7 / 14
7
しおりを挟む ゴクリとつばを飲み込んで、あとを追いかけた。
すばるが奥へ入ったのを確認して、倉庫の中をそっとのぞく。
中は、小さな窓があるが薄暗い。外に比べたらひやっとして、土のような臭いがする。
柄のついた農具がいくつか立ててあって、小さなスコップやバケツが棚に置いてある。
コンクリートの床には野菜・花用園芸土と書かれた袋や肥料が山積みだ。
大小いろいろな鉢やプランターもたくさん置いてある。
研究施設かもしれないな。確かめる必要があるぞ。
思い切って、一歩中に入ったら、
ヌッ。
急に人影が私の前に出てきた。
「ひいいっ」
思わず後ずさったら、足を段差にとられて体が後ろに傾いた。
……あ、やばい。このままだと後頭部を強打コースだ。
と、思ったら、背中に誰かの手がまわって、支えられた。
赤茶色の髪が私の頬にかかる。
長い前髪の下は見えないけれど、目が合った感じがした。
そのまま背中に添えられた手にぐっと力を入れられ、体を引き起こされる。
「……ありがとう、風斗」
お礼を言うと、背中を支えてくれていた手がゆっくりと離れた。
「どういたしまして」
風斗は氷がとけるような、か細い声で答えると、ニッとくちびるを上げた。
「あ、里依ちゃん! ぼく、片付けるから外にいてくれて良かったのに」
奥からすばるがひょっこり出てきた。
「風斗、鉢の整理してくれてありがとう。じゃあ、今から植えようか」
すばるが言うと、風斗がうなずき、土が入った袋を持ち上げて倉庫を出て行った。
「里依ちゃん、今から一緒に苗を植えよう」
「苗?」
「うん。校長先生が今朝持ってきてくれたんだ。行こう」
すばるに引っ張られて倉庫を出る。
風斗がスコップという道具でザクザクと土を掘ってる横で、すばるが立ち止まった。
「じゃあ、里依ちゃん。赤玉土をプランターに入れてくれる?」
すばるが畝の近くに置いてあった袋をよいしょと引っ張った。
近くにあったプランターという入れ物とスコップを渡される。
ふむ。この袋の中をこっちのプランターに入れればいいんだな。
ざばーっ!
勢いよくすべて入れると、すばるがぎょっとした。
「うわあっ、里依ちゃん! 入れすぎだよ! 百パーセント赤玉じゃダメ!」
すばるがあわてて、私の手を止める。
「え、全部入れるのでは?」
「いや……他に土も入れるから……じゃあ、里依ちゃんにはこっちをしてもらおうかな。こっちにはもう土を入れてるから……」
すばるが土が入ったプランターと、黒い小さな入れ物に入った植物を持ってきた。
「里依ちゃん、ミニトマト気になってたよね。ちょうど一ポット残ってるんだ。植える?」
「え……あ、うん」
渡された苗をじいっと見つめる。
これが毒々しい赤い実がなる植物だな……
ふわっと香る独特のにおい。
まだ花も実もなってないのに、こんなにおいがするのか。
「まずは、このミニトマトに水分をあげて……」
すばるの言う通りにじょうろで水をあげ、苗と同じくらいの穴を土にあけ、そっとミニトマトの苗を入れる。
最後に小さい支柱を立てて茎をひもで結んだ。
緑の葉っぱに細い茎。
なんだか頼りない。
強風が吹いたら、折れてしまいそうだ。
こんなか弱い植物が、今からどんな風に育っていくんだろう。
ちょっと興味が出てくるな。
「葉っぱが大きくなって、茎がぐんっと伸びて、花をつけて実がなって。想像するだけでわくわくするよね」
すばるがうれしそうに言って、スコップを置く。
「大きくなってね」
そう言って、すばるが葉っぱをさわると、返事をするように水滴がはねた。
すばるが奥へ入ったのを確認して、倉庫の中をそっとのぞく。
中は、小さな窓があるが薄暗い。外に比べたらひやっとして、土のような臭いがする。
柄のついた農具がいくつか立ててあって、小さなスコップやバケツが棚に置いてある。
コンクリートの床には野菜・花用園芸土と書かれた袋や肥料が山積みだ。
大小いろいろな鉢やプランターもたくさん置いてある。
研究施設かもしれないな。確かめる必要があるぞ。
思い切って、一歩中に入ったら、
ヌッ。
急に人影が私の前に出てきた。
「ひいいっ」
思わず後ずさったら、足を段差にとられて体が後ろに傾いた。
……あ、やばい。このままだと後頭部を強打コースだ。
と、思ったら、背中に誰かの手がまわって、支えられた。
赤茶色の髪が私の頬にかかる。
長い前髪の下は見えないけれど、目が合った感じがした。
そのまま背中に添えられた手にぐっと力を入れられ、体を引き起こされる。
「……ありがとう、風斗」
お礼を言うと、背中を支えてくれていた手がゆっくりと離れた。
「どういたしまして」
風斗は氷がとけるような、か細い声で答えると、ニッとくちびるを上げた。
「あ、里依ちゃん! ぼく、片付けるから外にいてくれて良かったのに」
奥からすばるがひょっこり出てきた。
「風斗、鉢の整理してくれてありがとう。じゃあ、今から植えようか」
すばるが言うと、風斗がうなずき、土が入った袋を持ち上げて倉庫を出て行った。
「里依ちゃん、今から一緒に苗を植えよう」
「苗?」
「うん。校長先生が今朝持ってきてくれたんだ。行こう」
すばるに引っ張られて倉庫を出る。
風斗がスコップという道具でザクザクと土を掘ってる横で、すばるが立ち止まった。
「じゃあ、里依ちゃん。赤玉土をプランターに入れてくれる?」
すばるが畝の近くに置いてあった袋をよいしょと引っ張った。
近くにあったプランターという入れ物とスコップを渡される。
ふむ。この袋の中をこっちのプランターに入れればいいんだな。
ざばーっ!
勢いよくすべて入れると、すばるがぎょっとした。
「うわあっ、里依ちゃん! 入れすぎだよ! 百パーセント赤玉じゃダメ!」
すばるがあわてて、私の手を止める。
「え、全部入れるのでは?」
「いや……他に土も入れるから……じゃあ、里依ちゃんにはこっちをしてもらおうかな。こっちにはもう土を入れてるから……」
すばるが土が入ったプランターと、黒い小さな入れ物に入った植物を持ってきた。
「里依ちゃん、ミニトマト気になってたよね。ちょうど一ポット残ってるんだ。植える?」
「え……あ、うん」
渡された苗をじいっと見つめる。
これが毒々しい赤い実がなる植物だな……
ふわっと香る独特のにおい。
まだ花も実もなってないのに、こんなにおいがするのか。
「まずは、このミニトマトに水分をあげて……」
すばるの言う通りにじょうろで水をあげ、苗と同じくらいの穴を土にあけ、そっとミニトマトの苗を入れる。
最後に小さい支柱を立てて茎をひもで結んだ。
緑の葉っぱに細い茎。
なんだか頼りない。
強風が吹いたら、折れてしまいそうだ。
こんなか弱い植物が、今からどんな風に育っていくんだろう。
ちょっと興味が出てくるな。
「葉っぱが大きくなって、茎がぐんっと伸びて、花をつけて実がなって。想像するだけでわくわくするよね」
すばるがうれしそうに言って、スコップを置く。
「大きくなってね」
そう言って、すばるが葉っぱをさわると、返事をするように水滴がはねた。
33
お気に入りに追加
57
あなたにおすすめの小説

