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17:大使館と王の来訪
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北の国の訪日2日目は、国内外の大手企業の元を訪ねるのがメインとなる。
本来なら王侯貴族のもとに企業の人間が馳せ参じるのが筋だろうが、異世界に社員を派遣するにも人材の選定や社員の安全確保と緊急時の対応の問題などがあるので難しい。
そこでこの訪日に合わせ地球のビジネスに触れるのにちょうどいいと経産省の連中のごり押しである施設が捻じ込んまれた。
「で、最初の見学先がこちらの東京証券取引所……俗に東証と呼ばれるこちらの施設になります」
神田川と隅田川をつなぐ日本橋川のほとり、日本橋兜町の東京証券取引所である。
「ここは何の施設なんだ?」
「専門家をお呼びしています」
東証の担当者(と通訳の人)に丸投げすると、東証ビルの一室で資本主義と株式会社について概要の説明が始まった。
説明は率直に言って苦心を感じるものだった。
内容としては子供向けの解説をベースにイラストやたとえ話を用いており、異世界人にもそこそこわかりやすい解説となっている。
ただあちらにはない概念が多すぎてすべてにちょうどいい訳語が作れず、いくつかの単語は訳語を作らずそのまま日本語を用いるという荒業を使っていた。
(……まあ訳語作るのって大変らしいしな)
翻訳に苦心しただろう関係者の安寧を祈りたい。
説明が終われば東証の見学となる。
ちょうど取引の開始時刻なので、貴族たちはチッカー(よくテレビで見る円形につながれた細長い液晶に企業名と株価が流れるあれ)に目まぐるしく流れる取引情報が流れるのを茫然と見守っている。
「この国じゅうの会社の企業の取引がたったこれだけの人数によって把握されているとは……」
ヘルペンシュルツ宰相補佐官は茫然としたようにガラス越しのマーケットセンターを覗き、再びチッカーに目を向ける。
ここで4千社近いの株式売買が管理されていると思うと確かに驚異的と言えるだろう。
ましてあらゆるものを人力に頼ってきた異世界では高度な頭脳労働を高度な教育を受けた数百人で管理監督しており、機械化されて少人数で動かせることの利便性への憧れは大きかろう。
「とは言ってもこれは国に1つ2つしかない場所だ、庶民や一般企業はここまで企業化されてるのか?」
「一般庶民がこれほど膨大な情報を扱うにも教育も必要ですしね」
国王と宰相補佐官の質問にはこう答えればいい。
「それはこの次行く場所で分かりますよ」
****
お台場にある大きなビルの入り口に出雲崎石油と刻まれた石碑が光る。
異世界産原油の精製と国内での販売を担う出雲崎石油の東京本社ビルには社長以下東京本社にいた上層部が一通り並んで待ちわびていた。
「この日を一日千秋の思いで待ちわびておりました」
出雲崎石油の社長からの挨拶もそこそこに社内を軽く見学し、東京本社で一番大きいという会議室に招かれる。
(……なんで俺もセットなんだろうな?)
とりあえず一番後ろについて歩いていると「原油と言うのはここまで売れるのですね」「ええ、驚きです」と言うつぶやきが聞こえる。
誰が行ったのかと思えば目前にいたセナトロフ男爵とボルヤノフ騎士爵だ。
貴族と言えど爵位が低いセナトロフ男爵とボルヤノフ騎士爵とってお金になるという事は本当に大きいのだろう。
「兄上、買取価格を上げて貰えれば民も潤い我々も税収を増やせるやもしれませんね」
「金があれば冬を越すのも楽になる。アレは臭いし畑をダメにするが、大きな建物を作れるほど売れるのなら買取価格を上げる交渉をしてもいいのかもな」
……日本人としてはほどほどにしてほしい相談をしているのを小耳に挟みつつ、本社の見学は進むのであった。
本来なら王侯貴族のもとに企業の人間が馳せ参じるのが筋だろうが、異世界に社員を派遣するにも人材の選定や社員の安全確保と緊急時の対応の問題などがあるので難しい。
そこでこの訪日に合わせ地球のビジネスに触れるのにちょうどいいと経産省の連中のごり押しである施設が捻じ込んまれた。
「で、最初の見学先がこちらの東京証券取引所……俗に東証と呼ばれるこちらの施設になります」
神田川と隅田川をつなぐ日本橋川のほとり、日本橋兜町の東京証券取引所である。
「ここは何の施設なんだ?」
「専門家をお呼びしています」
東証の担当者(と通訳の人)に丸投げすると、東証ビルの一室で資本主義と株式会社について概要の説明が始まった。
説明は率直に言って苦心を感じるものだった。
内容としては子供向けの解説をベースにイラストやたとえ話を用いており、異世界人にもそこそこわかりやすい解説となっている。
ただあちらにはない概念が多すぎてすべてにちょうどいい訳語が作れず、いくつかの単語は訳語を作らずそのまま日本語を用いるという荒業を使っていた。
(……まあ訳語作るのって大変らしいしな)
翻訳に苦心しただろう関係者の安寧を祈りたい。
説明が終われば東証の見学となる。
ちょうど取引の開始時刻なので、貴族たちはチッカー(よくテレビで見る円形につながれた細長い液晶に企業名と株価が流れるあれ)に目まぐるしく流れる取引情報が流れるのを茫然と見守っている。
「この国じゅうの会社の企業の取引がたったこれだけの人数によって把握されているとは……」
ヘルペンシュルツ宰相補佐官は茫然としたようにガラス越しのマーケットセンターを覗き、再びチッカーに目を向ける。
ここで4千社近いの株式売買が管理されていると思うと確かに驚異的と言えるだろう。
ましてあらゆるものを人力に頼ってきた異世界では高度な頭脳労働を高度な教育を受けた数百人で管理監督しており、機械化されて少人数で動かせることの利便性への憧れは大きかろう。
「とは言ってもこれは国に1つ2つしかない場所だ、庶民や一般企業はここまで企業化されてるのか?」
「一般庶民がこれほど膨大な情報を扱うにも教育も必要ですしね」
国王と宰相補佐官の質問にはこう答えればいい。
「それはこの次行く場所で分かりますよ」
****
お台場にある大きなビルの入り口に出雲崎石油と刻まれた石碑が光る。
異世界産原油の精製と国内での販売を担う出雲崎石油の東京本社ビルには社長以下東京本社にいた上層部が一通り並んで待ちわびていた。
「この日を一日千秋の思いで待ちわびておりました」
出雲崎石油の社長からの挨拶もそこそこに社内を軽く見学し、東京本社で一番大きいという会議室に招かれる。
(……なんで俺もセットなんだろうな?)
とりあえず一番後ろについて歩いていると「原油と言うのはここまで売れるのですね」「ええ、驚きです」と言うつぶやきが聞こえる。
誰が行ったのかと思えば目前にいたセナトロフ男爵とボルヤノフ騎士爵だ。
貴族と言えど爵位が低いセナトロフ男爵とボルヤノフ騎士爵とってお金になるという事は本当に大きいのだろう。
「兄上、買取価格を上げて貰えれば民も潤い我々も税収を増やせるやもしれませんね」
「金があれば冬を越すのも楽になる。アレは臭いし畑をダメにするが、大きな建物を作れるほど売れるのなら買取価格を上げる交渉をしてもいいのかもな」
……日本人としてはほどほどにしてほしい相談をしているのを小耳に挟みつつ、本社の見学は進むのであった。
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