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引っ越し手続きで役場に行こうと思ったら足の引きちぎれたプレートアーマーの男がいた。
意味が分からず周りを見渡すが特に誰もいなさそうで、質の悪いいたずらという線は消えた。
「えっと、大丈夫ですか?」
「う……」
一応生きてはいる。なら救急車か。
急いで119番通報すると『止血をしてほしいので布で押さえておいてください』と指示が飛ぶ。
車の中に置きっぱなしにしてあるタオルを水で軽くすすいで綺麗にしてから傷口に押し当てているとサイレンの音がしてきた。
救急車に引き継いでさて一安心と思っていたら「付き添いお願いしていいですか?」と言われ、断り切れず便乗することにした。
引きちぎれた足に止血帯を結んだ後、救急救命士の人とふたりがかりでプレートアーマーを外すことになった。
プレートアーマーは激しい戦闘を物語るへこみや傷がついており、もちろんその下の身体もひどく傷だらけであった。
そして引っかかったのは、プレートアーマーが妙に軽い事だった。
(アルミにしちゃー随分と軽いな……?カーボンを金属っぽく塗装してるのか?)
軽さへの違和感を抱きつつ到着した病院では関係性を疑われた。
まあ常識的に考えたら家の前に血だらけのプレートアーマー男はいないもんな、普通。
とにかくそうとしか言えない事を必死に説明すると不服ながらも一応納得してくれた、のだが。
その日の夕方に目覚めたその男にも問題があったのである。
「お名前は?」
「シラノ=ドワイト・ディ・ビッテンフェルトだ」
「ご住所などはわかりますか?」
「サルデニユ帝国帝都第7番街西だな」
「お仕事は?」
「サルデニユ帝国第一騎士団団長をしている……なあ、ここはどこだ?」
「日本という国の病院ですね」
「二ホン……?知らないな。川に落ちたとしても着くのは共和国だろうに……」
どうもこの男、自分を異世界の騎士団長だと思い込んでいるようなのである。
曰く『サルデニユ帝国南部のアレッサンドロ山に住みついたワイバーンの群れを辺境伯軍と合同で倒しに行き、瀕死の状態のワイバーンに足を食いちぎられた』という設定らしい。
「シラノさん、あなたを助けてくれた岩瀬さんとご面識はありますか?」
紺碧の釣り目が俺を頭から足の先まで見た。
いかにも白人系らしい純白の肌に威厳ある面立ちを引き立てる金糸の髪、がっしりとした骨格は傷だらけではあるが実用性に富んだ筋肉に包まれている。
(……よく見ると割といい男の部類だな、こいつ)
イケメンとか超絶男前言う訳ではないが海外の男前アスリート特集があれば掲載されそうな感じだ。
「いや、すまない。見覚えはないな」
「でしょうね。俺もシラノさん?に見覚えはないです」
そうですかと病院の人がため息を吐く。
「となるとご親族に連絡して入院費を工面してもらうのは無理そうですね」
「私の手持ちの金貨で足りるだろうか」
そう言って首からぶら下げていた小さな巾着から数枚の金貨を取り出す。
大きさは500円玉より一回り大きいぐらいだろうか、女性の横顔が彫り上げられたヨーロッパの古い硬貨に似たそれをスマホの画像検索で調べてみるが該当するものはなかった。
「場合によってはこれを貨幣でなく金の価値に換算してのお支払いになりますが大丈夫ですか?
「帝国金貨が使えないのか?!……まあ、使えないならしかたない」
「あと岩瀬さんに願いしたいのですが、シラノさんのお身内の方が見つかるまで付き添いをお願いしてもいいですか?」
「……はあ?」
FIRE生活一日目から、俺は面倒なものを背負い込むことになってしまった。
意味が分からず周りを見渡すが特に誰もいなさそうで、質の悪いいたずらという線は消えた。
「えっと、大丈夫ですか?」
「う……」
一応生きてはいる。なら救急車か。
急いで119番通報すると『止血をしてほしいので布で押さえておいてください』と指示が飛ぶ。
車の中に置きっぱなしにしてあるタオルを水で軽くすすいで綺麗にしてから傷口に押し当てているとサイレンの音がしてきた。
救急車に引き継いでさて一安心と思っていたら「付き添いお願いしていいですか?」と言われ、断り切れず便乗することにした。
引きちぎれた足に止血帯を結んだ後、救急救命士の人とふたりがかりでプレートアーマーを外すことになった。
プレートアーマーは激しい戦闘を物語るへこみや傷がついており、もちろんその下の身体もひどく傷だらけであった。
そして引っかかったのは、プレートアーマーが妙に軽い事だった。
(アルミにしちゃー随分と軽いな……?カーボンを金属っぽく塗装してるのか?)
軽さへの違和感を抱きつつ到着した病院では関係性を疑われた。
まあ常識的に考えたら家の前に血だらけのプレートアーマー男はいないもんな、普通。
とにかくそうとしか言えない事を必死に説明すると不服ながらも一応納得してくれた、のだが。
その日の夕方に目覚めたその男にも問題があったのである。
「お名前は?」
「シラノ=ドワイト・ディ・ビッテンフェルトだ」
「ご住所などはわかりますか?」
「サルデニユ帝国帝都第7番街西だな」
「お仕事は?」
「サルデニユ帝国第一騎士団団長をしている……なあ、ここはどこだ?」
「日本という国の病院ですね」
「二ホン……?知らないな。川に落ちたとしても着くのは共和国だろうに……」
どうもこの男、自分を異世界の騎士団長だと思い込んでいるようなのである。
曰く『サルデニユ帝国南部のアレッサンドロ山に住みついたワイバーンの群れを辺境伯軍と合同で倒しに行き、瀕死の状態のワイバーンに足を食いちぎられた』という設定らしい。
「シラノさん、あなたを助けてくれた岩瀬さんとご面識はありますか?」
紺碧の釣り目が俺を頭から足の先まで見た。
いかにも白人系らしい純白の肌に威厳ある面立ちを引き立てる金糸の髪、がっしりとした骨格は傷だらけではあるが実用性に富んだ筋肉に包まれている。
(……よく見ると割といい男の部類だな、こいつ)
イケメンとか超絶男前言う訳ではないが海外の男前アスリート特集があれば掲載されそうな感じだ。
「いや、すまない。見覚えはないな」
「でしょうね。俺もシラノさん?に見覚えはないです」
そうですかと病院の人がため息を吐く。
「となるとご親族に連絡して入院費を工面してもらうのは無理そうですね」
「私の手持ちの金貨で足りるだろうか」
そう言って首からぶら下げていた小さな巾着から数枚の金貨を取り出す。
大きさは500円玉より一回り大きいぐらいだろうか、女性の横顔が彫り上げられたヨーロッパの古い硬貨に似たそれをスマホの画像検索で調べてみるが該当するものはなかった。
「場合によってはこれを貨幣でなく金の価値に換算してのお支払いになりますが大丈夫ですか?
「帝国金貨が使えないのか?!……まあ、使えないならしかたない」
「あと岩瀬さんに願いしたいのですが、シラノさんのお身内の方が見つかるまで付き添いをお願いしてもいいですか?」
「……はあ?」
FIRE生活一日目から、俺は面倒なものを背負い込むことになってしまった。
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