9 / 14
9
しおりを挟む
※この回ではホモ/オカマという表現が多用されますが差別的意図はありません。
新宿2丁目という場所は鉄道の駅が遠くてバス停も少なく、アクセスがあまり良くない。そのアクセスの悪さはゲイタウンとして知らない人が迷い込む事を防ぐためなのだ、と俺は勝手に思っている。
花園通りに並行した細い路地を抜けて地下駐車場兼物置に入ると「地下に随分と広い空間があるんだな」と感心してくる。
「これはあくまで車を止めるためのスペースだけどな、目的の店はここの1階になる」
このビルは5階建てで1階から5階まで全てゲイ向けの店舗で通称ホモビルなどと呼ばれるなかなか2丁目らしいビルだったりする。
「こんばんばー
「あら、久しぶりねー!元気にしてたー?」
ドラァグクイーンらしい華やかなドレスとド派手メイクに身を包んだ店のママや店子たちが俺に声をかけてくる。
店の中も開店前でありながらそのド派手さに負けない明るさと鮮やかな彩りに包まれている。
その中でもいっとう飛び抜けているのが蛍光ピンクのロングドレスを纏ってゴールドの髪を結い上げた、この店のオーナーでありママでもある梅野さんだろう。
「梅野ママ、紹介すんね。こいつがシラノ」
「アラ、本当にイケメンなのねぇ~」
ふふふっと楽しそうに梅野ママが笑い、他のドラァグたちもイケメンよ!なかなかいい男ねー!と楽しそうに喋りだす。
当のシラノはド派手なオカマ達の圧に気圧されて唖然としていたので「挨拶!」と俺に小突かれてようやく「よろしくお願いします」と挨拶を口にした。
「ママには話したと思うけどこいつ今記憶喪失でね、色々勉強してる途中だし体も不自由してるから出来るだけ優しくしてやってな」
ここにいるメンバーは見た目こそ派手だが、中身はちゃんとしてるし言えば分かってくれる。
「じゃ、俺メイクしてくるから梅野ママよろしく」
「俺を置いてくのか?!」
シラノを梅野ママに預けようとすると、シラノが不安そうに俺を見る。
「大丈夫、取って食いはしないよ。たぶん」
「たぶんって何だ?!」
****
衣装とメイクを終わらせると、シラノは梅野ママの横に座りながらグラスを磨いていた。
「タモツ」
「この格好してる時はミセスヨザクラって名乗ってるんだけどな。にしてもちゃんと磨けてるな」
「周りが掃除や準備をしてるのに何もしていないと落ち着かないし、色々話しかけられてな……」
それでグラス磨きを任せたのだろう。
俺もそのグラス磨きを手伝いながら一人一人の役割や開店準備で何をしてるのか?などを説明していく。
しばらくしていると店の外に人が並び始め、そろそろ開店時間が近いことを知らせてくる。
「じゃ、そろそろ時間よ!」
新宿2丁目という場所は鉄道の駅が遠くてバス停も少なく、アクセスがあまり良くない。そのアクセスの悪さはゲイタウンとして知らない人が迷い込む事を防ぐためなのだ、と俺は勝手に思っている。
花園通りに並行した細い路地を抜けて地下駐車場兼物置に入ると「地下に随分と広い空間があるんだな」と感心してくる。
「これはあくまで車を止めるためのスペースだけどな、目的の店はここの1階になる」
このビルは5階建てで1階から5階まで全てゲイ向けの店舗で通称ホモビルなどと呼ばれるなかなか2丁目らしいビルだったりする。
「こんばんばー
「あら、久しぶりねー!元気にしてたー?」
ドラァグクイーンらしい華やかなドレスとド派手メイクに身を包んだ店のママや店子たちが俺に声をかけてくる。
店の中も開店前でありながらそのド派手さに負けない明るさと鮮やかな彩りに包まれている。
その中でもいっとう飛び抜けているのが蛍光ピンクのロングドレスを纏ってゴールドの髪を結い上げた、この店のオーナーでありママでもある梅野さんだろう。
「梅野ママ、紹介すんね。こいつがシラノ」
「アラ、本当にイケメンなのねぇ~」
ふふふっと楽しそうに梅野ママが笑い、他のドラァグたちもイケメンよ!なかなかいい男ねー!と楽しそうに喋りだす。
当のシラノはド派手なオカマ達の圧に気圧されて唖然としていたので「挨拶!」と俺に小突かれてようやく「よろしくお願いします」と挨拶を口にした。
「ママには話したと思うけどこいつ今記憶喪失でね、色々勉強してる途中だし体も不自由してるから出来るだけ優しくしてやってな」
ここにいるメンバーは見た目こそ派手だが、中身はちゃんとしてるし言えば分かってくれる。
「じゃ、俺メイクしてくるから梅野ママよろしく」
「俺を置いてくのか?!」
シラノを梅野ママに預けようとすると、シラノが不安そうに俺を見る。
「大丈夫、取って食いはしないよ。たぶん」
「たぶんって何だ?!」
****
衣装とメイクを終わらせると、シラノは梅野ママの横に座りながらグラスを磨いていた。
「タモツ」
「この格好してる時はミセスヨザクラって名乗ってるんだけどな。にしてもちゃんと磨けてるな」
「周りが掃除や準備をしてるのに何もしていないと落ち着かないし、色々話しかけられてな……」
それでグラス磨きを任せたのだろう。
俺もそのグラス磨きを手伝いながら一人一人の役割や開店準備で何をしてるのか?などを説明していく。
しばらくしていると店の外に人が並び始め、そろそろ開店時間が近いことを知らせてくる。
「じゃ、そろそろ時間よ!」
18
お気に入りに追加
57
あなたにおすすめの小説

