗せて生クリームを塗り、さらに生地とクリームを重ねる作業を繰り返す。
最後に果実の甘煮で猫の絵柄を描き、ナッツで目を作ると出来上がりだ。
「じゃ、これはオーロフくんに」
「えっ?!」
「今日はいっぱい頑張ってくれたから1番に食べる権利をあげよー思ってねぇ」
「本当に食べて良いんですか?」
「良いんだよぉ~?」
そわそわしながらもひとくち分を切り出してパクリと口に入れてみると、さっきの生クリームだけでなく生地の味や果実の甘煮の味がブワッ!と広がって来る。
「……今までで1番美味しいです」
「まだまだ美味しいもの教えてあげるからねぇ~」
飯山さんが嬉しそうに笑いながら僕を撫でてくれる
(猫の日って素敵な日だ……!)
飯山さんがそんなふうに問いかけるのでオーロフくんと顔を見合わせた。
料理の手伝いは僕よりオーロフくんの方が器用で向いてるんだけど、オーロフくんの方はこの後やる事があるようで首を小さく振った。
「あの、僕はこの後洗濯物の仕分けがあるのでお手伝い難しいのでアントリくんが手伝ってくれるみたいです」
僕でいいのかな?と思いつつもこくりと頷くと飯山さんは「じゃあお願いするねー」と微笑んだ。
***
飯山さんが最初に始めたのは小麦粉と卵を混ぜてサラリとした生地を作ることだった。
「これをたくさん作らないといけないからお願いするね」「はい」
言われた通り小麦粉と卵を混ぜている横で、飯山さんは雪の詰まった箱の上に金属製のボウルを乗せてさらに生クリームを開けてくる。
「それどうするんですか?」
「泡立ててふわふわにするんだよー」
電気で動く泡立て器を蓄電器に繋げると、生クリームを一気にかき混ぜる。
すると液体からふわふわとした何かになっていく。
「こんな使い方があるんですね」
やがて泡立て器を止めて持ち上げると生クリームが柔らかそうな角が立ち、泡立て器についた生クリームを指で掬ってぺろりと舐めると「うん」と呟いた。
「ついたやつをちょっと舐めてみて?」
言われた通りに指で掬って舐めてみると牛乳の甘さが舌先で優しく溶けていく。
「美味しいです!」「でしょ?」
飯山さんがにっこりと笑う。
僕の頼まれていた生地の方も出来た。
「生地の方も焼くよ」
飯山さんはどこからか丸っこい形のふわふわした塊を差し出して来た。
「この生地をスポンジに吸わせて、熱い鉄板に押し付けるんだよ」
飯山さんがその手つきでスポンジと呼ぶものを生地に吸わせて熱した鉄板にポンと押し付けると、スポンジと同じ形が鉄板の上に出来上がる。
「これってなんの形なんですか?」
「猫ちゃんだよ!今日は日本だと猫の日だからねー」
鉄板の上にはクリーム色の猫の生地がたくさん生まれ、焼けたものからどんどんきれいに剥がされる。
「これどのくらい焼くんですか?」
「最低で110枚かなぁ」
これは大変だな、と思うと同時にオーロフくんの洗濯物の仕分け仕事の方が楽な気がして来た。
(まあ仕方ないかあ)
「あ、普段はわざわざスポンジなんか使わないで丸く焼くから今日はちょっと特別仕様なんだよー?」
「でも作るためには同じものを何枚も焼くんですよね?」
「そうだねぇ」
「……もしかして僕、皇帝のおやつとか作ってます?」
「そんな大袈裟なものではないよ」
生クリームを泡立てるのだって手作業ならきっともっと大変な作業だろうし、こんなに手間暇のかかるおやつを普段から食べられるのはきっと皇帝とか王様とか偉い人だけなのではないだろうか?
やがて作っておいた生地を全部使い切り、まな板の上に焼けた猫の生地がいっぱいになる。
「この生地をどうするんですか?」
「さっきの生クリームと組み合わせます!」
お皿の上に焼けた生地を乗せて生クリームを塗り、さらに生地とクリームを重ねる作業を繰り返す。
最後に果実の甘煮で猫の絵柄を描き、ナッツで目を作ると出来上がりだ。
「じゃ、これはオーロフくんに」
「えっ?!」
「今日はいっぱい頑張ってくれたから1番に食べる権利をあげよー思ってねぇ」
「本当に食べて良いんですか?」
「良いんだよぉ~?」
そわそわしながらもひとくち分を切り出してパクリと口に入れてみると、さっきの生クリームだけでなく生地の味や果実の甘煮の味がブワッ!と広がって来る。
「……今までで1番美味しいです」
「まだまだ美味しいもの教えてあげるからねぇ~」
飯山さんが嬉しそうに笑いながら僕を撫でてくれる
(猫の日って素敵な日だ……!)
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