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17:大使館と王の来訪
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4日目は朝から車で大宮方面を目指す。
最初に到着したのは鉄道博物館の一角にある、鉄道の仕組みを展示するコーナーである。
鉄道がどのような仕組みで動き、開通するとどんなメリットがあるか?を展示と学芸員の解説(もちろん通訳付き)で学んで貰うわけだ。
「事前投資は大きいがその分鉄道があれば物流はかなり良くなるな」
「人や物の大量輸送に関しては船が主流でしたからね、河川から離れたエリアの開発にも一役買ってくれると思います」
時には学芸員を交えてああだこうだと話し合いながら鉄道の仕組みを学び、自国に鉄道があることによるメリットを語り合う。
「では、実際に日本から金羊国に来る列車を見に行きましょうか」
鉄道博物館から車で数分、大宮の鉄道車両基地は東日本各地の鉄道車両が修理洗浄を待っている。
広大な施設の中にはいつも乗る通勤車両から特急・SL・貨物列車に至るまで一揃い並んでおり、俺が鉄道オタクならば目を輝かせているだろう品揃えだ。
「これが僕らのところへやって来るんですね」
ハルトル宰相が青い電気機関車を眺めながらそうつぶやく。
もしかしたら対金羊国用に車両を新造する可能性はあるが特に俺は聞いてないので「多分そうでしょうね」と誤魔化し気味に答えた。
「この列車一編成で1700人も運べる、というのは大きいな……」
「しかもこんなのがこの国では最大1時間に20本以上走ってるわけですからね、その気になれば1時間で一師団を国境まで連れて来れると考えると脅威ですよ」
軍事的な視点で鉄道の誘致のリスクを真剣に考える北の国側に対して、金羊国側はこれがたくさんの人と物を自国に運んでくれることへの夢を感じている様子だ。
(日本は憲法上他国に攻め入ることが出来ない国だから杞憂なんだが……まあいいか)
あの世界には平和憲法なんて概念なさそうだし、その辺は時間をかけて理解してもらうしかなかろう。
「これほどの物を将来的には金羊国にも作るんですよね?」
「そうらしいですね」
「楽しみだなあ」
金羊国は何もないところからこの人が仲間と共に作り上げてきたこの人の故郷だ、きっとその変化を誰よりもこの人が楽しみにしているのだ。
「そういえばこの後は馬を観に行くんですよね?」
「ええ、国王殿下が動物好きと聞きましたので競馬場へ」
****
その日の夕方のことだった。
夜のパーティーを前に息抜きをしていると、柵越しに黒い帽子をした女性と紺青の髪をした男性が話しているのが見えた。
(あの青い髪はヘルペンシュツル宰相補佐官だろうが、相手は誰だ?)
危険人物だと困るので一応確認しておこうと2人の元へ近寄った。
「すいません、少しよろしいですか?」
「あっ、」
黒い帽子の下から覗かせてきたのは可愛らしい顔をした女の人だった。
その顔はどこかで見たことがあるような気がするが、それよりもヘルペンシュルツ宰相補佐官の安全が優先である。
「念の為身元を確認させていただいて良いですか?」
「えっ、と……」
可能な限りにこやかに彼女の目を見ると「すいません」と行って逃げ出した。
「人の邪魔をするのもお仕事なんですか?」
ヘルペンシュツル宰相補佐官は青い瞳を不機嫌に曇らせながら俺にそう聞いてくる。
「念のためですよ。彼女とは何かあったんですか?」
「……可愛いなと思って少し声をかけたら向こうも気に入ってくれた、それだけですよ」
つまりナンパしていたという事らしい。言葉も通じない異世界で女性をナンパとは剛毅というか、なんというか……。
「そうでしたか。彼女を気に入っていてどうしてもまた会いたいと思うのであれば、事前に安全を確認させて下さい。あなたの間に何かあれば両国間の問題になりかねませんし、問題無ければある程度自由に面会できるように手配しますので」
流石に身元もろくに確認出来てない相手と合わせて何かあれば俺の責任問題になるので、しっかり釘を刺しておくと大きなため息をついてから「分かりました」と告げてから彼の知る彼女の名前を告げられる。
(警察に彼女のことを確認してもらうか……)
