異世界大使館はじめます

あかべこ

文字の大きさ
上 下
230 / 254
17:大使館と王の来訪

17-12

しおりを挟む
首相官邸での歓談を終えると、再び車で今度は国会議事堂にある憲政記念館の見学となる。
これは民主主義的な国づくりを目指すハルトル宰相へのサービスであり、北の国の御一行様に日本の民主主義を知ってもらいこの先の付き合いの参考としてもらう事が主目的となる。
専門家(とそれについてる通訳)の案内で憲政記念館を見学してる間、俺たちは近くの公園で少しばかりの休憩を取ることにした。
「にしてもこの距離を車移動ってもったいないよな」
「しょうがないだろ、上野公園と違ってこの辺は狙撃や爆破があり得る」
「こんな官公庁街のど真ん中でどこから狙撃するんだよ……」
思わずマジなツッコミをしてしまったが、専門家である木栖が可能だと言うなら可能なのかもしれない。もう考えるのはやめよう。
「この後ってどうなってるんだっけ」
「確かこのあと4時に迎賓館赤坂離宮に入って休憩と着替えを済ませて、7時から宮中晩餐会じゃなかったか?」
全く気が休まらなくてげんなりした分になる。
しかもこれがあと5日も続くのだと思うと本当に勘弁してほしい気持ちになる。
「割と現時点できついな」
「諦めろ、公務員の宿命みたいなもんだ」
木栖に宥められながらまだ少し暑さの残る秋の空を眺めていた。

****

さて、見学を終えた北の国御一行は再び車を走らせて赤坂の迎賓館へ入る。
赤坂の迎賓館は国宝指定されているだけあり、煌びやかで華やかさに溢れていて貴族たちから中々ウケが良かった。
俺のようなド庶民は備品など下手に触って壊すのが恐ろしいので触れないが、生れながらの王侯貴族や完璧な教育を受けた従者たちは気にすることなくひょいひょい触ったりしているところに生まれという身分の違いを感じてしまう。
軽く建物内の案内をした後にそれぞれ振り分けられた部屋に各人とその従者が入っていく、のだが。

「何故ハルトルを違う建物に泊めることにした?」

いま、俺は北の国の王にめちゃくちゃ威圧的に睨まれていた。
どうやら北の国御一行を本館に、ハルトル宰相たち金羊国の人たちを和風別館に泊まることにしたのがこの王はお気に召さなかったようなのである。
「昔はどうであれ今は一国の宰相閣下です、同じ部屋にすることは失礼と判断しました」
「本人はなんと言ってる?」
「日本側の判断に従う、と」
当事者たちに言うつもりはないが、これは金羊国側からの依頼でもある。
一緒の部屋にしたら離れ難くなって行って連れて帰ろうとする気がするから別の部屋にしてくれとグウズルン情報管理官に口を酸っぱくして言われたのだ。
俺達は別の国の人間なのだし当然別の部屋だろ?と思ってたので不思議に感じつつ別の建物に振り分けていたが、まさかこんな不満が出るとは思わなかった。
「……あいつは俺と一緒に寝るのが嫌なのか」
「その辺りは存じ上げませんが、一緒の布団に寝ると愛玩動物扱いされてるようで抵抗感があるのかもしれませんね。あくまで現在のお二人は友人として対等な関係なわけですから」
そんなようなことを言って見ると、不満は残るものまあ一応納得はしてくれたようで「無理を言ってすまなかった」と答えてさっさと戻っていってしまった。
とりあえず今回はなんとかなるはずだ、次以降があるとすればその時は相談しておく必要があるだろうが。
(宮中晩餐会の前に怖ぇえもん見せられたな……)
この後行われる皇室主催の宮中晩餐会でもなんやかんや走り回る予定となっていた俺は、ぐったりした心を無理やり奮い立たせて晩餐会の準備に向かうのだった
しおりを挟む
気に入ってくださったら番外編も読んでみてください
マシュマロで匿名感想も受け付けています、お返事は近況ボードから。
更新告知Twitter@SPBJdHliaztGpT0
感想 0

あなたにおすすめの小説

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。 しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。 彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。 故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。 そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。 これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

俺がいなくても世界は回るそうなので、ここから出ていくことにしました。ちょっと異世界にでも行ってみます。ウワサの重来者(甘口)

おいなり新九郎
ファンタジー
 ハラスメント、なぜだかしたりされちゃったりする仕事場を何とか抜け出して家に帰りついた俺。帰ってきたのはいいけれど・・・。ずっと閉じ込められて開く異世界へのドア。ずっと見せられてたのは、俺がいなくても回るという世界の現実。あーここに居るのがいけないのね。座り込むのも飽きたし、分かった。俺、出ていくよ。その異世界って、また俺の代わりはいくらでもいる世界かな? 転生先の世界でもケガで職を追われ、じいちゃんの店に転がり込む俺・・・だけど。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界無宿

ゆきねる
ファンタジー
運転席から見た景色は、異世界だった。 アクション映画への憧れを捨て切れない男、和泉 俊介。 映画の影響で筋トレしてみたり、休日にエアガンを弄りつつ映画を観るのが楽しみな男。 訳あって車を購入する事になった時、偶然通りかかったお店にて運命の出会いをする。 一目惚れで購入した車の納車日。 エンジンをかけて前方に目をやった時、そこは知らない景色(異世界)が広がっていた… 神様の道楽で異世界転移をさせられた男は、愛車の持つ特別な能力を頼りに異世界を駆け抜ける。 アクション有り! ロマンス控えめ! ご都合主義展開あり! ノリと勢いで物語を書いてますので、B級映画を観るような感覚で楽しんでいただければ幸いです。 不定期投稿になります。 投稿する際の時間は11:30(24h表記)となります。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

異世界転移~治癒師の日常

コリモ
ファンタジー
ある日看護師の真琴は仕事場からの帰り道、地面が陥没する事故に巻き込まれた。しかし、いつまでたっても衝撃が来ない。それどころか自分の下に草の感触が… こちらでは初投稿です。誤字脱字のご指摘ご感想お願いします なるだけ1日1話UP以上を目指していますが、用事がある時は間に合わないこともありますご了承ください(2017/12/18) すいません少し並びを変えております。(2017/12/25) カリエの過去編を削除して別なお話にしました(2018/01/15) エドとの話は「気が付いたら異世界領主〜ドラゴンが降り立つ平原を管理なんてムリだよ」にて掲載させてもらっています。(2018/08/19)

処理中です...