異世界大使館雑録

あかべこ

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大使館1年目・冬(7~8部分)

クリスマスは祝えない

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「そういえば日本はもうクリスマスか」
「まだ11月だぞ?」
木栖の突然のコメントに思わず首をかしげると「暦が1か月ずれてるだろ」と声がかかる。
「そういえばそうか」
「クリスマスに思い出とかないのか?」
「婚約者と仕事終わりに飯を食いに行くぐらいだったな」
木栖が意外そうな顔をして俺を見る。
「家庭の事情で結婚せずに終わったんだ」
認知長を発症した母親を優先しすぎてフラれたなどと言うのは格好がつかない気がしてそう誤魔化すと、木栖は何とも言い難い複雑な顔をして「……そうだったのか」と告げた。
「それともクリスマスに思い出でもあるのか?」
「親がカトリックだったからな、クリスマスは結構祝ってたんだ」
木栖の家族の事はあまり聞いていなかったがそう言われればクリスマスがどうこうと言い出すのもわかる。
恐らくうちのようにケーキを食べて終わりなどではなく、家族でミサに行ったりしていたのかもしれない。
「もう少し気楽に祝いたかったものだったな」
「じゃあ、ここでは気楽に祝うか?」
「そもそもこっちにクリスマスは無いだろう?」
「だなあ」
そんな話をしながらケーキを食いたくなる。
まだこの町は紅葉の季節だというのに日本はもう真冬なのだと思えば、奇妙な心地だった。


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メリークリスマス!2022
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