あとあと問題にならない範囲内であれば勝手にしてくれという気持ちで警察に申し送りのメールを送信した。
最初に到着したのは鉄道博物館の一角にある、鉄道の仕組みを展示するコーナーである。
鉄道がどのような仕組みで動き、開通するとどんなメリットがあるか?を展示と学芸員の解説(もちろん通訳付き)で学んで貰うわけだ。
「事前投資は大きいがその分鉄道があれば物流はかなり良くなるな」
「人や物の大量輸送に関しては船が主流でしたからね、河川から離れたエリアの開発にも一役買ってくれると思います」
時には学芸員を交えてああだこうだと話し合いながら鉄道の仕組みを学び、自国に鉄道があることによるメリットを語り合う。
「では、実際に日本から金羊国に来る列車を見に行きましょうか」
鉄道博物館から車で数分、大宮の鉄道車両基地は東日本各地の鉄道車両が修理洗浄を待っている。
広大な施設の中にはいつも乗る通勤車両から特急・SL・貨物列車に至るまで一揃い並んでおり、俺が鉄道オタクならば目を輝かせているだろう品揃えだ。
「これが僕らのところへやって来るんですね」
ハルトル宰相が青い電気機関車を眺めながらそうつぶやく。
もしかしたら対金羊国用に車両を新造する可能性はあるが特に俺は聞いてないので「多分そうでしょうね」と誤魔化し気味に答えた。
「この列車一編成で1700人も運べる、というのは大きいな……」
「しかもこんなのがこの国では最大1時間に20本以上走ってるわけですからね、その気になれば1時間で一師団を国境まで連れて来れると考えると脅威ですよ」
軍事的な視点で鉄道の誘致のリスクを真剣に考える北の国側に対して、金羊国側はこれがたくさんの人と物を自国に運んでくれることへの夢を感じている様子だ。
(日本は憲法上他国に攻め入ることが出来ない国だから杞憂なんだが……まあいいか)
あの世界には平和憲法なんて概念なさそうだし、その辺は時間をかけて理解してもらうしかなかろう。
「これほどの物を将来的には金羊国にも作るんですよね?」
「そうらしいですね」
「楽しみだなあ」
金羊国は何もないところからこの人が仲間と共に作り上げてきたこの人の故郷だ、きっとその変化を誰よりもこの人が楽しみにしているのだ。
「そういえばこの後は馬を観に行くんですよね?」
「ええ、国王殿下が動物好きと聞きましたので競馬場へ」
****
その日の夕方のことだった。
夜のパーティーを前に息抜きをしていると、柵越しに黒い帽子をした女性と紺青の髪をした男性が話しているのが見えた。
(あの青い髪はヘルペンシュツル宰相補佐官だろうが、相手は誰だ?)
危険人物だと困るので一応確認しておこうと2人の元へ近寄った。
「すいません、少しよろしいですか?」
「あっ、」
黒い帽子の下から覗かせてきたのは可愛らしい顔をした女の人だった。
その顔はどこかで見たことがあるような気がするが、それよりもヘルペンシュルツ宰相補佐官の安全が優先である。
「念の為身元を確認させていただいて良いですか?」
「えっ、と……」
可能な限りにこやかに彼女の目を見ると「すいません」と行って逃げ出した。
「人の邪魔をするのもお仕事なんですか?」
ヘルペンシュツル宰相補佐官は青い瞳を不機嫌に曇らせながら俺にそう聞いてくる。
「念のためですよ。彼女とは何かあったんですか?」
「……可愛いなと思って少し声をかけたら向こうも気に入ってくれた、それだけですよ」
つまりナンパしていたという事らしい。言葉も通じない異世界で女性をナンパとは剛毅というか、なんというか……。
「そうでしたか。彼女を気に入っていてどうしてもまた会いたいと思うのであれば、事前に安全を確認させて下さい。あなたの間に何かあれば両国間の問題になりかねませんし、問題無ければある程度自由に面会できるように手配しますので」
流石に身元もろくに確認出来てない相手と合わせて何かあれば俺の責任問題になるので、しっかり釘を刺しておくと大きなため息をついてから「分かりました」と告げてから彼の知る彼女の名前を告げられる。
(警察に彼女のことを確認してもらうか……)
あとあと問題にならない範囲内であれば勝手にしてくれという気持ちで警察に申し送りのメールを送信した。
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