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大使館2年目・夏(10~11部分)
大使館の現場猫
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おいらはキーサ、大工を生業とする家猫を祖に持つ獣人だ。
今回は縁あってタイシカンとかいう建物の建て増しの仕事をしている。
「キーサ!塗り土の準備出来てんのか?」
「もう少しっス!」
おいら達はむかし西の国の人間様の下で朝から晩まで家を建てる仕事をしてたが、飯も寝る時間も無い暮らしに嫌気がさして一族郎党逃げ出してきた。
今はどうかって?
「お疲れさまです」
タイシカンで働く人間様の1人であるイイヤマさんが美味そうな匂いをさせながらやってくると、俺たちはにわかにおっ!と声が上がる。
ここの人間様は俺たちに優しくて、よく飲みもんや軽くつまむものを持ってきてくれる。
「今日はソーダですよー」
「ソーダって前に出してくれた甘くてシュワシュワする奴っすよね?!」
「キーサくんが気に入ってくれたみたいだからまた作ってみたんだー」
早速ソーダを受け取るとすぐに日陰に腰を下ろす。
紙製のコップに入った甘くて冷たいソーダはここの仕事についてから新しく出来た俺の好物だった。
地球に行けば毎日飲めるらしいけど、魔術も出来なきゃ文字の読み書きが苦手で異世界に出稼ぎに行く勇気もないおいらはここでしか飲めなさそうだ。
ひとくち飲めば甘さと不思議なしゅわしゅわが喉へと抜けていき、これを毎日飲めたらなあと心底思う。
「やっぱうめえっす!」
「オレは麦茶の方が好きだけどなあ」
「あのすぽーつどりんく?って奴も良いよな、蜂蜜と塩がありゃすぐ出来るっていうし」
仲間達がてんでばらばらにどの飲み物が好きか?という話で盛り上がる。
でもおいらは断然ソーダが好きだ。蜂蜜じゃなくて果物の汁で出してるという甘さがたまらないのだ。
仲間はしゅわしゅわした水を甘く味付けしただけだというけれどこのシュワシュワが夏にぴったりだと思うんだけどなー……。
「キーサくん、」
「なんですか?」
「ちょーっとコレ被って、このポーズ取ってみてくれない?」
イイヤマさんが出してきたのはタイシカンの人がジテンシャとかいう乗り物に乗る時に被ってる黄色くて硬い帽子(確かヘルメットと呼んでた)で、小さな板にはおいらと同じ白と灰色の毛並みの猫が片足を上げて指を指している。
「いいっすよ」
試しに硬い帽子を被って同じポーズを取ると「そっくりだねえ」と笑ってくれる。
「でもなんなんすか?」
「この間高槻くんがキーサくんは現場猫に似てるって言ってたなあと思って」
タカツキクンというのは時々ジテンシャでこの辺を走り回ってる若い男の人だったか。
うちの末弟と何度かボール遊びをしたのだがここいらでは一番上手いんじゃないかと噂になってるらしい。
「写真撮っていーい?」
「いいっすよ」
もう一度同じポーズを撮るとパシャっと音がする。
「あとでみんなに送ろー」
この写真はのちに高槻くんや飯山家の人々を通じて地球全土に普及、リアル現場猫という呼び名と共にインターネット上で一大ブームになるのはもう少し先の話である……。
今回は縁あってタイシカンとかいう建物の建て増しの仕事をしている。
「キーサ!塗り土の準備出来てんのか?」
「もう少しっス!」
おいら達はむかし西の国の人間様の下で朝から晩まで家を建てる仕事をしてたが、飯も寝る時間も無い暮らしに嫌気がさして一族郎党逃げ出してきた。
今はどうかって?
「お疲れさまです」
タイシカンで働く人間様の1人であるイイヤマさんが美味そうな匂いをさせながらやってくると、俺たちはにわかにおっ!と声が上がる。
ここの人間様は俺たちに優しくて、よく飲みもんや軽くつまむものを持ってきてくれる。
「今日はソーダですよー」
「ソーダって前に出してくれた甘くてシュワシュワする奴っすよね?!」
「キーサくんが気に入ってくれたみたいだからまた作ってみたんだー」
早速ソーダを受け取るとすぐに日陰に腰を下ろす。
紙製のコップに入った甘くて冷たいソーダはここの仕事についてから新しく出来た俺の好物だった。
地球に行けば毎日飲めるらしいけど、魔術も出来なきゃ文字の読み書きが苦手で異世界に出稼ぎに行く勇気もないおいらはここでしか飲めなさそうだ。
ひとくち飲めば甘さと不思議なしゅわしゅわが喉へと抜けていき、これを毎日飲めたらなあと心底思う。
「やっぱうめえっす!」
「オレは麦茶の方が好きだけどなあ」
「あのすぽーつどりんく?って奴も良いよな、蜂蜜と塩がありゃすぐ出来るっていうし」
仲間達がてんでばらばらにどの飲み物が好きか?という話で盛り上がる。
でもおいらは断然ソーダが好きだ。蜂蜜じゃなくて果物の汁で出してるという甘さがたまらないのだ。
仲間はしゅわしゅわした水を甘く味付けしただけだというけれどこのシュワシュワが夏にぴったりだと思うんだけどなー……。
「キーサくん、」
「なんですか?」
「ちょーっとコレ被って、このポーズ取ってみてくれない?」
イイヤマさんが出してきたのはタイシカンの人がジテンシャとかいう乗り物に乗る時に被ってる黄色くて硬い帽子(確かヘルメットと呼んでた)で、小さな板にはおいらと同じ白と灰色の毛並みの猫が片足を上げて指を指している。
「いいっすよ」
試しに硬い帽子を被って同じポーズを取ると「そっくりだねえ」と笑ってくれる。
「でもなんなんすか?」
「この間高槻くんがキーサくんは現場猫に似てるって言ってたなあと思って」
タカツキクンというのは時々ジテンシャでこの辺を走り回ってる若い男の人だったか。
うちの末弟と何度かボール遊びをしたのだがここいらでは一番上手いんじゃないかと噂になってるらしい。
「写真撮っていーい?」
「いいっすよ」
もう一度同じポーズを撮るとパシャっと音がする。
「あとでみんなに送ろー」
この写真はのちに高槻くんや飯山家の人々を通じて地球全土に普及、リアル現場猫という呼び名と共にインターネット上で一大ブームになるのはもう少し先の話である……。
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