完結·助けた犬は騎士団長でした
禅
BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。
ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。
しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。
強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ……
※完結まで毎日投稿します

強気なネコは甘く囚われる
ミヅハ
BL
公立御園生(みそのい)学園高等部。
幼稚園から大学までの一貫校であるこの学校には、中等部から存在する生徒会のために作られた独特な風習があった。
高校からの外部入学生である綾瀬真尋は、二週間経っても幼馴染みの長谷川倖人以外と親しく出来ないでいたのだが、ある日の食堂で思わぬ事態に遭遇する。
学校の風習など何も知らない真尋は、生徒会長の香月廉からとんでもない事を言われてしまい大反発。
立場なども忘れて怒鳴りつけるものの意味はなく、それにブチ切れた真尋は、とりあえず関わらないようにしようと逃げ回ることにし───。
俺様美形攻め×生意気強気美人受け
*受けの口悪いです*
※性的描写有り
オリジナル設定あります。

夢では溺愛騎士、現実ではただのクラスメイト
春音優月
BL
真面目でおとなしい性格の藤村歩夢は、武士と呼ばれているクラスメイトの大谷虎太郎に密かに片想いしている。
クラスではほとんど会話も交わさないのに、なぜか毎晩歩夢の夢に出てくる虎太郎。しかも夢の中での虎太郎は、歩夢を守る騎士で恋人だった。
夢では溺愛騎士、現実ではただのクラスメイト。夢と現実が交錯する片想いの行方は――。
2024.02.23〜02.27
イラスト:かもねさま
絶対にお嫁さんにするから覚悟してろよ!!!
toki
BL
「ていうかちゃんと寝てなさい」
「すいません……」
ゆるふわ距離感バグ幼馴染の読み切りBLです♪
一応、有馬くんが攻めのつもりで書きましたが、お好きなように解釈していただいて大丈夫です。
作中の表現ではわかりづらいですが、有馬くんはけっこう見目が良いです。でもガチで桜田くんしか眼中にないので自分が目立っている自覚はまったくありません。
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!(https://www.pixiv.net/artworks/110931919)

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
【完結】雨降らしは、腕の中。
N2O
BL
獣人の竜騎士 × 特殊な力を持つ青年
Special thanks
illustration by meadow(@into_ml79)
※素人作品、ご都合主義です。温かな目でご覧ください。

初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる