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大使館2年目・春(9部分)
宇賀神知事の秘密
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河内舞花という女はどことなく底知れぬところがある、と思う。
例えば突然空いた時間に面会のアポを取ってくるところとか。
「と言う訳で受け入れできません?」
「……河内君がそういうのに積極的だとはな」
「私はあの地に恩を売りたいですからね」
「なるほど」
言い分は分かる。
しかしこの土地に受け入れの土壌があるか、と言われれば否と言うほかない。
「君も知っての通り、日本は難民の受け入れが少ない。いくら一時避難と言えど異世界人をまとまった数で受け入れるのは難しいのでは?」
「そこはうちのボスが動いてます」
彼女がボスと呼ぶ老商人の顔を思い出す。
確かにあのご老人は色々と顔が利くし、動いてそうな気はする。
「用地や生活手段については私のご提案で解決できますよね?」
「確かに差し押さえ物件を使えば早いだろうが……」
問題は住民の意見だ。
おそらく世論はかわいらしい見た目の獣人が戦火に巻き込まれるという事実に同情的になるだろう。
しかし突然地元に異世界人が来るという状況を受け入れられるのか?そこが最大のネックだった。
「宇賀神知事人気ありますし、地盤である栃木県北なら無理が効いて受け入れやすいんじゃないんですか?何よりあのエリアなら廃業したホテルが避難先に使える」
「そうは言ってもな」
県議会や対象になりそうな市町村の行政について考えてみるが自分一人で納得させられる自信はない。
何より自分の強権で避難民受け入れを進めれば、避難民と地域住民のトラブルが直接自分の政治生命に直結する。
「……知事、お好きですよね?こういうの」
その声色は疑問形であったがどこか確信めいたものがあった。
「獣人のコスプレを好むコミュニティに出入りしてる知人から、知事に似た人をよく見かけるという話を小耳にはさみまして」
(バレてるな、これは)
背筋が凍りつくような言葉を気にするまいというように、一度大きく呼吸をする。
そう、俺はケモナーだった。
いつからそうだったのかは分からないが、気づくと獣人と言う存在に性欲込みの好意を感じるようになってきた。
家族にも伏せてきた性嗜好をいったいどこで嗅ぎつけてきたというのだろう。
「個人的に好きだからと言ってごり押しするわけにはいかないだろう」
「でも、あちらに行けば自分の好きに包まれることができると思えば恩を売っといていいと思いますけどね」
「……前向きに動いておくよ」
「それ文字通りに受け取りますからね」
例えば突然空いた時間に面会のアポを取ってくるところとか。
「と言う訳で受け入れできません?」
「……河内君がそういうのに積極的だとはな」
「私はあの地に恩を売りたいですからね」
「なるほど」
言い分は分かる。
しかしこの土地に受け入れの土壌があるか、と言われれば否と言うほかない。
「君も知っての通り、日本は難民の受け入れが少ない。いくら一時避難と言えど異世界人をまとまった数で受け入れるのは難しいのでは?」
「そこはうちのボスが動いてます」
彼女がボスと呼ぶ老商人の顔を思い出す。
確かにあのご老人は色々と顔が利くし、動いてそうな気はする。
「用地や生活手段については私のご提案で解決できますよね?」
「確かに差し押さえ物件を使えば早いだろうが……」
問題は住民の意見だ。
おそらく世論はかわいらしい見た目の獣人が戦火に巻き込まれるという事実に同情的になるだろう。
しかし突然地元に異世界人が来るという状況を受け入れられるのか?そこが最大のネックだった。
「宇賀神知事人気ありますし、地盤である栃木県北なら無理が効いて受け入れやすいんじゃないんですか?何よりあのエリアなら廃業したホテルが避難先に使える」
「そうは言ってもな」
県議会や対象になりそうな市町村の行政について考えてみるが自分一人で納得させられる自信はない。
何より自分の強権で避難民受け入れを進めれば、避難民と地域住民のトラブルが直接自分の政治生命に直結する。
「……知事、お好きですよね?こういうの」
その声色は疑問形であったがどこか確信めいたものがあった。
「獣人のコスプレを好むコミュニティに出入りしてる知人から、知事に似た人をよく見かけるという話を小耳にはさみまして」
(バレてるな、これは)
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そう、俺はケモナーだった。
いつからそうだったのかは分からないが、気づくと獣人と言う存在に性欲込みの好意を感じるようになってきた。
家族にも伏せてきた性嗜好をいったいどこで嗅ぎつけてきたというのだろう。
「個人的に好きだからと言ってごり押しするわけにはいかないだろう」
「でも、あちらに行けば自分の好きに包まれることができると思えば恩を売っといていいと思いますけどね」
「……前向きに動いておくよ」
「それ文字通りに受け取りますからね」
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