異世界大使館雑録

あかべこ

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大使館1年目・夏(4〜5部分)

指輪のゆくえ

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好きだった男とそろいの指輪を買った。
恋愛関係にないとは言え初恋の男から特別な存在として扱われている証拠として購入したそれを、なんとなく俺は首にぶら下げて生活している。
「木栖さんも首飾りをつけるんですね」
日陰に入りシャツを脱いだ俺に先方がそう聞いてくる。
「一つはドックタグ……緊急時の身分証明に使う金属板ですがね」
自衛隊に正式に入隊後に渡されて以降ずっと首にかけたままになったドックタグを近づけると、同じチェーンに通された指輪がちゃりんと金属音を立ててくる。
最近は装身具のイメージも強いが自衛隊や諸外国の軍隊ではまだ現役のそれを見て「なるほど」とつぶやく。
「人間の職業軍人が身分証明を持ち歩くのはどこでも同じなようですね」
「やはり肉親との連絡に用いるからだろうな」
「金属板は無理でもなにかしらの形で導入しておきたいところですね」
「動物の皮革を用いてもいいと思うぞ」
その投げかけにふむと頷いて考え始める。
今まで揃いの指輪というものと縁がなかったので、たとえ偽装であったとしても貰えるのは気分がいい。
(くれた相手は惚れていた男だしな)
風に拭われた汗が乾くのを感じながらぼんやりと大使館本館を見ていると、窓の向こうに真柴がいる。
「少し水を飲んだら再開しよう」
「ええ」
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