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18:Chosen Family
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食卓に並んだ寿司をいろんな味の醤油で食べながら、木栖家の話は続いている。
「ところで親父は脳梗塞の後遺症で入院って聞いたけど、具体的にどういう状態なんだ?」
「お袋の話だとまず左腕が動きにくくなってる、これはリハビリでかなり良くなってるっぽいんだけどな。ただもう一つの後遺症が問題なんだよ」
肉寿司をパクリとほうばったあと直元さんがスマホである文章を見せてくる。
「高次脳機能障害、こっちがヤバくてな」
「どうヤバいんだ?」
「人格が変わってるんだよ」
スマホの文章に軽く目を通していると、高次脳機能障害についての概要が目に入る。
・高次脳機能障害
脳の損傷により神経に異常が起こり運動障害や感覚障害が発症することを指す。
主な症状としては記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などがある。
・社会的行動障害
行動や感情を状況に合わせてコントロールできないため、すぐに怒ったり暴力をふるったりする、思い通りにならないと大声をだす。
隣にいた善泰も「そういう事か」と呟いたので、同じようにこの文章を読んだのだろう。
「今の親父はどう変わったんだ?」
「お袋や珠妃の話を聞いてると温厚さとか穏やかさは完全に無くなったな、病院関係者にも怒ると手を出してくるらしいから本当に変わったよ。
正直今のお前を見て親父がどんな反応するのかわからないし、キレて手を出される可能性はある」
病気とはいえ暴力を振るう可能性があると言われるとさすがに穏やかではいられない。
「純粋な腕っぷしなら俺の方が上だろうけど、一応気をつけとく」
チラリと善泰が俺を見たので「俺も気をつけるよ」と声をかけた。
そうなると他の木栖家の人たちに囲まれて俺が針のむしろになるのは回避したい。
「他の木栖家の人たちと病院で会う可能性は?」
「昨日お袋から聞いた限りだと全員いそうなんですよね。俺はハイシーズン避けて帰ってきただけですけど、礼保と茂勝はわざわざこっち来たらしくて」
「そりゃ家族大集合になるか……全員俺に対して当たりキツかったりします?」
「茂勝はそんなにキツくないんじゃないですかね?珠妃はちょっと分かんないです」
木栖の両親と上の弟は俺へのあたりが厳しそうなのが確定したので、もうこれは覚悟するしかない。
というかこんな面倒ごと、飯のひとつふたつで済ませていいのだろうか?
『ナオ、まだ話してるの?』
ディエゴ少年はデザートまで済ませてしまったらしく、もうここにいるのは飽きたという雰囲気だ。
『んー、ぼちぼち終わりにするか』
俺らも話しながら腹8分ぐらいは食ったのでここで終わりにしてもいいだろう。
「兄貴と真柴さんはまだ食べます?」
「もう少し食べられるけど早く出たいんなら良いかな。き、じゃなくて善泰は?」
「……締めに味噌ラーメンとモンブランだけ食べていいか?」
「じゃあ俺とディエゴの分渡しとくから会計頼むわ、病院行きのバスは12時50分発だから40分ぐらいには駅戻ってろよ」
店の時計を見るとまだ12時10分過ぎぐらいで、ラーメンを食べるぐらいの余裕はありそうだ。
2人を見送ってからボックス席で2人きりになる。
「お前もう寿司15皿は食ってるのにその上ラーメンとモンブラン食うのか」
「どうせこの後気力使うんだし、今食っとけば最悪の事態にも耐えられる気がする」
そう言いながら木栖は味噌ラーメンにとろサーモンと甘エビとイカを追加している。
(ラーメンとモンブランだけじゃねえのかよ……)
思わず内心でそんなツッコミを入れていると「何食う?」とごく自然に聞いてきた。
「炙りホタテとうなぎとえんがわ、あとデザートも行くかな」
「お前意外によく食うよな」
「昔からストレスでカロリー消費するタチなんだ」
