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17:大使館と王の来訪
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最初の目的地は上野の森巡りである。
歴史上初めて異世界と繋がった上野のこの辺りは日本側にとって重要な場所であるし、日本的なものに触れるのに色々都合がいいのだ。
屏風坂通りを降りて上野恩賜公園に入ると人気は随分と希薄だ。御一行の雑談や遠くに聞こえるマスメディアのヘリの音くらいしか聞こえてこない上野公園は初めてだった。
(確か国立西洋美術館より北を昨日の午後から今日の昼過ぎまで全面封鎖と言ってたな)
公園という場所柄全面封鎖は避けたようであるが、確実に歩き回るエリアは安全保障のため封鎖中なのだ。
やり過ぎと言えなくもないがそれだけ日本側は原油を握る北の国へ気を遣っていると言える。
最初に足を踏み入れるのは上野動物園である。
「ここは?」
「動物園という日本の国内外の動物を見学することが出来る施設になります。本日は御一行のために貸し切りだそうですよ」
「心遣い有り難く承る、これは誰の所有だ?」
「行政が所有し、国民に広く公開された施設になります」
後ろにいる人たちが貴族の趣味の類でないことに驚きを見せているのに気づく。
世界最古の動物園であるオーストリアのシェーンブルン動物園はその原型となる施設が1500年代には既にあったと言うし、一般公開されてないだけで似たようなものはあちらにもあるのかもしれない。
「それをわざわざ貸切か。有り難く受け取ろう」
「今回は動物園の責任者の話を聞きながら回れるように準備してあります、こちらの道具を耳に装着して頂けますか?」
北の国王殿下に手渡したのはBluetoothタイプの骨伝導式イヤホンだ。これを通じて案内担当者の話を聞けるように事前に準備しておいた。
自分の耳につけてる様子を見せながら説明するが、全くピンと来ていないようだったのでどうするかと逡巡してしまう。骨伝導の仕組みから説明するにも上手く説明出来る気がしないしな……と悩んでいたその時だった。
「つけてみましたが、これで聞こえるんですね?」
シェーベイル宰相補佐官が骨伝導イヤホンを耳につけた状態になっていた。
「はい。これならば説明を聞きつつお話も出来ますからね。この旅の間は何度か装着をお願いすることになりますが、よろしいですか?」
シェーベイル宰相補佐官がつけている様子を見て他の人たちも恐る恐るつけてくれ、本当に聞こえる事を示すためイヤホンと俺のスマホをBluetoothを繋いでクラシックを流してみると全員が目を見開いて周囲を見渡した。
「こんなに鮮明に聞こえるのに耳を塞がずに済むというのは衝撃的ですね……」
「ああ、このような物大陸中どこを見てもないかも知れないぞ」
王侯貴族に骨伝導式イヤホンが軽いジャブ以上の衝撃を与えたところで、ここからは動物園園長(とその通訳の人)に交代となる。
俺は最後尾について久しぶりの上野動物園散策だ。
後ろのほうで従者相手の誘導についていた木栖と一旦合流すると「おつかれ」と声がかかる。
「おつかれは全部が終わってからにしてくれ」
「そうだな」
骨伝導イヤホンからは大陸標準語で日本の動物達の解説が聞こえてくる。
エゾシカやカモシカを眺めながらその違いをつぶさに観察する国王や、大陸にはいないゾウやゴリラに目を見張る貴族たち、自国にはいないレッサーパンダを欲しがったりと、ここだけで相当反応がいい。
パンダが少し前に中国へ帰国してしまったので見られないことが残念ではあるが、1億円のレンタル代を払って連れてきた熊のためだけに整備された飼育舎の設備には感心されてしまった。若干悪い意味の感心のように聞こえたが今日は聞かないフリをする。
今回の様子を撮影するために雇われたカメラマンや北の国の記録担当者も随分楽しげだ。
1時間半たっぷりかけて動物園を巡り終えると「次は何を見せていただけるんですか?」と聞いてくる。
「次は我が国、ひいてはこの世界の礎のひとつである科学を見に行きましょう」
まだこの国には彼らの知るべきものがある。
