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17.5:大使館と秋の終わり
17.5 前編
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11月下旬、北の国御一行様の訪日イベントを終えた大使館は年内最後の大仕事を迎えようとしていた。
エルダールの島への医療支援担当人員の交代に伴う各種手続きである。
「納村、金羊国での出国手続きマニュアルの英語版っていつ出来る?」
「2~3日待ってくださいよ!今最終確認してんですから」
「あ、石薙さん医療廃棄物回収の業者を上野の門前に呼ぶって報告ありましたけどアレ本気ですか?」
「本当です。どうも一部の大型機材をこのタイミングで切り替えるようでして、馴染みの業者を直接上野の門前まで呼びたいと」
「大型の廃棄物って言うとあの手術用テントみたいな奴かな。でもあそこ道があんまり大きくないんで一応そこだけ国境なき医師団側に報告してください」
「大使ー、カウサル女公爵から今回の大規模輸送に関して足が出るから追加で金を出してくれって」
「あとで確認する!」
師匠が走ると書いて師走というが、まさに師匠も走る忙しさである。何の師匠かは知らんが。
直接関わる必要がそこまでないはずなのに何故俺たちのところにこの件についての連絡が舞い込んできてるのだろう?
(どいつもこいつも、異世界関係は全部大使館に話回せばいいと思ってるのか!?)
それでも回されたもんはしょうがないのでやるしかない。
隙間隙間に届く北の国との折衝の手紙や紅忠側からの原油やエルダールの島の工芸品による売り上げのについての報告に目を通したあと、日本と金羊国両方の暦を確認する。
(……地球がクリスマスに入るまでは後10日か)
国境なき医師団の人員交代は夏から派遣されていた人たちが家族とクリスマス休暇を過ごせるように日程を調整しており、この交代の仕事が終われば通常業務に戻れる。
なによりもうすぐこの国も年の瀬である、もう少し踏ん張れば冬の休暇が始まるのだ。
そうこうしていると窓の外に緑の鱗が冬の日差しにキラリと輝く。
数秒の思考停止ののちに「ドラゴン?!」と声を上げて扉を開けると、いつぞやの緑色の翼竜と少女がいた。
「ドラゴン郵便でーす、送り主は第二次エルダール諸島医療派遣チームから」
第二次エルダール諸島医療派遣チームというと11月の半ばに出発していった国境なき医師団の人たちの事だ。
冗談交じりにそう告げてきた少女から手紙を受け取り、あて名書きが英語表記であることを確認した。到着報告の手紙と見て間違いないだろう。
「……寒くないのか?」
「山の民は寒さに強いんでね」
革製のタイツにライダースジャケットのような革製の上着一枚というのは少々肌寒い気がするが、本人は平気そうだ。若いからか?それとも革ジャンって意外にあったかいと言うからそれでか?
「じゃ、早く私とスフェーンの日本入国許可を頼むよ」
「上の判断を待ってるところだ」
エルダールの島へ行った後から彼女は日本に興味を持ったようで、エルダールの民や国境なき医師団の人員から仕事を引き受けてはちょこちょこここに来て愛ドラゴンと共に日本を見に行きたいから許可をくれと言っていた。
面倒なので一応上に判断を投げてるが特に返事はない。さすがにドラゴン付きでの入国となると国内での衝撃が大きいので上も判断に悩むのだろう。防疫の問題もあるしな。
「相変わらず判断出ないねえ、まあ次来た時には良い返事が聞けることを祈るよ」
呆れたようなひと言を呟いた後に彼女は緑色のドラゴンと共に飛び立っていった。
入り口にいた嘉神が「いつ見ても新鮮に驚きますね、ドラゴンは」とつぶやく。
「いたのか」
「すいません声も掛けずに」
「いやいいさ。俺もいまだにドラゴンには慣れん」
嘉神に第二次エルダール諸島医療派遣チームからの手紙を渡し、俺も嘉神から渡された書類に目を通す。
これが終わった後はしばらくの通常業務ののちに休暇となる。
「そうだ、休暇の日程僕だけ伸ばさないかって言ってましたけどいいんですか?」
「夏から秋ぐらいまでずっとバタバタしてたしな、それに本省からお前の有給消化率が悪すぎるとお咎めが来た」
「……では、ありがたく数日前倒しで有給取らせていただきます。あとで申請書書きますので」
医療派遣チームの手紙に目を通した嘉神は「それでは失礼します」と部屋を出て行った。
エルダールの島への医療支援担当人員の交代に伴う各種手続きである。
「納村、金羊国での出国手続きマニュアルの英語版っていつ出来る?」
「2~3日待ってくださいよ!今最終確認してんですから」
「あ、石薙さん医療廃棄物回収の業者を上野の門前に呼ぶって報告ありましたけどアレ本気ですか?」
「本当です。どうも一部の大型機材をこのタイミングで切り替えるようでして、馴染みの業者を直接上野の門前まで呼びたいと」
「大型の廃棄物って言うとあの手術用テントみたいな奴かな。でもあそこ道があんまり大きくないんで一応そこだけ国境なき医師団側に報告してください」
「大使ー、カウサル女公爵から今回の大規模輸送に関して足が出るから追加で金を出してくれって」
「あとで確認する!」
師匠が走ると書いて師走というが、まさに師匠も走る忙しさである。何の師匠かは知らんが。
直接関わる必要がそこまでないはずなのに何故俺たちのところにこの件についての連絡が舞い込んできてるのだろう?
