227 / 254
17:大使館と王の来訪
17-9
しおりを挟む
次の訪問地は上野の国立科学館である。
ちゃんと巡ろうと思うと2時間でも3時間でも費やされる場所であるが、今回は地球館のみを回るコースになる。動物は上野動物園で見てるから動物関係は軽くさらう程度だ。
ここも学芸員が案内人となり、俺たちは後ろでフォローを入れつつのんびり展示物を眺める時間となる。
「科博なんて子どものころ以来だな」
「確かに」
隕石や化石についての説明に対する北の国御一行の反応は様々で、興味のある人とない人に別れるようだった。
興味のない人にとってはただの変な石ころでしかないので変なもんを置いておくのだなあ程度であったが、興味のある人は太古の生物への浪漫にそわそわする人も見かけていた。
偶然近くにいた使用人の女性などはちょうど近くにいた俺に「この昔の動物の骨は私でも見つけられますか?」などと熱量を必死に抑えながら聞いてきた。
「私は専門家ではありませんので分かりませんが、一般の人が見つける例もありますから見つけられる可能性はありますよ」
「探すコツなどはご存じありませんか?」
「……後で専門家に聞いてみます」
まあ化石に興味のある貴族もいるようだしコツをまとめてもらった紙を多めに印刷して、このメイドさんにも渡しておけばよかろう。それを読んで本当にやるかどうかは本人次第だ。
生物保全についての展示では、いきなり学芸員に呼ばれて防疫が生物保全と関わっている事を説明させられて肝を冷やす一幕もあったがどうにか切り抜けると二階へ上がっていく。
科博見学中に最も反応があったのはやはり2階の科学技術についての展示だった。
方位磁石や験潮儀(海面の昇降を測る機械)は貿易立国である南の国で現在研究されているものの完成形であるし、織機や計算機などは持ち込めば仕事を楽にしてくれるだろう産物だった。
時間の関係で詳細に書き写せない事を残念がる記録者や、卓上計算機が欲しいと俺たちに無言の圧力をかけてくる貴族たちを見てどうしようかと木栖と顔を見合わせた。
(太陽光パネル式の電卓を持ち帰らせること自体は別に否定しないんだが、あっちの世界の数学の発展が止まらないか……?)
電池を使わない四則演算のみのタイプなら影響は大きくないだろうし、キーの数字だけシールで大陸標準語の数字に置き換えればいいか?四則演算記号は割り算以外はこちらと同じだから数字だけ置き換えれば使えるはずだ。
あちらの数学の発展を妨げないよう機能を限界まで落として貰う事になるかもしれないが俺は知らん。
隙を見て飯島に電卓の事を伝えておくと『了解』とのみ返事が来た。
あとはもう飯島とお偉方が決めてくれ。俺は知らん。
と言う訳で科博の見学を終えて建物を一歩出れば、公園通りに面した駐車場が高そうな車で埋まっている。
「これに乗るんですんね?」
そう声をかけてきたのはハルトル宰相だ。
「はい。それぞれの車に各家の紋章旗を刺してありますが、その車と運転士はこの旅の間専任となります。言葉はあまり出来ませんが意思疎通補助のためのカードを車内にご用意してありますので、ちょっとした意思表示にお役立てください」
車には事前に『トイレに行きたい』『後どのくらいで到着するのか』『車内が寒い/暑い』などのメッセージが日本語と大陸標準語でまとめられた挿絵付きカードを用意している。運転手側も挨拶やイエス/ノーぐらいは話せるし、無理なら車内に乗せた無線機などで通訳を呼んで通訳して貰えるよう準備しているからなんとかなるだろう。
「ご丁寧にありがとうございます」
ハルトル宰相は自国の紋章と北の国の王家の紋章入りの車を確認すると「行きましょう」と北の国の王に誘いを掛けて乗り込んでいくと、他の人達もゾロゾロと車に向かっていく。
特別に用意した防弾ガラス入りの黒いセンチュリーには北の国の国王とハルトル宰相を、北の国の宰相補佐官や貴族には防弾ガラス入りの黒いレクサスを、俺たちと車に乗せられなかった従者と荷物を大型バスに詰め込むと車は一路次の目的地へと走り出して行った。
ちゃんと巡ろうと思うと2時間でも3時間でも費やされる場所であるが、今回は地球館のみを回るコースになる。動物は上野動物園で見てるから動物関係は軽くさらう程度だ。