この後間違いなく消費されるだろう気力を充填するため、俺達は思うがままに寿司を食らった。
「ところで親父は脳梗塞の後遺症で入院って聞いたけど、具体的にどういう状態なんだ?」
「お袋の話だとまず左腕が動きにくくなってる、これはリハビリでかなり良くなってるっぽいんだけどな。ただもう一つの後遺症が問題なんだよ」
肉寿司をパクリとほうばったあと直元さんがスマホである文章を見せてくる。
「高次脳機能障害、こっちがヤバくてな」
「どうヤバいんだ?」
「人格が変わってるんだよ」
スマホの文章に軽く目を通していると、高次脳機能障害についての概要が目に入る。
・高次脳機能障害
脳の損傷により神経に異常が起こり運動障害や感覚障害が発症することを指す。
主な症状としては記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などがある。
・社会的行動障害
行動や感情を状況に合わせてコントロールできないため、すぐに怒ったり暴力をふるったりする、思い通りにならないと大声をだす。
隣にいた善泰も「そういう事か」と呟いたので、同じようにこの文章を読んだのだろう。
「今の親父はどう変わったんだ?」
「お袋や珠妃の話を聞いてると温厚さとか穏やかさは完全に無くなったな、病院関係者にも怒ると手を出してくるらしいから本当に変わったよ。
正直今のお前を見て親父がどんな反応するのかわからないし、キレて手を出される可能性はある」
病気とはいえ暴力を振るう可能性があると言われるとさすがに穏やかではいられない。
「純粋な腕っぷしなら俺の方が上だろうけど、一応気をつけとく」
チラリと善泰が俺を見たので「俺も気をつけるよ」と声をかけた。
そうなると他の木栖家の人たちに囲まれて俺が針のむしろになるのは回避したい。
「他の木栖家の人たちと病院で会う可能性は?」
「昨日お袋から聞いた限りだと全員いそうなんですよね。俺はハイシーズン避けて帰ってきただけですけど、礼保と茂勝はわざわざこっち来たらしくて」
「そりゃ家族大集合になるか……全員俺に対して当たりキツかったりします?」
「茂勝はそんなにキツくないんじゃないですかね?珠妃はちょっと分かんないです」
木栖の両親と上の弟は俺へのあたりが厳しそうなのが確定したので、もうこれは覚悟するしかない。
というかこんな面倒ごと、飯のひとつふたつで済ませていいのだろうか?
『ナオ、まだ話してるの?』
ディエゴ少年はデザートまで済ませてしまったらしく、もうここにいるのは飽きたという雰囲気だ。
『んー、ぼちぼち終わりにするか』
俺らも話しながら腹8分ぐらいは食ったのでここで終わりにしてもいいだろう。
「兄貴と真柴さんはまだ食べます?」
「もう少し食べられるけど早く出たいんなら良いかな。き、じゃなくて善泰は?」
「……締めに味噌ラーメンとモンブランだけ食べていいか?」
「じゃあ俺とディエゴの分渡しとくから会計頼むわ、病院行きのバスは12時50分発だから40分ぐらいには駅戻ってろよ」
店の時計を見るとまだ12時10分過ぎぐらいで、ラーメンを食べるぐらいの余裕はありそうだ。
2人を見送ってからボックス席で2人きりになる。
「お前もう寿司15皿は食ってるのにその上ラーメンとモンブラン食うのか」
「どうせこの後気力使うんだし、今食っとけば最悪の事態にも耐えられる気がする」
そう言いながら木栖は味噌ラーメンにとろサーモンと甘エビとイカを追加している。
(ラーメンとモンブランだけじゃねえのかよ……)
思わず内心でそんなツッコミを入れていると「何食う?」とごく自然に聞いてきた。
「炙りホタテとうなぎとえんがわ、あとデザートも行くかな」
「お前意外によく食うよな」
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この後間違いなく消費されるだろう気力を充填するため、俺達は思うがままに寿司を食らった。
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