(どいつもこいつも、異世界関係は全部大使館に話回せばいいと思ってるのか!?)
それでも回されたもんはしょうがないのでやるしかない。
隙間隙間に届く北の国との折衝の手紙や紅忠側からの原油やエルダールの島の工芸品による売り上げのについての報告に目を通したあと、日本と金羊国両方の暦を確認する。
(……地球がクリスマスに入るまでは後10日か)
国境なき医師団の人員交代は夏から派遣されていた人たちが家族とクリスマス休暇を過ごせるように日程を調整しており、この交代の仕事が終われば通常業務に戻れる。
なによりもうすぐこの国も年の瀬である、もう少し踏ん張れば冬の休暇が始まるのだ。
そうこうしていると窓の外に緑の鱗が冬の日差しにキラリと輝く。
数秒の思考停止ののちに「ドラゴン?!」と声を上げて扉を開けると、いつぞやの緑色の翼竜と少女がいた。
「ドラゴン郵便でーす、送り主は第二次エルダール諸島医療派遣チームから」
第二次エルダール諸島医療派遣チームというと11月の半ばに出発していった国境なき医師団の人たちの事だ。
冗談交じりにそう告げてきた少女から手紙を受け取り、あて名書きが英語表記であることを確認した。到着報告の手紙と見て間違いないだろう。
「……寒くないのか?」
「山の民は寒さに強いんでね」
革製のタイツにライダースジャケットのような革製の上着一枚というのは少々肌寒い気がするが、本人は平気そうだ。若いからか?それとも革ジャンって意外にあったかいと言うからそれでか?
「じゃ、早く私とスフェーンの日本入国許可を頼むよ」
「上の判断を待ってるところだ」
エルダールの島へ行った後から彼女は日本に興味を持ったようで、エルダールの民や国境なき医師団の人員から仕事を引き受けてはちょこちょこここに来て愛ドラゴンと共に日本を見に行きたいから許可をくれと言っていた。
面倒なので一応上に判断を投げてるが特に返事はない。さすがにドラゴン付きでの入国となると国内での衝撃が大きいので上も判断に悩むのだろう。防疫の問題もあるしな。
「相変わらず判断出ないねえ、まあ次来た時には良い返事が聞けることを祈るよ」
呆れたようなひと言を呟いた後に彼女は緑色のドラゴンと共に飛び立っていった。
入り口にいた嘉神が「いつ見ても新鮮に驚きますね、ドラゴンは」とつぶやく。
「いたのか」
「すいません声も掛けずに」
「いやいいさ。俺もいまだにドラゴンには慣れん」
嘉神に第二次エルダール諸島医療派遣チームからの手紙を渡し、俺も嘉神から渡された書類に目を通す。
これが終わった後はしばらくの通常業務ののちに休暇となる。
「そうだ、休暇の日程僕だけ伸ばさないかって言ってましたけどいいんですか?」
「夏から秋ぐらいまでずっとバタバタしてたしな、それに本省からお前の有給消化率が悪すぎるとお咎めが来た」
「……では、ありがたく数日前倒しで有給取らせていただきます。あとで申請書書きますので」
医療派遣チームの手紙に目を通した嘉神は「それでは失礼します」と部屋を出て行った。
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