ここも学芸員が案内人となり、俺たちは後ろでフォローを入れつつのんびり展示物を眺める時間となる。
「科博なんて子どものころ以来だな」
「確かに」
隕石や化石についての説明に対する北の国御一行の反応は様々で、興味のある人とない人に別れるようだった。
興味のない人にとってはただの変な石ころでしかないので変なもんを置いておくのだなあ程度であったが、興味のある人は太古の生物への浪漫にそわそわする人も見かけていた。
偶然近くにいた使用人の女性などはちょうど近くにいた俺に「この昔の動物の骨は私でも見つけられますか?」などと熱量を必死に抑えながら聞いてきた。
「私は専門家ではありませんので分かりませんが、一般の人が見つける例もありますから見つけられる可能性はありますよ」
「探すコツなどはご存じありませんか?」
「……後で専門家に聞いてみます」
まあ化石に興味のある貴族もいるようだしコツをまとめてもらった紙を多めに印刷して、このメイドさんにも渡しておけばよかろう。それを読んで本当にやるかどうかは本人次第だ。
生物保全についての展示では、いきなり学芸員に呼ばれて防疫が生物保全と関わっている事を説明させられて肝を冷やす一幕もあったがどうにか切り抜けると二階へ上がっていく。
科博見学中に最も反応があったのはやはり2階の科学技術についての展示だった。
方位磁石や験潮儀(海面の昇降を測る機械)は貿易立国である南の国で現在研究されているものの完成形であるし、織機や計算機などは持ち込めば仕事を楽にしてくれるだろう産物だった。
時間の関係で詳細に書き写せない事を残念がる記録者や、卓上計算機が欲しいと俺たちに無言の圧力をかけてくる貴族たちを見てどうしようかと木栖と顔を見合わせた。
(太陽光パネル式の電卓を持ち帰らせること自体は別に否定しないんだが、あっちの世界の数学の発展が止まらないか……?)
電池を使わない四則演算のみのタイプなら影響は大きくないだろうし、キーの数字だけシールで大陸標準語の数字に置き換えればいいか?四則演算記号は割り算以外はこちらと同じだから数字だけ置き換えれば使えるはずだ。
あちらの数学の発展を妨げないよう機能を限界まで落として貰う事になるかもしれないが俺は知らん。
隙を見て飯島に電卓の事を伝えておくと『了解』とのみ返事が来た。
あとはもう飯島とお偉方が決めてくれ。俺は知らん。
と言う訳で科博の見学を終えて建物を一歩出れば、公園通りに面した駐車場が高そうな車で埋まっている。
「これに乗るんですんね?」
そう声をかけてきたのはハルトル宰相だ。
「はい。それぞれの車に各家の紋章旗を刺してありますが、その車と運転士はこの旅の間専任となります。言葉はあまり出来ませんが意思疎通補助のためのカードを車内にご用意してありますので、ちょっとした意思表示にお役立てください」
車には事前に『トイレに行きたい』『後どのくらいで到着するのか』『車内が寒い/暑い』などのメッセージが日本語と大陸標準語でまとめられた挿絵付きカードを用意している。運転手側も挨拶やイエス/ノーぐらいは話せるし、無理なら車内に乗せた無線機などで通訳を呼んで通訳して貰えるよう準備しているからなんとかなるだろう。
「ご丁寧にありがとうございます」
ハルトル宰相は自国の紋章と北の国の王家の紋章入りの車を確認すると「行きましょう」と北の国の王に誘いを掛けて乗り込んでいくと、他の人達もゾロゾロと車に向かっていく。
特別に用意した防弾ガラス入りの黒いセンチュリーには北の国の国王とハルトル宰相を、北の国の宰相補佐官や貴族には防弾ガラス入りの黒いレクサスを、俺たちと車に乗せられなかった従者と荷物を大型バスに詰め込むと車は一路次の目的地へと走り出して行った。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説

「魔王のいない世界には勇者は必要ない」と王家に追い出されたので自由に旅をしながら可愛い嫁を探すことにしました
夢幻の翼
ファンタジー
「魔王軍も壊滅したし、もう勇者いらないよね」
命をかけて戦った俺(勇者)に対して魔王討伐の報酬を出し渋る横暴な扱いをする国王。
本当ならばその場で暴れてやりたかったが今後の事を考えて必死に自制心を保ちながら会見を終えた。
