異世界大使館雑録

あかべこ

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大使館2年目・夏(10~11部分)

はじめてのなつ

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「たすけてください!エンプラが倒れてしまったんです!」
昼休憩の直前、在日金羊国大使館からパニック気味の電話を受け取った俺は飯も食わず職場を飛び出した。
霞ヶ関から麻布の病院へと飛び込むとベッドには1人のコンドルの老獣人が眠りその側でロヴィーサ駐日大使が心配そうに見つめていた。
「外務省の飯島です!」
「来てくれて助かります、お医者さんと話をしたんですが非母語だからかよく分からない部分が多くて」
話を聞いてみると診断された病気について医師から説明を受けたものの、聞いていて全く分からなかったんだそうだ。
「代わりに担当医の人と話してきますね」
病院側に事情を説明して担当医の方に話を聞くと、エンプラは熱中症なのだがどれだけ説明してもあんまりピンときてくれなくて困っていたらしい。
「金羊国は日本に比べると暑くないからなぁ」
去年在金羊国大使館から届いた記録によると、金羊国は30℃超える暑さになることは4日ほどしかなくて35度を超える暑さはまずありえないと思われる。
クーラーという概念自体無くても問題なく暮らせる国から来た彼らにとって熱中症という概念はあまりピンとこないのかもしれない。
「話聞いてきました」
「お疲れ様です、どうでしたか?」
「やっぱり暑さで倒れたということみたいですね」
「確かに東京は暑いですけど暑さで人は死なないと思うんですけどねえ」
やっぱりそういう感覚なのか。
となるとクーラーとかもつけていないのかもしれない、今度熱中症対策についてしっかり啓蒙しないとまた誰か倒れそうだな……。
「金羊国はそうでしょうけどこの辺りだと毎年高齢者が暑さで倒れて死ぬ話はよく聞きますよ、涼しい格好してクーラーつけて水分取って下さいね」
「クーラーってもったいない気がするんですよねえ」
「日本人としてはクーラー付けて貰わないと命に関わるので絶対付けてください、としか」
こちらとして倒れられると仕事に差し障るので本当につけてもらわないと困る。
「やっぱり工事してつけてもらうべきなのかなぁ、クーラー」
「…………クーラーつけてなかったんですか?!」
「だってもったいないじゃないですか」
「だからエンプラさんぶっ倒れるんですよ?!つけてください予算なら俺も協力して出してもらえるようにしますから!」
この後金羊国上層部へ在日大使館へのクーラー設置要望書を書くのを手伝い、エンプラさんの退院までに無理やり間に合わせたのは言うまでもない。
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