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大使館2年目・秋(12部分)
僕らの残念な異世界生活
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井上秀夫3×歳、夢が一つ叶うことになった。
「まさか秀夫が異世界転移する日が来るなんてねぇ」
「俺も仕事でそういう漫画では読んでたけど実の息子がそうなる日が来るとはな!」
この度、自分は仕事で地球とつながった異世界の小国・金羊国で日本と繋がる鉄道敷設の仕事に就くことになった。
他の同僚の家族はもう会えないのではないかと言う悲観的な思考で異世界赴任を反対される中、アニメ監督の父と漫画家の母だけは『技術が必要とされてるうちは死ぬことはないだろ』とあっさり同意書にサインしてくれた。
この両親でなければ一部の仲間たちのように同意が得られず赴任を諦めていたかもしれない。
「父上と母上の仕事にも役立つ資料、沢山集めてきますね!」
異世界の写真が欲しいという父親から譲られた中古のライカを掲げると、父は「死ななきゃどんなケガしてもいいから資料は定期的にな」と言い出す。
母親もその言動に「そうねー」と付け足してくる。
(……資料欲しさに息子を異世界に送り出すはずではない、ですよね?)
と、ほんの少しの不安と大いなる期待を胸に飛び込んだ金羊国は思ったよりも地味でなんにもない土地だった。
まだ政情不安定な小国で開発も進んでいない。美醜感覚も大きな差はない。漫画の戦闘シーンみたいな派手な魔術はほぼみられない。
「しかも魔術チートなし知識チート禁止の異世界なんて!!!!!!」
金羊国の社会習俗を破壊する恐れがあるという理由により知識チートを禁止されたことで、知識チートからのケモミミ美少女ハーレムも難しくなってしまった。
「現実は厳しいですな」「然り」
自分のように異世界やケモミミへの憧れから赴任を希望した同期たちと酒を酌み交わせば、夢少ない異世界生活にぼやきが漏れる。
会社の寮にいるには日本から赴任したメンバーばかり、女子寮へは同意なしに入れないし覗きを行えば即減給、現場にいる獣人たちはいかつい男ばかりで目の保養にはならない。
「せめて事務方とか関係者で可愛いわんこ系ロリ巨乳がいればなー」
「拙者はつるぺたボーイッシュな騎士系黒猫少女が良いであります」
「俺は巨乳薄幸人妻牛おねえさん」
みんなそれぞれにこんな獣人女子と付き合いという夢で胸(と股間)を膨らませてきたので、こういう話になるとどうしても際限がなくなる。
そうして一しきり話した後、必ず誰かがこう口を開くのだ。
「でも金羊国だから魔術も獣人彼女も現実味が出るんだよなあ」
日本なら子供の夢と切り捨てられるような魔術も、オタクの幻想と馬鹿にされて終わるケモミミ美少女も、ここには実在する。
魔術チートで俺tueeeeee!もケモミミ美少女で童貞を捨てるのも、日本より金羊国のほうが叶う確率が高いのだ。
「現実にするため、頑張るしかありませんなあ」
異世界の現実は今日も過酷だが、オタク男子たちは今日もほ夢に手を伸ばし続ける。
「まさか秀夫が異世界転移する日が来るなんてねぇ」
「俺も仕事でそういう漫画では読んでたけど実の息子がそうなる日が来るとはな!」
この度、自分は仕事で地球とつながった異世界の小国・金羊国で日本と繋がる鉄道敷設の仕事に就くことになった。
他の同僚の家族はもう会えないのではないかと言う悲観的な思考で異世界赴任を反対される中、アニメ監督の父と漫画家の母だけは『技術が必要とされてるうちは死ぬことはないだろ』とあっさり同意書にサインしてくれた。
この両親でなければ一部の仲間たちのように同意が得られず赴任を諦めていたかもしれない。
「父上と母上の仕事にも役立つ資料、沢山集めてきますね!」
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母親もその言動に「そうねー」と付け足してくる。
(……資料欲しさに息子を異世界に送り出すはずではない、ですよね?)
と、ほんの少しの不安と大いなる期待を胸に飛び込んだ金羊国は思ったよりも地味でなんにもない土地だった。
まだ政情不安定な小国で開発も進んでいない。美醜感覚も大きな差はない。漫画の戦闘シーンみたいな派手な魔術はほぼみられない。
「しかも魔術チートなし知識チート禁止の異世界なんて!!!!!!」
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「現実は厳しいですな」「然り」
自分のように異世界やケモミミへの憧れから赴任を希望した同期たちと酒を酌み交わせば、夢少ない異世界生活にぼやきが漏れる。
会社の寮にいるには日本から赴任したメンバーばかり、女子寮へは同意なしに入れないし覗きを行えば即減給、現場にいる獣人たちはいかつい男ばかりで目の保養にはならない。
「せめて事務方とか関係者で可愛いわんこ系ロリ巨乳がいればなー」
「拙者はつるぺたボーイッシュな騎士系黒猫少女が良いであります」
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みんなそれぞれにこんな獣人女子と付き合いという夢で胸(と股間)を膨らませてきたので、こういう話になるとどうしても際限がなくなる。
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「でも金羊国だから魔術も獣人彼女も現実味が出るんだよなあ」
日本なら子供の夢と切り捨てられるような魔術も、オタクの幻想と馬鹿にされて終わるケモミミ美少女も、ここには実在する。
魔術チートで俺tueeeeee!もケモミミ美少女で童貞を捨てるのも、日本より金羊国のほうが叶う確率が高いのだ。
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