異世界大使館雑録

あかべこ

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大使館2年目・夏(10~11部分)

さあ行こうぜ最高のStage!

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最近、台所の火おこしでよく地球の新聞紙という紙を使うようになりました。
薄くてよく燃えるし数も多いので火おこしや掃除に使わせて貰っています。
ふと目についたのは紅白のピッタリした服を着た男性が楕円の球を抱えているところに、人がタックルする様子です。
(地球にも忠義の牛があるんでしょうか?)
読める文字を拾って読んでみようとしますが、難しい字が多くてよく分かりません。
「オーロフくんどうしたの?」
「あ、飯山さん。これが少し気になって」
「あー、ラグビーワールドカップかあ、これはラグビーっていう地球のスポーツの写真だよ」
「ラグビーっていうんですね、忠義の牛が地球にもあるのかと」
「ちゅーぎのうし?」
「はい、僕の育った地域周辺でよく行われていた遊びで秋祭りでは目玉の出し物でもあるんですよね」
地球との季節のずれでこちらは夏だが向こうではもう秋なのである意味ちょうど良い時節の話題とも言える。
飯山さんが興味深そうに僕を見てくる。
こういうのは納村さんの方が好きそうだと思っていたけれど、飯山さんも興味があるらしい。
「忠義の牛は僕の地域に古くから伝わるお話が元になっていていて、ここに描いてある球と同じ形でもっと大きくて重い石で出来た球を使うんです」
「石のラグビーボールは重そうだねえ」
「忠義の牛ってお話が元々、戦争中に瀕死の主人から赤ん坊を託された牛獣人が命懸けで赤ん坊を守って三日三晩走って安全な場所に赤ん坊送り届けた直後に力尽きて死んでしまうという話なんです。つまりこの石は赤ん坊の代わりなんですよ」
「確かに赤ちゃんって重いもんねぇ。じゃあ石のボールは落とせないね」
「はい。5人1組でチームを組んでこの石の球を落とされたり奪われないように守りながら1ミル走り切らないといけなくて、奪い手は試合中にこうして体当たりをしてくるんです。だから僕はあんまり得意じゃなかったんですけど、僕の暮らしていた地域の獣人は秋になるとみんなこれの練習をさせられるので……思い出すだけであのぶつかられる痛みが……」
話してくうちにあの痛みが思い出されてお腹がちょっと痛くなってきた気がする。
お腹にツノが刺さるんじゃないかという勢いで突っ込まれるのが嫌で逃げ回っていたあの頃を思い出して泣きそうになるが「嫌なら思い出さなくて良いんだよぉ?!」という優しいフォローが飛んでくる。
「地球のラグビーも痛いんですかね」
「痛いと思うけど地球だと無理矢理やらされたりはしないからそこは安心して欲しいかなあ」
「つまりこの人達は自分から進んで痛い目に遭ってるんですか?」
地球人って不思議な生き物だな……。


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ラグビーワールドカップフランス大会見てね!(ラグビーファンの作者より)
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