完結·助けた犬は騎士団長でした
禅
BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。
ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。
しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。
強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ……
※完結まで毎日投稿します

神子は再召喚される
田舎
BL
??×神子(召喚者)。
平凡な学生だった有田満は突然異世界に召喚されてしまう。そこでは軟禁に近い地獄のような生活を送り苦痛を強いられる日々だった。
そして平和になり元の世界に戻ったというのに―――― …。
受けはかなり可哀そうです。
夢では溺愛騎士、現実ではただのクラスメイト
春音優月
BL
真面目でおとなしい性格の藤村歩夢は、武士と呼ばれているクラスメイトの大谷虎太郎に密かに片想いしている。
クラスではほとんど会話も交わさないのに、なぜか毎晩歩夢の夢に出てくる虎太郎。しかも夢の中での虎太郎は、歩夢を守る騎士で恋人だった。
夢では溺愛騎士、現実ではただのクラスメイト。夢と現実が交錯する片想いの行方は――。
2024.02.23〜02.27
イラスト:かもねさま

絶対にお嫁さんにするから覚悟してろよ!!!
toki
BL
「ていうかちゃんと寝てなさい」
「すいません……」
ゆるふわ距離感バグ幼馴染の読み切りBLです♪
一応、有馬くんが攻めのつもりで書きましたが、お好きなように解釈していただいて大丈夫です。
作中の表現ではわかりづらいですが、有馬くんはけっこう見目が良いです。でもガチで桜田くんしか眼中にないので自分が目立っている自覚はまったくありません。
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!(https://www.pixiv.net/artworks/110931919)

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
【完結】雨降らしは、腕の中。
N2O
BL
獣人の竜騎士 × 特殊な力を持つ青年
Special thanks
illustration by meadow(@into_ml79)
※素人作品、ご都合主義です。温かな目でご覧ください。

初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる