異世界大使館はじめます

あかべこ

文字の大きさ
上 下
244 / 254
18:Chosen Family

18-4

しおりを挟む
食卓に並んだ寿司をいろんな味の醤油で食べながら、木栖家の話は続いている。
「ところで親父は脳梗塞の後遺症で入院って聞いたけど、具体的にどういう状態なんだ?」
「お袋の話だとまず左腕が動きにくくなってる、これはリハビリでかなり良くなってるっぽいんだけどな。ただもう一つの後遺症が問題なんだよ」
肉寿司をパクリとほうばったあと直元さんがスマホである文章を見せてくる。
「高次脳機能障害、こっちがヤバくてな」
「どうヤバいんだ?」
「人格が変わってるんだよ」
スマホの文章に軽く目を通していると、高次脳機能障害についての概要が目に入る。

・高次脳機能障害
脳の損傷により神経に異常が起こり運動障害や感覚障害が発症することを指す。
主な症状としては記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などがある。
・社会的行動障害
行動や感情を状況に合わせてコントロールできないため、すぐに怒ったり暴力をふるったりする、思い通りにならないと大声をだす。

隣にいた善泰も「そういう事か」と呟いたので、同じようにこの文章を読んだのだろう。
「今の親父はどう変わったんだ?」
「お袋や珠妃の話を聞いてると温厚さとか穏やかさは完全に無くなったな、病院関係者にも怒ると手を出してくるらしいから本当に変わったよ。
正直今のお前を見て親父がどんな反応するのかわからないし、キレて手を出される可能性はある」
病気とはいえ暴力を振るう可能性があると言われるとさすがに穏やかではいられない。
「純粋な腕っぷしなら俺の方が上だろうけど、一応気をつけとく」
チラリと善泰が俺を見たので「俺も気をつけるよ」と声をかけた。
そうなると他の木栖家の人たちに囲まれて俺が針のむしろになるのは回避したい。
「他の木栖家の人たちと病院で会う可能性は?」
「昨日お袋から聞いた限りだと全員いそうなんですよね。俺はハイシーズン避けて帰ってきただけですけど、礼保と茂勝はわざわざこっち来たらしくて」
「そりゃ家族大集合になるか……全員俺に対して当たりキツかったりします?」
「茂勝はそんなにキツくないんじゃないですかね?珠妃はちょっと分かんないです」
木栖の両親と上の弟は俺へのあたりが厳しそうなのが確定したので、もうこれは覚悟するしかない。
というかこんな面倒ごと、飯のひとつふたつで済ませていいのだろうか?
『ナオ、まだ話してるの?』
ディエゴ少年はデザートまで済ませてしまったらしく、もうここにいるのは飽きたという雰囲気だ。
『んー、ぼちぼち終わりにするか』
俺らも話しながら腹8分ぐらいは食ったのでここで終わりにしてもいいだろう。
「兄貴と真柴さんはまだ食べます?」
「もう少し食べられるけど早く出たいんなら良いかな。き、じゃなくて善泰は?」
「……締めに味噌ラーメンとモンブランだけ食べていいか?」
「じゃあ俺とディエゴの分渡しとくから会計頼むわ、病院行きのバスは12時50分発だから40分ぐらいには駅戻ってろよ」
店の時計を見るとまだ12時10分過ぎぐらいで、ラーメンを食べるぐらいの余裕はありそうだ。
2人を見送ってからボックス席で2人きりになる。
「お前もう寿司15皿は食ってるのにその上ラーメンとモンブラン食うのか」
「どうせこの後気力使うんだし、今食っとけば最悪の事態にも耐えられる気がする」
そう言いながら木栖は味噌ラーメンにとろサーモンと甘エビとイカを追加している。
(ラーメンとモンブランだけじゃねえのかよ……)
思わず内心でそんなツッコミを入れていると「何食う?」とごく自然に聞いてきた。
「炙りホタテとうなぎとえんがわ、あとデザートも行くかな」
「お前意外によく食うよな」
「昔からストレスでカロリー消費するタチなんだ」
この後間違いなく消費されるだろう気力を充填するため、俺達は思うがままに寿司を食らった。
しおりを挟む
気に入ってくださったら番外編も読んでみてください
マシュマロで匿名感想も受け付けています、お返事は近況ボードから。
更新告知Twitter@SPBJdHliaztGpT0
感想 0

あなたにおすすめの小説

「魔王のいない世界には勇者は必要ない」と王家に追い出されたので自由に旅をしながら可愛い嫁を探すことにしました

夢幻の翼
ファンタジー
「魔王軍も壊滅したし、もう勇者いらないよね」  命をかけて戦った俺(勇者)に対して魔王討伐の報酬を出し渋る横暴な扱いをする国王。  本当ならばその場で暴れてやりたかったが今後の事を考えて必死に自制心を保ちながら会見を終えた。  元勇者として通常では信じられないほどの能力を習得していた僕は腐った国王を持つ国に見切りをつけて他国へ亡命することを決意する。  その際に思いついた嫌がらせを国王にした俺はスッキリした気持ちで隣町まで駆け抜けた。  しかし、気持ちの整理はついたが懐の寒かった俺は冒険者として生計をたてるために冒険者ギルドを訪れたがもともと勇者として経験値を爆あげしていた僕は無事にランクを認められ、それを期に国外へと向かう訳あり商人の護衛として旅にでることになった。 といった序盤ストーリーとなっております。 追放あり、プチだけどざまぁあり、バトルにほのぼの、感動と恋愛までを詰め込んだ物語となる予定です。 5月30日までは毎日2回更新を予定しています。 それ以降はストック尽きるまで毎日1回更新となります。

アレク・プランタン

かえるまる
ファンタジー
長く辛い闘病が終わった と‥‥転生となった 剣と魔法が織りなす世界へ チートも特典も何もないまま ただ前世の記憶だけを頼りに 俺は精一杯やってみる 毎日更新中!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ド田舎からやってきた少年、初めての大都会で無双する~今まで遊び場にしていたダンジョンは、攻略不可能の規格外ダンジョンだったみたい〜

むらくも航
ファンタジー
ド田舎の村で育った『エアル』は、この日旅立つ。 幼少の頃、おじいちゃんから聞いた話に憧れ、大都会で立派な『探索者』になりたいと思ったからだ。 そんなエアルがこれまでにしてきたことは、たった一つ。 故郷にあるダンジョンで体を動かしてきたことだ。 自然と共に生き、魔物たちとも触れ合ってきた。 だが、エアルは知らない。 ただの“遊び場”と化していたダンジョンは、攻略不可能のSSSランクであることを。 遊び相手たちは、全て最低でもAランクオーバーの凶暴な魔物たちであることを。 これは、故郷のダンジョンで力をつけすぎた少年エアルが、大都会で無自覚に無双し、羽ばたいていく物語──。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。 しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。 彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。 故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。 そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。 これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...