元勇者として通常では信じられないほどの能力を習得していた僕は腐った国王を持つ国に見切りをつけて他国へ亡命することを決意する。
その際に思いついた嫌がらせを国王にした俺はスッキリした気持ちで隣町まで駆け抜けた。
しかし、気持ちの整理はついたが懐の寒かった俺は冒険者として生計をたてるために冒険者ギルドを訪れたがもともと勇者として経験値を爆あげしていた僕は無事にランクを認められ、それを期に国外へと向かう訳あり商人の護衛として旅にでることになった。
といった序盤ストーリーとなっております。
追放あり、プチだけどざまぁあり、バトルにほのぼの、感動と恋愛までを詰め込んだ物語となる予定です。
5月30日までは毎日2回更新を予定しています。
それ以降はストック尽きるまで毎日1回更新となります。

アレク・プランタン
かえるまる
ファンタジー
長く辛い闘病が終わった
と‥‥転生となった
剣と魔法が織りなす世界へ
チートも特典も何もないまま
ただ前世の記憶だけを頼りに
俺は精一杯やってみる
毎日更新中!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ド田舎からやってきた少年、初めての大都会で無双する~今まで遊び場にしていたダンジョンは、攻略不可能の規格外ダンジョンだったみたい〜
むらくも航
ファンタジー
ド田舎の村で育った『エアル』は、この日旅立つ。
幼少の頃、おじいちゃんから聞いた話に憧れ、大都会で立派な『探索者』になりたいと思ったからだ。
そんなエアルがこれまでにしてきたことは、たった一つ。
故郷にあるダンジョンで体を動かしてきたことだ。
自然と共に生き、魔物たちとも触れ合ってきた。
だが、エアルは知らない。
ただの“遊び場”と化していたダンジョンは、攻略不可能のSSSランクであることを。
遊び相手たちは、全て最低でもAランクオーバーの凶暴な魔物たちであることを。
これは、故郷のダンジョンで力をつけすぎた少年エアルが、大都会で無自覚に無双し、羽ばたいていく物語──。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~
味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。
しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。
彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。
故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。
そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。
これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。
女神様の使い、5歳からやってます
めのめむし
ファンタジー
小桜美羽は5歳の幼女。辛い境遇の中でも、最愛の母親と妹と共に明るく生きていたが、ある日母を事故で失い、父親に放置されてしまう。絶望の淵で餓死寸前だった美羽は、異世界の女神レスフィーナに救われる。
「あなたには私の世界で生きる力を身につけやすくするから、それを使って楽しく生きなさい。それで……私のお友達になってちょうだい」
女神から神気の力を授かった美羽は、女神と同じ色の桜色の髪と瞳を手に入れ、魔法生物のきんちゃんと共に新たな世界での冒険に旅立つ。しかし、転移先で男性が襲われているのを目の当たりにし、街がゴブリンの集団に襲われていることに気づく。「大人の男……怖い」と呟きながらも、ゴブリンと戦うか、逃げるか——。いきなり厳しい世界に送られた美羽の運命はいかに?
優しさと試練が待ち受ける、幼い少女の異世界ファンタジー、開幕!
基本、ほのぼの系ですので進行は遅いですが、着実に進んでいきます。
戦闘描写ばかり望む方はご注意ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる