異世界大使館雑録

あかべこ

文字の大きさ
上 下
56 / 82
大使館2年目・秋(12部分)

大使館のかぼちゃおやつ

しおりを挟む
秋の市場ではかぼちゃの安売りが増える。
ここでよく栽培されてるかぼちゃは涼しいところに置けば1年くらい平気で持つので、去年収穫したが食べずに置いておいたかぼちゃを収穫目前の秋に安売りすることが良くあるのだ。
この安売りされたかぼちゃを使わない手はない。
しかもこっちのかぼちゃは日本のかぼちゃの倍くらいの大きさがあり、1個で3キロ以上はあるので一つあれば2~3人がお腹いっぱいなる便利食材だ。
「と言うわけで今日はかぼちゃ祭りだよー!」
「かぼちゃ10個は買い過ぎですよ……」
呆れ気味にぼやくアントリに「ちゃんと使い道あるから大丈夫だよ」答える。
「まず塩茹でするところからですね」
ここのかぼちゃはびっくりするほど硬いのでお湯で茹でてからでないと刃物が通らない、と言われているけれど本当なのか試してみたい。
まずはへたの横が切れないか?と挑んでみるが切れない。
次はかぼちゃのへたを取って切る方法も挑むがやっぱり切れない。
「水汲んであるのでお湯沸かしますよ」
「ありがとう。最後に一つだけ試したい事があるから金槌借りてきてくれるかなぁ?」
首を傾げつつ金槌を持ってきてもらい、かぼちゃをコンコンと叩いてみる。
スッと息を吐いてヘタを狙って思い切り金槌を打ちつける!
するとバキッという音を立ててかぼちゃが二つに割れた。
「かぼちゃが割れた?!」
綺麗に三分割に割れたのを見てうまく行ったなとにんまり笑う。
「日本だとかぼちゃ割りってたまに聞くけどこっちだと全然聞かないから試してみたかったんだよねー」
「そう言う方法もあったんですね」
「日本のかぼちゃより遥かに硬いけどこんな綺麗に三分割で割れるなんてねー」
割れたかぼちゃの中身はりんごぐらいの硬さになるのでナイフで削って食べられる(ちょっとエグ味があるけど)し、割っても涼しいところに置けば2~3日は持つ。
「これ全部割りますか?」
「今日はこれだけね、この割ったやつでおやつを作ろう」

***

まずはかぼちゃを皮と果肉に分ける。
こっちのかぼちゃは皮が尋常じゃなく硬いけど、中身は割と柔らかいので皮目に刃を入れれば簡単に分けられる。
そして水を入れたフライパンで蒸し煮にして箸で切れるくらい柔らかい状態にする。
その間にかぼちゃの種を水洗いして軽く炒っておく。これも立派なおやつです。
で、柔らかくなったら小麦粉・バター・蜂蜜を混ぜて軽く休ませ、ダッチオーブンで焼くだけだ。
「美味しそうな匂いがするな」
「木栖さんお疲れ様です!おやつですよ」
「今日はかぼちゃクッキーですよー」
クッキーに一つ手を伸ばすと「うまい」と薄く微笑む。
「じゃ、みんなにお渡ししてこなきゃねぇ」
大使館の仕事は大変だ。
その大変な日々を食で支えるのが僕の仕事で、喜んでもらえるのも僕の給料の一部なのだ。
しおりを挟む
1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

死に戻り悪役令息は二人の恋を応援…するはずだった…。

BL / 連載中 24h.ポイント:1,953pt お気に入り:126

能死

SF / 連載中 24h.ポイント:42pt お気に入り:0

ありあまるほどの、幸せを

BL / 連載中 24h.ポイント:4,942pt お気に入り:517

ヒロインの姉と王弟殿下の攻防

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:1,655pt お気に入り:43

答えを知ることは永遠に・・・

エッセイ・ノンフィクション / 完結 24h.ポイント:674pt お気に入り:0

処理中です...