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大使館2年目・春(9部分)
つわもの、走る。1
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金羊国からの避難者受け入れ要請を受け取ったとき、俺はどう振舞うべきか考えた。
真柴からの書類からは出来る限り受け入れてやってくれないかという痛切な祈りすら籠っていて、彼らへ肩入れしすぎじゃないかという心配とその祈りを叶えてやりたい気持ちが入り混じる。
「霞が関だけだと厳しいですかね」
同席していた毒島がそう呟いた。
「あ、ああ。永田町にも同じ書「そちらにはロヴィーサさんが行ってます、コピーを預けてますので大丈夫かと」
嘉神君がそう口を挟んだ。
実際の被害者になるだろうロヴィーサ大使が行ったのは同情を買うための嘉神君の入れ知恵だろうか、だとすれば彼も真柴と同じように金羊国に肩入れしてるのかもしれない。
「この要請書が通るまで2~3日かかるだろうから、それまではホテル泊でいいかな」
「ありがとうございます」
事務職員に指示を飛ばして彼の当座の宿を確保する。
「この避難民受け入れが永田町で通らなかった場合はどうするんだ?」
「ロヴィーサさんが他国へ受け入れ要請を出すでしょうね」
「まあそうだよな。全部受け入れるというのは無理だろうが、金羊国からの好感度はこの先金羊国との通商に必須だしある程度は受け入れると仮定して動くか」
「その辺りは俺が動きます」
毒島が手を挙げる、まあ国際協力の仕事の長い毒島のほうが詳しいだろうからそうさせてもらおう。
あとは俺や手の空いてる数人で動くとして出来ることはやるしかない。
「あと紅忠の河内さんにもこの件をご連絡できますか、もうそろそろ彼女も入国するタイミングでしょうから」
「そういえばそうだったな」
彼女の連絡先を知らないらしい嘉神君に彼女の名刺を渡すと、そのまま彼は引き上げていく。
「さて、まず何をやるか考えるか」
近くにあった適当な裏紙を引っ張り出して想定される工程を図式化しつつ考える。
まず異世界からの病原菌・ウィルスの排除、そのための検疫施設だな。これは空港や港湾の検疫人員を借りつつ都内の大規模病院や成田の研究所の協力が必要だ。
次に一時避難民受け入れとなると数百人程度が一時的に寝泊まりできる施設。これは都内だときついかもしれないので千葉・埼玉方面への受け入れも考えたほうがいい。
そして衣食住の提供。これはUNHCR(難民支援などを行っている国連の組織)や難民支援を専門とするNPOなどの協力が必須だろう、さすがに俺たちだけだと厳しそうだ。
あとは世論からの後支え、これはそこまで難しくないだろうがいざという時のために一応考えておくか。
これでやることが明確化した。
「……うし、ちょっと頑張るかね」
真柴からの書類からは出来る限り受け入れてやってくれないかという痛切な祈りすら籠っていて、彼らへ肩入れしすぎじゃないかという心配とその祈りを叶えてやりたい気持ちが入り混じる。
「霞が関だけだと厳しいですかね」
同席していた毒島がそう呟いた。
「あ、ああ。永田町にも同じ書「そちらにはロヴィーサさんが行ってます、コピーを預けてますので大丈夫かと」
嘉神君がそう口を挟んだ。
実際の被害者になるだろうロヴィーサ大使が行ったのは同情を買うための嘉神君の入れ知恵だろうか、だとすれば彼も真柴と同じように金羊国に肩入れしてるのかもしれない。
「この要請書が通るまで2~3日かかるだろうから、それまではホテル泊でいいかな」
「ありがとうございます」
事務職員に指示を飛ばして彼の当座の宿を確保する。
「この避難民受け入れが永田町で通らなかった場合はどうするんだ?」
「ロヴィーサさんが他国へ受け入れ要請を出すでしょうね」
「まあそうだよな。全部受け入れるというのは無理だろうが、金羊国からの好感度はこの先金羊国との通商に必須だしある程度は受け入れると仮定して動くか」
「その辺りは俺が動きます」
毒島が手を挙げる、まあ国際協力の仕事の長い毒島のほうが詳しいだろうからそうさせてもらおう。
あとは俺や手の空いてる数人で動くとして出来ることはやるしかない。
「あと紅忠の河内さんにもこの件をご連絡できますか、もうそろそろ彼女も入国するタイミングでしょうから」
「そういえばそうだったな」
彼女の連絡先を知らないらしい嘉神君に彼女の名刺を渡すと、そのまま彼は引き上げていく。
「さて、まず何をやるか考えるか」
近くにあった適当な裏紙を引っ張り出して想定される工程を図式化しつつ考える。
まず異世界からの病原菌・ウィルスの排除、そのための検疫施設だな。これは空港や港湾の検疫人員を借りつつ都内の大規模病院や成田の研究所の協力が必要だ。
次に一時避難民受け入れとなると数百人程度が一時的に寝泊まりできる施設。これは都内だときついかもしれないので千葉・埼玉方面への受け入れも考えたほうがいい。
そして衣食住の提供。これはUNHCR(難民支援などを行っている国連の組織)や難民支援を専門とするNPOなどの協力が必須だろう、さすがに俺たちだけだと厳しそうだ。
あとは世論からの後支え、これはそこまで難しくないだろうがいざという時のために一応考えておくか。
これでやることが明確化した。
「……うし、ちょっと頑張るかね」
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