彼らが1番感心を抱いているだろう科学が動物園の北で手ぐすね引いて待っている。
歴史上初めて異世界と繋がった上野のこの辺りは日本側にとって重要な場所であるし、日本的なものに触れるのに色々都合がいいのだ。
屏風坂通りを降りて上野恩賜公園に入ると人気は随分と希薄だ。御一行の雑談や遠くに聞こえるマスメディアのヘリの音くらいしか聞こえてこない上野公園は初めてだった。
(確か国立西洋美術館より北を昨日の午後から今日の昼過ぎまで全面封鎖と言ってたな)
公園という場所柄全面封鎖は避けたようであるが、確実に歩き回るエリアは安全保障のため封鎖中なのだ。
やり過ぎと言えなくもないがそれだけ日本側は原油を握る北の国へ気を遣っていると言える。
最初に足を踏み入れるのは上野動物園である。
「ここは?」
「動物園という日本の国内外の動物を見学することが出来る施設になります。本日は御一行のために貸し切りだそうですよ」
「心遣い有り難く承る、これは誰の所有だ?」
「行政が所有し、国民に広く公開された施設になります」
後ろにいる人たちが貴族の趣味の類でないことに驚きを見せているのに気づく。
世界最古の動物園であるオーストリアのシェーンブルン動物園はその原型となる施設が1500年代には既にあったと言うし、一般公開されてないだけで似たようなものはあちらにもあるのかもしれない。
「それをわざわざ貸切か。有り難く受け取ろう」
「今回は動物園の責任者の話を聞きながら回れるように準備してあります、こちらの道具を耳に装着して頂けますか?」
北の国王殿下に手渡したのはBluetoothタイプの骨伝導式イヤホンだ。これを通じて案内担当者の話を聞けるように事前に準備しておいた。
自分の耳につけてる様子を見せながら説明するが、全くピンと来ていないようだったのでどうするかと逡巡してしまう。骨伝導の仕組みから説明するにも上手く説明出来る気がしないしな……と悩んでいたその時だった。
「つけてみましたが、これで聞こえるんですね?」
シェーベイル宰相補佐官が骨伝導イヤホンを耳につけた状態になっていた。
「はい。これならば説明を聞きつつお話も出来ますからね。この旅の間は何度か装着をお願いすることになりますが、よろしいですか?」
シェーベイル宰相補佐官がつけている様子を見て他の人たちも恐る恐るつけてくれ、本当に聞こえる事を示すためイヤホンと俺のスマホをBluetoothを繋いでクラシックを流してみると全員が目を見開いて周囲を見渡した。
「こんなに鮮明に聞こえるのに耳を塞がずに済むというのは衝撃的ですね……」
「ああ、このような物大陸中どこを見てもないかも知れないぞ」
王侯貴族に骨伝導式イヤホンが軽いジャブ以上の衝撃を与えたところで、ここからは動物園園長(とその通訳の人)に交代となる。
俺は最後尾について久しぶりの上野動物園散策だ。
後ろのほうで従者相手の誘導についていた木栖と一旦合流すると「おつかれ」と声がかかる。
「おつかれは全部が終わってからにしてくれ」
「そうだな」
骨伝導イヤホンからは大陸標準語で日本の動物達の解説が聞こえてくる。
エゾシカやカモシカを眺めながらその違いをつぶさに観察する国王や、大陸にはいないゾウやゴリラに目を見張る貴族たち、自国にはいないレッサーパンダを欲しがったりと、ここだけで相当反応がいい。
パンダが少し前に中国へ帰国してしまったので見られないことが残念ではあるが、1億円のレンタル代を払って連れてきた熊のためだけに整備された飼育舎の設備には感心されてしまった。若干悪い意味の感心のように聞こえたが今日は聞かないフリをする。
今回の様子を撮影するために雇われたカメラマンや北の国の記録担当者も随分楽しげだ。
1時間半たっぷりかけて動物園を巡り終えると「次は何を見せていただけるんですか?」と聞いてくる。
「次は我が国、ひいてはこの世界の礎のひとつである科学を見に行きましょう」
まだこの国には彼らの知るべきものがある。
彼らが1番感心を抱いているだろう科学が動物園の北で手ぐすね引いて待っている。
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