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お金と結婚

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仕事終わり、ご祝儀代わりに貰った銅貨で花束を2つ買った。
その花束を持って俺が足を延ばしたのは両親の眠る教会の墓地だった。
「久しぶり」
花束を墓石の前に置くと俺は持っていた敷布を敷いてどしりと報告を始める。
「王都に戻ってきたのに全然来れなくてごめん。実はさ、オリヴァーから結婚を申し込まれたんだ。話したことあるだろ?俺の学校の友達。でも本当にいいのか?とも思うんだ。
まだ俺は親父とおふくろの事故の賠償金も払い終えてない」
うちの両親は王都では中堅の商家の当主だった。
多忙な人だったが俺と弟妹を大事にしてくれる人で、家に居る時はいつも家族で食卓を囲み頻繁に話をしてくれた。
跡取り息子の俺が難関の国立学園へ行きたいと言った時もいい学校へ行けるよう家庭教師を雇ってくれ、妹が結婚せず治癒魔法師になることを望んでも両親は応援していた。間違いなくいい両親だった。
しかし父親が取引のため遠方に行ったとき事故を起こして亡くなり、その事故の際に破損した馬車や同行していた冒険者や店の従業員たちへの賠償金を支払うため母親は店を人手に渡した。
その心労から倒れた母親とまだ職を持っていなかった弟妹を金銭的に支えようと一攫千金を狙える冒険者になった。
「それに俺みたいな平民の男と結婚することでオリヴァーに迷惑かけちまうような気がするんだ」
墓石からの返事はない。
こんなことに意味はないだろうが、それでも言葉は止められなかった。
「学校を出てからそっちこっちうろつきながら日銭を稼いで一攫千金の為に死にかけてきたんだ、オリヴァーが良くても周りからは財産狙いだの男妾だのに思われたっておかしくない。だから俺がこの生活に馴染む前にあいつの気が変わってくれねえかって思ってる。でも、それを俺が言ったところで気持ちが変わったりなんてすると思えねえんだよ。俺はどうしたらいいと思う?」
一瞬その場に沈黙が広がる。
誰も答えてなんかくれないのに問いかけてるなんて馬鹿馬鹿しい。
「そうだよな。答えてなんかくれないか」
そろそろ日が暮れが近い、夕暮れ時の風は冷たくてこれ以上ここにいたら風邪をひいてしまいそうだ。
敷布を回収してから両親の墓に「また来るよ」と声をかけて俺はオリヴァーの元へ戻った。

*****

「この花束、エドウィンが買ってきたの?」
夕食どきに帰ってきたオリヴァーが食卓に飾られた花束に目をつけた。
メイドのサシャでなく俺だと1発で見抜いた理由はわからないが事実なので一応頷いた。
「花売りの子どもが売れ残り抱えてたんで買って帰ったんだよ」
「そうなんだ。エドウィンは優しいね」
オリヴァーが愛おしげに俺を見ながらそう笑いかける。
まるで俺を美術品のように見つめてくるその眼差しにむず痒い気持ちを抱えながら「食わねえんなら貰うぞ」と誤魔化した。
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